Intel Tech Tour 2025取材レポート
インテル復活の狼煙か!? Intel 18AプロセスのPanther Lakeの本格生産がついに始まった
2025年10月09日 22時00分更新
Panther Lakeは効率性とスケーラビリティーの両立を狙う
Panther Lakeの製品名の正式発表はまだ先だが、おそらく「Core Ultraプロセッサー(シリーズ3)」にカテゴライズされる製品群になると思われる。これまでのインテル製モバイルPC向けCPUは、設計段階で効率性と性能のいずれかを選択し、専用の設計を採用していることが珍しくない。
1世代前だとLunar Lakeは効率性(特に電力)を優先したアーキテクチャーであり、Arrow Lakeはコア数やタイルの構成をある程度増減できるスケーラブルなアーキテクチャーだった。Panther LakeはLunar LakeとArrow Lakeのいいとこどりを狙う製品となる。
Panther Lakeも引き続きタイルアーキテクチャーを継承。CPU処理の中核を担う「コンピュートタイル」、グラフィック機能を担当する「GPUタイル」、それ以外の機能を担当する「プラットフォームコントロールタイル」と、それらをまとめる「ベースタイル」で構成される。ベースタイルはこれまで通り、なんの機能もない“パッシブダイ”で、ベースタイルと3つのタイルはFoveros-S 2.5D(以下、Foverosと略)で結合する。
Panther Lakeの構造。ベースタイルの上に3種類のダイを積層し、Foverosを利用して1パッケージにまとめる。ベースとパッケージもFoverosで結合するため、全体としてはFoverosの2段重ねでもあるわけだ
Panther LakeはCPUのコア数やGPUのXeコアの数によって、3種類のラインを展開する。
●Panther Lake 8コア:Pコア4基、LP Eコア4基、Xeコア4基
●Panther Lake 16コア:Pコア4基、Eコア8基+LP Eコア4基、Xeコア4基
●Panther Lake 16コア 12Xe:Pコア4基、Eコア8基+LP Eコア4基、Xeコア12基
上記はインテルが資料で使用している呼び名をそのまま記載しているが、8コア版がベーシック構成、16コア版が高性能構成、16コアの12Xe版が1チップですべてを完結させるグラフィックス強化構成といえるだろう。なお、Pコアは「Cougar Cove」、EコアやLP Eコアは「Darkmont」、Xeコアは「Xe3」となり、半導体の構造のみならずアーキテクチャーも刷新している。
新アーキテクチャーの採用はうれしいが、Pコアが最大4基という構成には失望を覚えた人もいることだろう。これはPanther Lakeを含め、インテルのハイブリッドなアーキテクチャーでは、Pコアはシングルスレッド性能重視の時に使うコアであり、マルチスレッド性能やマルチスレッド時のスケーラービリティーはEコアの役目であるためだ。
これら3種のPanther Lakeの差別化ポイントは「LP(Low Power)でない」Eコアの有無とPCI Expressのレーン数、GPUのスペック(Xeコアの数)、対応メモリーだ。逆に、どのラインもPコアは4基に抑えられており、4基のLP Eコアを備える。AI専用のNPU(Neural Processing Unit)は「NPU5」、映像処理を行うIPU(Image Processing Unit)は「IPU7.5」に更新。Wi-Fi 7やBluetooth 6.0、Thunderbolt 4などは標準で搭載するが、Thunderbolt 5は外部コントローラーが必要になる。
特にメモリーに関してはLunar Lakeのオンチップメモリーを排除し、LPDDR5のチップもしくはDDR5のSO-DIMMモジュールを外付けする方式に統一した。Lunar Lakeのような実装方式は、時にメモリー構成に関してPCメーカーとユーザーに大きな足枷となる場合がある。最近流行のメモリー消費量の多いAIをローカルで動かす用途を考えると、外付けにすることでメモリー構成を自由に選択できるほうがよいからだ。ちなみに、128GBまで搭載できるとのこと。
なお、プロセスルールはCPUコアを含むコンピュートタイルはすべてIntel 18Aで製造するが、プラットフォームコントロールタイルはTSMCのN6になる。そして、Xeコア4基のGPUタイルはIntel 3だが、Xeコア12基のGPUタイルはTSMCのN3Eで製造する。既存プロセスで製造できそうなプラットフォームコントロールタイルをTSMCに任せる理由は明らかにされなかったが、すべてTSMCに任せていたデスクトップPC向けのArrow Lakeを考えると、コンピュートタイルは自社製の最先端プロセスにしたPanther Lakeは大きく前進したといえるだろう。
Panther Lake 8コア:唯一普通のEコアを持たないラインである。対応メモリーはDDR5-6400もしくはLPDDR5-6800まで。Lunar Lakeの精神的後継といえるが、メモリーは外付けになっている
Panther Lake 16コア:Eコアを8基追加したことでマルチスレッド性能が向上したライン。メモリーの最大クロックも8コア版より高いほか、利用可能なPCI Expressのレーン数がPanther Lake中で最多である点に注目。ディスクリートGPUを搭載したゲーミングPC向けの構成では、この16コア版が主役になるだろう。左上のコンピュートタイルが8コア版に比べて大型化していることがわかる。また、右のプラットフォームコントロールタイルがほかのラインより大きい(PCI Expressコントローラーのぶんと思われる)こともよくわかる
Panther Lake 16コア 12Xe:CPUコアは16コアだがGPUタイルを最も強いものに強化したライン。内蔵GPUのみを搭載した薄型高性能ノートPC向けの製品になるだろう。こちらはGPUタイルが巨大化した一方、プラットフォームコントロールタイルは8コア版と同じものが使われているようだ
Panther Lakeのアーキテクチャーは次回
次回は、Panther Lakeで採用するCougar CoveやDarkmontに関するもう少し深い話になる予定だ。

















