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科学技術振興機構の広報誌「JSTnews」 第34回

【JSTnews9月号掲載】NEWS&TOPICS 戦略的創造研究推進事業AIPネットワークラボ/AIP加速課題「超高速データサイエンス基盤」

検索システムに後付けし、多様な検索結果を高速で得られる新手法を開発

2025年09月17日 12時00分更新

文● 中條将典

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 インターネット検索は今や、日常生活や仕事に欠かせないものとなっています。しかし、画像や文章を検索した時に、精度は高いものの、検索結果がどれも似通ってしまう場合があります。例えば電子商取引(EC)サイトで商品を探す際、上位の検索結果がどれも似ていては、ユーザーは比較して検討することができません。

 東京大学大学院情報理工学系研究科の松井勇佑講師は、画像検索や文章検索において多様な検索を実現する新しい方式「LotusFilter」を開発しました。これは、検索後に実行する軽量な後処理モジュールです。似ているデータ同士の関係を「カットオフ表」として事前に保存することで、候補から類似し過ぎるものを削除し、検索結果の多様性を保証します。

 LotusFilterは、一度の検索あたりわずか0.02ミリ秒程度と高速動作し、さまざまな最新の検索システムに組み合わせて使用できます。さらに、その計算速度とメモリー消費量が数学的に解析されているため、ある条件の際にどの程度の速さでどのくらいのメモリーを消費するかの見当をつけることも可能です。

 この成果は「大量のデータに対して検索を実行したいが、その中に冗長なデータが多く含まれている」というシナリオで真価を発揮する可能性があります。それにより、ECサイトの品質向上、生成AIへの情報読み込みの効率化、地震学における波形探索など、多彩な分野への応用が見込まれます。

通常の検索では問い合わせ(q)に対し、一番近いx₁₃、x₂₅、x₂₈を結果として返す(左)。LotusFilterは、選ばれた結果に対して適当な半径の円を想定し、その円の内側のほかの候補を削除することで多様な結果(x₁₉、x₂₅、x₆₁)を得る(右)。

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