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「風の信号機」――空のインフラを整備する京大発スタートアップ【IVS2025】

 2025年7月2日〜4日、日本最大級のスタートアップカンファレンス「IVS2025」が京都市勧業館「みやこめっせ」で開催。会場には話題の生成AIや次世代モビリティなど、さまざまな分野の注目スタートアップが集結。その中で、「風を見る技術」という一風変わった展示をしていたのが、京大発スタートアップのメトロウェザー株式会社だ。

メトロウェザー株式会社 執行役員 アルタン チャージャン氏

 同社が開発するのは、小型ドップラー・ライダー「Wind Guardian」。上部のレンズが360度回転し、赤外線レーザーを照射して空中の気流の動きをリアルタイムで“可視化”するという。最大で半径1.5km先の風の流れを立体的に捉えることができ、まるで空に「見えない信号機」をともすようなイメージだ。

 用途として想定されているのがドローン配送の“航路設計”だ。

「小型ドローンは突風に弱く、ルート上に風の乱れがあると墜落リスクが高まります。Wind Guardianを使えば、そのエリアの風の状態をあらかじめ検知して、より安全な航路を選ぶことができます」と話すのは、グローバル事業開発本部の井上悦貴氏。

 もともとドップラー・ライダーは、空港の滑走路に設置されるような大規模・高価格な装置だった。ダウンバースト(下降気流)やジェットの後方乱気流など、航空機の安全確保のために使われていたが、メトロウェザーはこの技術を小型化・低価格化し、街や現場に持ち出せるようにしたのが最大の特徴だ。

 実際、2025年の大阪・関西万博ではこのWind Guardianが導入され、会場上空の風の動きを3次元で可視化する実証も行われている。将来的には都市部のドローン交通だけでなく、災害現場や大型イベントの安全管理、空飛ぶクルマの航路設計にも応用される可能性があるという。

 現在はシリーズBの調達を経て、提携工場とともに量産・コストダウンフェーズへ入っており、空を安全に使う社会インフラとして、“風を見る”技術が浸透していきそうだ。

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