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全社を挙げてAI活用を推進中、“クリエイティブ業務へのAI適用”のポイントを語る

日テレ「ZIP!」の試行錯誤 AIエージェントで番組企画に“魂を吹き込む”には?

2025年08月21日 16時30分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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AIが生成した企画は“魂がこもっていない” ― 業務理解はAIエージェント構築でも重要

 今回のプロジェクトでは、Google Cloudの内製化支援プログラム「Tech Acceleration Program(TAP)」を通じて技術支援が行われている。プロトタイプ開発を担当したAIソリューションズ・アーキテクトの中井悦司氏は、エージェント開発プロセスにおける要点を語った。

Google Cloud AIソリューションズ・アーキテクト 中井悦司氏

 今回の開発では、Google Cloudのマルチエージェント開発フレームワーク「Agent Developer Kit(ADK)」と、エージェントをフルマネージドで管理できる「Vertex AI Agent Engine」をフル活用し、高速なプロトタイプ開発を実現した。「企画案を考える」「企画書を作る」「企画書を修正する」という、それぞれ異なる役割を持つエージェントが相互連携するのが特徴だ。

企画支援エージェントのアーキテクチャー

 中井氏は、AIが絡むアプリケーション開発の難しさは、「本当に役に立つのか?」という評価・改善プロセスが必要になることだと語る。

 この評価・改善での試行錯誤に加え、今回は「ユーザー体験」の追求にも苦労したという。「AIエージェントは、ユーザーがやり取りしながら利用するもの。ユーザー体験が適切にデザインされていなければ、いくら正しい答えを出せても役に立たない」と中井氏。

 中井氏は、AIエージェントにおけるユーザー体験を、2つのパターンに分類する。最終成果物をいきなり作成する「時短パターン」は、業務効率化が目的のエージェントに向いている。もうひとつの「情熱パターン」は、ユーザー自身が結果を出すことを伴走支援するもので、今回のようなクリエイティブな業務に向いている。

AIエージェントにおけるユーザー体験のバリエーション

 Google Cloud側で最初に提案したプロトタイプは、企画書作成を効率化する「時短パターン」のエージェントだった。だが、企画書を見た総合演出の担当者は「企画書に魂がこもっていない」とネガティブな反応だった。

 「その反応で、企画書を作ることはゴールではなくむしろスタート地点であり、視聴者に寄り添った番組を作ることこそが本当のゴールだと気づかされた」(中井氏)

 そこで、あらためて「情熱パターン」のプロトタイプを提出したが、今度は時短要素が足りない。結局、様々なパターンのプロトタイプを作りながらヒヤリングを行い、業務プロセスについての理解を深めながら、本当に番組制作に役立つ“いいとこ取り”のバランスを探るのに時間を注いだ。

 もっとも、番組制作側でも、それぞれにメリット・デメリットのあるパターンから、“正解”の選択肢を見つけるには時間を要したという。

 今回の経験を通じて、中井氏が痛感したのが「業務理解を深めることの大切さ」だ。「ディスカッションを重ねて、業務プロセスを深く読み解いていくにつれ、ユーザー自身も把握していないポイントが見えてくる。エージェント開発の世界でも、業務理解が大切だと再認識した」(中井氏)

“いいとこ取り”を発見するやりとりは避けられない

 日本テレビの辻氏は、「クリエイティブ業務の基軸は、あくまでも“個性”」だと強調した。今回のプロジェクトでは、総合演出の判断基準を集めてから、AIエージェントに個性を後付けした形だが、本来は、ディレクターの個性を総合演出やプロデューサーにぶつけるのが仕事の本質だという。

 将来的には、「個性を持つディレクターエージェントが、総合演出エージェントと相互連携し合う世界が来ることを期待している」と展望を語った。

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