ミニサイズのワークステーションはなぜかサーバールームに置かれる?
日本の発想を取り入れて進化したHPのワークステーション、その現在地点を知る
提供: 日本HP
基本性能は共通化しながら、筐体サイズに合わせた拡張性で差別化
ーー電源部の強化など、最新モデルの強化ポイントについても教えてください。
大橋 「仕様面では搭載できるCPUは各モデルとも同様で、メモリーの最大搭載容量やストレージの本数、GPUの違いなどがあります。Mini(Z2 Mini G1i)は従来機種と同じ筐体、同じサイズを維持しながら、Core Ultraを搭載可能になりました。スペースを抑え、集約して設置できる点を追求した筐体です。以前のMiniはノート用のGPUを搭載していますが、PCIスロットの搭載に変わることで汎用性が上がっています。汎用性が高いプロフェッショナルのパーツをこのスペースに取り入れる設計です。中に最新世代でTOPSが高いCPUを入れて、AIワークにも活用できる一番小さな筐体のワークステーションです。
SFFは筐体をより小さくして、エンジニアに身近な正常進化を遂げました。Proグラフィックスもミッドクラスのものが積めるので、Core Ultraに高い性能のGPUを組み合わせて設計者の求める性能をよりコンパクトに提供するものとなっています。Thunderbolt 5を搭載。LANはオンボードで1Gbps、オプションで2.5Gbps、10Gbpsなどインターフェースも高速です。
Towerは電源が強化され、従来と同じ700W版に加えて、1200W版の販売も予定しています。特殊な吸気/排気機構を持つわけではないですが、中にセンサーが20あって、温度をモニタリングし、熱源に近いファンをより回すといった細かい制御をしています。常時、空気を定常的に流すことで、効率的な冷却と同時に、定常的な静音を維持するように設計されています。メッシュを使った部分の面積も増え、サイドパネルに加えて、底面にもメッシュが入っています。本体は横置きにも対応しています。」
最もコンパクトなMiniがなぜかサーバールームに置かれる理由
ーーラインナップ(筐体形状)ごとの用途の違いや住み分けについても教えてください。
大橋 「現状で最も売れているのが、スリム型のSFFです。新製品ではCPUの性能もGPUの性能も上がり、今まではフルハイトのカードでなければできなかった性能がハーフハイトのGPUでも出せるようになっています。
ある意味ハイエンドに迫る性能をもち、CAD系の導入で標準となる機種がSFFです。設計に必要なパフォーマンスニーズはこれでほぼ満たせるでしょう。コンパクトでスペースが限られたオフィスで数を揃えられるのもメリットです。世界的に見ても、ワークステーション然とした大型の製品よりも小型のものが求められる傾向が進んでいます。これは日本からのニーズが反映されたものでもあります。
Miniはこれよりも小型の機種ですが、実はデスク上ではなく、ラックマウントしてリモートで使う機会が多い製品となっています。もちろん単体でも利用できますが、5Uのラックマウントキットに収納してサーバーラックに集約できるのが受けています。この端末に、設計者は構内のリモート環境からノートPCやシンクライアントを通じて1対1で使うことになります。
当初は我々も想定していなかったことですが、これもコロナ禍を機に増えてきた日本でニーズが高い使い方です。ネットを経由してデータのやりとりができない設計部門は在宅勤務ができません。コロナ禍でも会社には出社して作業されていましたが、従来は100名規模がCADルームに集まって作業していたところを半分は出社して席につき、残りの半分は会議室や食堂など別の場所で設計に加わる使い方をされているユーザ様もいらっしゃいます。」
ーー苦労されていたのですね。
大橋 「はい。しかし、デスクトップを持ち運ぶわけにも行かない。そこでイントラの中には入るが、違う建屋や違う部屋からアクセスできる仕組みの導入が進みました。マシンはひとり1台が割り当てられますが、1箇所にまとめて設置することになります。その際には集積度が高いのが受ける面があり、Miniが採用されています。逆に設計者の方々の机に配るものはSFFの人気が高いです。Miniが置かれるのはサーバールームが多いと思います。
Miniをデータセンターに置く意味は、管理のしやすさに加えて、データのロードが非常に速いためです。CADのデータも大容量化していますが、作業においてはサーバーのストレージから手元のマシンにデータのキャッシュを落とし、ある程度できたらまたサーバーに置くことの繰り返しです。かなり頻繁にデータのやり取りをすることになります。一方でネットワークは末端にいくほど脆弱で遅くなっていきます。サーバールームに置いておけば、10Gbpsの速度でダイレクトにストレージやサーバーとデータをやり取りできるので、ダウンロードにかかる時間を短縮できます。朝出社してデータを落とすために待つ時間が短縮できる効果があるのです」
ーータワー型についてはいかがでしょうか?
