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ディープテックで次の10年を描く。ASCII STARTUPが仕掛ける「TechDay」の舞台裏

北島×ガチ鈴木の最近何してた?

2025年11月17日、ASCII STARTUPはディープテック・エコシステムを次のレベルに押し上げるカンファレンスイベント『ASCII STARTUP TechDay 2025』を開催する。なぜ今「ディープテック」なのか。その必然性とイベントの見どころを語り合った。

IoTはもう日常。次はディープテックで勝負

北島:今日は『ASCII STARTUP TechDay 2025』(以下、TechDay)の話を。本腰入れて宣伝しないと。

ガチ:過去に『IoT H/W BIZ DAY』というカンファレンスをやってきましたが、ある意味でその後を引き継ぐのが今回のTechDayです。そもそも僕らが『IoT H/W BIZ DAY』を始めたのは、IoTやハードウェアに関連するスタートアップを応援したかったから。発信されるネタが少なくて「じゃあ一緒に記事をつくろう」、「展示イベントで存在感を見せてもらおう」って。

北島:当時はメイカーズムーブメントの追い風もあったしね。ハードウェアのスタートアップが目立つ機会もまだまだ少なかったから、イベントで一同に見せられるのは一定の意義はあったよね。

ガチ:そうですね。ただ、IoTはもう生活に溶け込みすぎて「当たり前」になってしまった。そこで次は何を重点すべきか考えたとき、答えがディープテックでした。

新イベント『ASCII STARTUP TechDay』はディープテックにフォーカス

ディープテックのエコシステムはまだこれから

ガチ:ディープテックとひとことで言っても、バイオ、素材、宇宙、エネルギー……などいろんな分野、領域があります。全部まとめて「ディープテック」と言ってしまうと実態が見えにくいんですよね。

北島:個人的に10年前くらいからヘルスケアやライフサイエンスのスタートアップを追ってきている。当時は「ディープテック」という言葉は表には出ていなかったけど、大学発や研究開発ベースの会社が新しい産業を生みそうな予感はあった。ただ、改めて見るとディープテックには、IT系みたいな良くも悪くも「村」がない。成り立ちも関係者もバラバラで、支援の仕組みもそろいにくく見える。

ガチ:そうなんです。大学発スタートアップのプラットフォームもここ数年でようやく立ち上がってきた段階ですし、支援環境はまだまだ未整備です。分野ごとに必要な要素、イグジットの形や関わる人材、産業も違うので、全部ひとまとめにはできない。だから今は「どう支援していくのがいいのか」を試している真っ最中なんですよ。

北島:そういう意味では、迷いながら進んでいるプロセスを共有すること自体に価値があるかもしれないね。

研究は世界トップ級なのに、エコシステムが今ひとつ

ガチ:最新の世界のスタートアップエコシステム・ランキングでは、日本は21位(参考:「Global Startup Ecosystem Index 2024」)。東京・横浜エリアは14位に食い込んでいますが、そもそも1位の米国と2位の英国の間に4倍近い差があります。一方で、研究力や知財ではトップ3に入っているんですよ。

北島:潜在的な技術力はまだ十分あるのに、仕組みが追いついていない。もったいないよね。

ガチ:だから、やることは明確なんです。研究成果を事業につなげるために、投資や人材、制度の仕組みを整える。知財や研究レベルにふさわしいエコシステムをつくれば、日本のスタートアップはもっと伸びるはずです。

ディープテックのモヤモヤを解消するセッション

北島:そのため、今回は展示よりもセッション重視。基調講演は、東京大学FoundX ディレクターの馬田隆明先生にお願いしました。東京大学発スタートアップの立ち上げ支援を長年見てきた方で、研究と事業の橋渡しをどう仕組みに落とすかを知っている人物です。TechDayでは「ディープテック・エコシステムをどう細分化し、領域ごとに支援を設計していくか」を具体的に語っていただきます。下記のインタビューも見てもらうとよいです。

関連記事:小さな成功はもはや通用しない。東大FoundX馬田氏が警鐘を鳴らす、起業家が今“頭を切り替えるべき”理由
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ガチ:加えて、「リサーチャー人材」の話があります。欧州の大学では、研究成果のリストを精査して「これは事業化できる」と判断し、起業を促す専任のリサーチャーが当たり前に存在している。でも日本では、産学連携部署が担っている程度で、職種として確立していない。そこでフランスや北欧の実例を紹介しつつ、日本でどう体制を整えるべきかを議論します。研究成果が事業化の芽を出すために欠かせない職能なので、制度設計に関わる方には特に聞いてほしい内容です。

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北島:そしてずっと言われ続けているけど、大事な経営人材。研究はすごいのに、事業化が進まない大学発スタートアップはもったいない。

ガチ:はい。だからといって、研究者がそのまま経営に回ると研究が止まってしまう。研究を続けながらビジネスも走らせる仕組みが必要です。欧州では、リサーチャー人材が「この研究は事業化できる」と見極めたときに、単に研究者を起業に巻き込むだけじゃなく、CEO候補や資金を連れてくる役割も担っています。だから研究者は研究に専念でき、経営はプロに任せられる。

北島:“研究者兼経営者”で疲弊してしまうようなことは避けたいね。

ガチ:そうなんです。今回のセッションでは、そうした欧州の仕組みを紹介しつつ、どのように経営人材を大学発スタートアップに呼び込めるかを議論したいと思っています。

関連記事:「研究者だけじゃ成功しない」ディープテックに必要なビジネス人材とは(株式会社ケイエスピー 代表取締役 社長 窪田規一氏)
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北島:最後は標準化。ちょっとマニアックだけど、実は出口戦略に直結します。

ガチ:今回は、欧州で自らルールメイキングをして市場を広げたスタートアップの創業者、W3Cで国際標準化に関わってきた専門家などに登壇いただきます。標準化にどう関われば事業の広がりに直結するのか、実例を交えて議論します。

関連記事:「標準化は声を上げた人が勝つ」スタートアップが世界で戦うための条件(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 / W3C 特任講師 下農淳司氏)
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TechDayを“情報共有のハブ”に

北島:当日はどんな人に来てもらいたい?

ガチ:ディープテック関係者はもちろんですが、従来のICT系スタートアップを支援してきた方々にも来ていただきたいです。正直、今のままではいけないという危機感を持っている人は多いと思うんですよ。ディープテックに投資したい、支援したいと考えている方々も増えてきました。でも、これまでのIT系スタートアップと同じやり方での支援は通用しません。だからこそTechDayで学び、アップデートしてから新しい領域に踏み込んでほしいです。

北島:これまでも大学や一部のVCががんばって支援してきたけど、より本格的になるべきフェーズだと。

ガチ:ええ。でも、それだけではもう限界があります。全体としてエコシステムをどう構築するか、仕組みづくりが欠かせません。そのためには、関係者が一堂に集まって情報を共有し、議論を深める場が必要なんです。

北島:TechDayはまさにそういう“情報共有のハブ”という位置づけで開催します。ASCII STARTUPとしても、当日の議論を記事として発信し、ディープテック・エコシステムの構築に貢献していきたい。

ガチ:セッションの後にはネットワーキングもあります。研究者、経営者、支援者が混ざり合う場として、新しい仲間を探していただければ。未来を一緒に描きたい人はぜひ参加してほしいです。

北島:登壇者へのインタビュー記事も順次公開しています。どんな視点で議論が展開されるのか、事前に読んでおくと当日さらに楽しめるはず。TechDayの参加受付も始まっています。11月17日は会場でお会いしましょう!

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