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Intel Tech Tour 2025取材レポート【その3】

Panther LakeのGPU「Xe3」はなぜArc Bシリーズなのか?16コア12Xe版のゲーミング性能は前世代の倍でマルチフレーム生成も発表

2025年10月21日 13時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●ジサトライッペイ/ASCII

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XeSSはXeSS 3になり、マルチフレーム生成対応へ

 ディスクリートGPUに比べ、パワーにハンデを抱えたCPU内蔵GPUでいかに性能を引き出すか? これに対する答えがフレーム生成で、インテルはこれをさらにマルチフレーム生成に進化させようとしている。そして、Panther Lakeの概要発表にあわせて、「XeSS-MFG(Multi Frame Generation)」をアナウンスした。技術的にはXeSS 3の中にXeSS-MFGが含まれることになる。

 XeSS-MFGの動作フローはNVIDIAのDLSS MFGにかなり近い。オプティカルフロー(Optical Flow)の処理とフレーム生成の処理をXMXで行い、2フレームもしくは3フレームの中間フレームを挿入する(DLSS MFG x3やx4に相当)。出力される映像にフレームペーシングをかけることで、滑らかな画面出力を目指す点もDLSS MFGに似ている。ただし、GeForce RTX 50シリーズのにおけるフレームペーシング専用ハード(Blackwell Frame Pacing)を必要としないという特徴がある。

XeSS-MFGの処理の流れ。レンダリングした2枚の画像(直前および最新)がオプティカルフロー処理に入り、動きベクトルや深度情報とあわせてブレンドするニューラルネットワークにかける。結果、最大3フレームの中間フレームが生成されるわけだ

こちらはDLSS MFGの流れ。インテルの図に比べるとかなり簡略化しているが、オプティカルフローの処理とフレーム生成の処理をニューラルネットワークで実行する点はXeSS-MFGと共通している。ただし、DLSS MFGはフレームペーシングにGeForce RTX 50シリーズだけに搭載しているハードウェアを利用する

 XeSS MFGのすばらしいところは、ゲーム向けAPIが変更されていない点である。つまり、現時点でXeSS 2(XeSS-FG)対応であれば、XeSS-MFGにスムースに移行できるというのだ。「Intel Graphics Software」(旧称:Intel Arc Control)から設定を変更するだけで、マルチフレーム生成の恩恵が得られる。この実装はAMDのFSR 4のオーバーライドと似た思想を感じ取れる。

XeSS-MFGの有効化・無効化はIntel Graphics Software上で行う。拡大文字がぼやけて見づらいが、XeSS-FGをオーバーライドすることで最大3フレーム挿入(4x Frame Generation)まで選択できる。DLSS MFGの場合、ゲーム側の対応が必要だが、XeSS-MFGではXeSS 2対応であればよいという。この差は非常に大きい

XeSS-MFGをデモしていたリブート版「Painkiller」の設定画面。XeSS-SRやXeSS-FGの設定項目はあるが、XeSS-MFGの項目はない。マルチフレーム生成の設定はドライバーの設定から行うからである

これがそのリブート版Painkiller。Panther Lake16コア12Xe版(TDP 45W)搭載デモ機で、解像度:フルHD、画質:「Epic」、XeSS:「バランス」設定でXeSS-MFGを有効化している。開発版につきフレームレートは見せてくれなかったが、40〜50fps程度のレンダリングがXeSS-MFG 4x設定で平均200fps程度になるという。実際、プレイフィールは快適でレイテンシーも十分許容範囲だと感じた

XeSS-MFGのフレームタイムの話。「F1 25」をネイティブでレンダリングした時の1フレームの処理がこんな感じだったとする。これはレイトレーシングを多用している設定らしく、全体の半分以上はレイトレーシングとデノイズ処理で埋まっている

XeSS-SRを利用すると内部解像度を下げてレンダリングするので、1フレームあたりの処理時間は激減する。ネイティブではアンチエイリアスの処理(TAA)がXeSS-SRに変わっている点に注目。紫の部分はXMXで実行している

XeSS-FGを入れてもネイティブレンダリング時よりも処理時間は短い。ポストエフェクト処理の後にXeSS-FG処理が追加されている

XeSS-MFGで3フレームを挿入すると、1フレームの処理時間そのものは長くなるが、それでもネイティブレンダリングよりも短い

 また、インテルはXeSS-MFGにあわせ、同社が開発するフレームレート計測ツール「PresentMon」も更新。筆者がGPUレビューで使用している画面更新タイミングにおけるフレームレート評価(msBetweenDisplayChange)に加え、スタッターの判定に使えるアニメーションエラー(アニメーションの破綻=スタッターと見なせる)を可視化する機能を追加した。機能も作れば計測ツールも作る、という姿勢はNVIDIAのスタンスに近いものを感じる。

インテルが開発する「PresentMon」はゲームのフレームレート計測の要である。新PresentMonでは、フレームレートの表示が3種類に増える。1つは古典的なmsBetweenPresents基準で計測する「FPS-Presents」。もう1つは画面更新タイミング基準となるmsBetweenDisplayChangeを見る「FPS-Display」。そして、ゲームが1フレームの処理を終える時間で測る「FPS-App」だ

 XeSS-MFGがいつ解放されるかについては語られなかったが、Panther Lakeと同時と予想される。また、XMXを搭載したArcで利用できることを匂わせるシーンもあった。解禁発表までにあれこれ想像して期待したい。

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