大橋 「SFFとMiniは基本的にエントリーからミッドクラスのProグラフィックスのみとなりますが、TowerについてはハイエンドのProグラフィックスに加えて、GeForceの搭載も可能です。AIのアクセラレーションにGPUを使う際にはフルハイトのカードが必要になるので、必然的にタワー型の筐体になりますね。電源も従来は700Wでしたが、1200Wのモデルの販売も予定しています。サイズ的に見ても、Miniは前世代と同じサイズ、SFFはより小さくなりましたが逆にTowerは従来よりも大きくなっています。
Z2 G1iシリーズのタワーはワークステーションの中でもエントリーからミドルレンジのクラスを担うものとなっています。そこを超えるとXeonを搭載することになりますが、Core Ultra 9のKプロセッサーを搭載し、メモリーも大容量を積むことができます。これはHPに限らず、各メーカーが共通ですが、エントリークラスのタワー筐体により拡張性を持たせるという流れが出ています。これはAIにワークステーションを活用したいというニーズの現れではないでしょうか?」
ーーミドルクラスでもハイエンドに匹敵する性能を持つというお話がありました。Xeon搭載の上位シリーズとの違いはどこにありますか?
中島 「高クロックにすることで性能を出しやすく、マルチコアに最適化されていないCADソフトではCore Ultraの効き目が出やすいですね。Core Ultra 9はP16コア、E8コアの合計24コアです。Xeonは32コア以上のコアを持ち、全てが同一の性能です。しかしながら同一性能のマルチコアが欲しいとなると、解析系など絞られた用途になる面があります」
太田 「Core Ultra搭載のワークステーションは、レーザーフォーカスでこういったジョブをこのパフォーマンスでこなしたいと考える人にとって最適解になっていると思います」
ーー最後にHPのワークステーションの強みと守りたい思いについて聞かせてください。
中島 「省スペース性についての話題が先ほどありましたが、こうしたカスタマーの声を製品開発に積極的に盛り込んでいく点にフォーカスを当てています。その声から色々な改善を施し、フォームファクター/モデルを整備しました。お客様に寄り添ったワークステーションメーカーでありたいと思っています。そのために重要なのがハードウェアだけでなく、ソフトウェアも含めたトータルのシステムとして高性能が出せる設計と、そのための開発体制の継続です」
大橋 「中島の話が全てですが、私はHPは『日本の市場を重視している』点を付け加えたいと思います。すでに述べたように、実は世界の中でも『日本の顧客からしか出てこない声』というものは多くあるのです。この声をワールドワイドに展開することで、大きな成功を収めた事例もあるのです。省スペースの筐体もそのひとつで、Z2シリーズが登場する以前のワークステーションは、性能や信頼性が第一で大きいものが当たり前というのが一般的な認識でした。
しかし、日本の声を反映して小型の筐体を作ったところ、日本だけでなくヨーロッパや北米でも売れた。小さいが故に用途が広がり、ビジネスにも功を奏したというのです。これこそが日本の顧客の声を重視して開発していくメリットなのです」
太田 「インテルとHPの協業は長く、ワークステーションで必要とされるISV向けの最適化作業、サポートを満遍なく充足している素晴らしいパートナーでもあります。優れたAI PCの開発は優れたPCの開発から始まります。AI機能やNPUの話もしましたが、そのベースにあるのがこれまでのPCの開発、つまり高性能/電力効率、これを世代を追うごとに高めてきた経緯があります。AI機能の進出は業界のみならず、世界的に進んでいて、あらゆる分野で台頭が見られます。バランスよくCPU、NPU、GPUを搭載し、これら3つを適切に使い分けながら発展/進化していくと考えています」
長い歴史とノウハウの蓄積、ワークステーションの新しい用途など幅広い用途についてのお話が聞けて大変興味深い時間でした。ありがとうございました。






