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XもChatGPTもアクセスできない状況だった

「インターネットが壊れた」とみんなが言った──Cloudflareの障害はなぜ大ニュースになったのか

2025年11月20日 12時00分更新

文● モーダル小嶋/TECH.ASCII.jp

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広範囲のサービスに及んだ影響を
「インターネットが壊れた」と表現

 大手CDNプロバイダーのCloudflare(クラウドフレア)で、11月18日、大規模な通信障害が発生した。

 協定世界時(UTC)の11時20分頃から、同社のネットワークを経由するWebサイトやAPIへの接続が困難になり、多くのユーザーに対してHTTPエラーページが表示される事態となった。

 XやChatGPTなど数多くのネットサービスにアクセスできない状況が発生したほか、影響はWebサイトの表示だけでなく、同社のダッシュボードへのログインやセキュリティ機能など広範囲のサービスに及んだ。

 なお、主要なトラフィックは同日14時30分頃までに概ね正常化。その後、影響を受けた残りのシステムの再起動や負荷調整が実施され、17時6分にすべてのシステムが完全に復旧した。

 この障害において、SNSでは「インターネットが壊れた」という投稿も見られた。

 「インターネットが壊れた」という表現は、ネットスラングとして「ネット全体、あるいはネットの主要サービスに大規模なトラブルが起きて、みんなが大騒ぎしている状態」 を指す比喩的な言い方だ。

 PCなどに不慣れな人がWebに接続できなくなったり、デバイスを思うように操作できなくなったりしたときに「インターネットが壊れた」と慌て出した……という“あるある”に対する揶揄のニュアンスも含まれているかもしれない。

 もちろん、“インターネット”が物理的に壊れることはない。「特定のインフラ層が障害を起こすことで、インターネット全体が壊れたかのように見える状況」をスラングとして表現しているに過ぎない。

 それでは、Cloudflareの障害はなぜそこまでのインパクトを残したのか。さまざまな要素が考えられるが、ここでは5つを挙げてみよう。

1. 「Cloudflare経由」のサービスが多い

 Cloudflareは世界有数のCDNプロバイダーだ。CDNはウェブサイトの管理者向けに提供されているサービスで、CDNを利用するウェブサイトはコンテンツを世界中に分散配置されたサーバーに複製して配信できる。

 これにより、大量のユーザーアクセスを一箇所(たとえば米国のサーバー)に集中させず、各地域に設置された分散サーバーでさばくことで、快適にアクセスすることが可能になる。

 グローバルでCDN大手としては、Cloudflareのほか、Akamai Technologies、Amazon CloudFront(AWS)、Fastlyなどがある。日本国内では、これらに加えて、J-Streamなどがシェアを獲得している。

 数多くのウェブサイトが、CloudflareのCDNを利用している。Cloudflareは、いわば、Webサービスの“入口”に位置するインフラを担っている。

 つまり、Cloudflareに限らず、大手CDNが不調になると、その先につながるサイト・アプリもまとめて遅くなったり、つながらなくなったりする。

 裏方ながらインターネット全体の交通整理役として機能しているCDNで障害が発生すると、その配下にある複数のサービスで同時に接続不良が生じる。「CDN経由」のサービスが多ければ多いほど、そのCDNで障害が起きた際の影響範囲も広くなるのだ。

2. 影響が“突然・一斉”に出た

 前述した理由から、CDNが落ちると、まったく関係ないように見える複数のサービスが同時にダウンする。

 有名企業のWebサイト、ECサイト、SaaS(Slack、Discord、Notionなどが影響した例もある)など、利用者の体感として「関係なさそうなサイトやアプリが一斉に落ちている」ように見えることが多い。

 ユーザー側からすると、「SNSもつながらない」「ゲームも落ちている」「ECサイトも開けない」と、あちこちで不具合が同時発生するように見える。影響範囲の広さに加え、事象が突然、急激に顕在化するのもインパクトに繋がる。

3. 経済的・社会的インパクトが大きい

 また、業務システムや決済サービスなど、企業活動や経済にも直結する影響が発生しうることから、インフラ障害としての重要性も大きい。

 決済サービスが停止すれば購買行動に支障が生じ、ゲームで障害が起きれば大会やイベントの中断にもつながる。各社の売上や利用者の行動にも直結することになる。

4. 規模が大きいぶん、過去にもインシデントが話題に

 Cloudflareは過去にも大規模障害を経験しており、一時的な不具合でも広範囲のユーザーが影響を受けた経緯がある。

 2019年には設定ミスで世界的に多数のサイトがダウンし、2024年にはDNS関連の障害で「ネットが死んだ」とSNSで話題になった。

 規模が大きいため、過去にもインシデントが起きたときに話題になっていた。そこから、障害が発生した際に、「そういえばあのときも……」というような話題にもなりやすい面がある。

5. 一般ユーザーの“体感”と紐づきやすい

 CloudflareのようなCDNプロバイダー自体はいわば“裏方”の企業だが、障害が起こるとユーザーの生活に直接響く。Webが開かない、アプリが動かない、決済がエラーになる……。

 ユーザーは普段、CDNプロバイダーの存在を意識する場面は少ないかもしれない。しかし、そこでの障害はアプリやWebサイトの利用可否に直結するため、一般利用者にとっても身近な問題として関心が集まる。

Cloudflareは「インターネットの電力会社」のような存在

 大手CDNプロバイダーであるCloudflareは「インターネットの電力会社」のような存在といえる。電力会社の障害がニュースになるのと同じように、Cloudflareが止まる=ネットの多くの部分が止まる可能性がある。そのため、Cloudflareの障害は大きなニュースになるのだ。

 なお、障害の理由に関しては、同社CEOのマシュー・プリンス氏が公開した詳細報告によると、サイバー攻撃によるものではないという。原因は、ボット管理システムで使用される「設定ファイル」の生成プロセスにおける内部のミスだったと報告されている。

 今後は設定ファイルの検証体制強化や、エラー発生時のシステムリソース保護策を見直すなど、再発防止に取り組むとしている。「インターネットが壊れる」事象は、可能な限り少なくあってほしいものだ。

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