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最新パーツ性能チェック 第469回

ワットパフォーマンスの大幅改善でHEDTの王者が完全体に、Zen 5世代CPU「Ryzen Threadripper 9000」シリーズをレビュー

2025年07月30日 22時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●北村/ASCII

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メモリーはDDR5-6400までサポートされる

 前ページでThreadripper 9000シリーズでは特別な設計はないと書いたが、メモリーの最大クロックがDDR5-6400となった点には注目したい。Socket AM5のRyzenではDDR5-5600までが定格だが、Threadripperはさらにそれを上回るクロックまでサポートされるようになったのだ。

 ただThreadripperの場合普通のDDR5モジュールではなく、「RDIMM(Registered DIMM)」が必要になる。Threadripper 9000シリーズの場合メモリーのチャネル数は4chであるため4枚単位、Threadripper PRO 9000 WXシリーズは8chなので8枚単位で規格や容量を揃えたモジュールを用意する必要がある。

 Threadripper PRO 9000 WXシリーズをTRX50マザーに装着した場合は、マザー側の制約で4ch仕様となるため、Threadripper PRO 9000 WXシリーズ本体のメモリー帯域の太さが活かせない状況になる、という点には注意が必要だ。

今回の評価キットに含まれていたASUS製TRX50マザー「Pro WS TRX50-SAGE WiFi」にThreadripper PRO 9995WXを装着。メモリースロットが4本しかないため、Threadripper PRO 9995WXのメモリー帯域は半分になる

評価キットに含まれていたG.Skill製のDDR5-6400(RDIMM)モジュール「F5-6400R3239F32GQ4-T5N」

Threadripper PRO 9995WXはエキシビションとして参戦

 今回の検証環境は、Threadripper 9000シリーズと7000シリーズの新旧対決が主軸であり、そこにThreadripper PRO 9995WXがエキシビションとして参戦という形になっている。今回の評価キットはTRX50マザーで構成されているため、Threadripper PRO 9995WXのポテンシャルはフルに引き出せないからだ(一応AMDの名誉のために記しておくと、Threadripper PRO 9995WXを加えた比較はAMDの想定外のことだ)。

 ベースラインとしてRyzen 9 9950Xも比較に加えているが、こちらはメモリー搭載量が違いすぎるため、これもまた厳密な比較には使えないという点に注意したい。

 その他のハードは極力統一した。GPUにGeForce RTX 4090を選択した理由は、レビュアーズガイドのパフォーマンス参考値(この値を見て、レビュアーは正しく動かせているかの手がかりにする)がRTX 4090環境で検証されていたことと、テスト内容的にプロ向けCG制作アプリなどを入れるため、GeForceの方が好適だと判断したためである。GPUドライバーはStudio 570.00を使用した。

 その他の条件として、Resiazble BARやSecure Boot、メモリー整合性やカーネルモードハードウェア強制スタック保護、HDRなどは一通り有効化、ディスプレーのリフレッシュレートは144Hzに設定した。また、Threadripper環境のメモリークロックは各CPUの定格最大値に設定している。

検証環境(Threadripper)
CPU AMD「Threadripper PRO 9995WX」 (96コア/192スレッド、最大5.4GHz)
AMD「Threadripper 9980X」 (64コア/128スレッド、最大5.4GHz)
AMD「Threadripper 9970X」 (32コア/64スレッド、最大5.4GHz)
AMD「Threadripper 7980X」 (64コア/128スレッド、最大5.1GHz)
AMD「Threadripper 7970X」 (32コア/64スレッド、最大5.3GHz)
CPUクーラー SilverStone「XE360-TR5」
(簡易水冷、360mmラジエーター)
マザーボード ASUS「Pro WS TRX50-SAGE WiFi」
(AMD TRX50、BIOS build 9942)
メモリー G.Skill「F5-6400R3239F32GQ4-T5N」
(32GB×4、DDR5-6400/ 5200)
ビデオカード NVIDIA「GeForce RTX 4090 Founders Edition」
(GeForce RTX 4090、32GB GDDR6X)
ストレージ Micron「CT2000T700SSD3」
(2TB M.2 SSD、PCIe Gen 5)
電源ユニット ASRock「TC-1300T」
(1300W、80 PLUS TITANIUM)
OS Microsoft「Windows 11 Pro」(24H2)
検証環境(Ryzen)
CPU AMD「Ryzen 7 9800X3D」
(8コア/16スレッド、最大5.2GHz)
CPUクーラー SilverStone「XE360-TR5」
(簡易水冷、360mmラジエーター)
マザーボード ASRock「X870E Taichi」
(AMD X870E、BIOS 3.30)
メモリー Micron「CP2K16G56C46U5」
(16GB×2、DDR5-5600)
ビデオカード NVIDIA「GeForce RTX 4090 Founders Edition」
(GeForce RTX 4090、32GB GDDR6X)
ストレージ Micron「CT2000T700SSD3」
(2TB M.2 SSD、PCIe Gen 5)
電源ユニット ASRock「TC-1300T」
(1300W、80 PLUS TITANIUM)
OS Microsoft「Windows 11 Pro」(24H2)

同コア数なら18%の性能向上

 ここからさまざまなベンチマークで性能にどのような差が出るかを見てみたい。まずはCPUを酷使するCGレンダリングおよびエンコード系の比較から始める。

「CINEBENCH 2024」

 まずは定番のCINEBENCH 2024から。論理192コアを誇るThreadripper PRO 9995WXが、どこまでマルチスレッドスコアーを伸ばせるかに注目したい。また、Threadripper 9000シリーズは同じZen 5世代のRyzen 9 9950Xにシングルスレッドのスコアーで並ぶことができるのか否かに注目したいところだ。

CINEBENCH 2024:スコアー

 マルチスレッドスコアーのトップはThreadripper PRO 9995WXだが、Threadripper 9980Xとの差は物理コア数の差(96コア対64コア)ほど多くはない。TDP350W枠を96基のコアで奪い合うわけなので性能は伸びなくなるという理由もあるが、まだThreadripper PRO 9995WXが本来の性能(8chメモリー)を発揮できていないという要因もここに加わっている。ただシングルスレッドのスコアーはThreadripper 9980Xとほぼ同じである。

 一方Threadripper 9980XとThreadripper 7970Xの結果を比較すると、同コア数なのにThreadripper 9980Xが18%もスコアーを伸ばしていることに注目したい。シングルスレッドのスコアーはマルチスレッドよりもやや伸びが鈍い約7%増にとどまった。

 Threadripper 9970XとThreadripper 7970Xのペアもマルチスレッドスコアーは15%向上、シングルスレッドでは9%と、劇的な改善とは言えないまでも同コア数なのに性能をしっかり伸ばしている。Zen 5採用とDDR5-6400対応の効果はあったといえるだろう。

 ただシングルスレッド性能に関しては、Ryzen 9 9950Xに勝てたThreadripperはなかった。シングルスレッド勝負であれば、まだRyzenに分があるといえる。

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