このページの本文へ

科学技術振興機構の広報誌「JSTnews」 第18回

【JSTnews7月号掲載】NEWS&TOPICS 戦略的創造研究推進事業CREST/研究領域「データ駆動・AI駆動を中心としたデジタルトランスフォーメーションによる生命科学研究の革新」 研究課題「多階層の神経活動データ駆動による睡眠脳の機能解明」

睡眠中の脳が「未来の記憶」のための細胞を準備していることが明らかに

2025年07月14日 12時00分更新

文● 中條将典

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 睡眠と記憶の関連を調べたこれまでの研究から、記憶は「エングラム細胞集団」と呼ばれる記憶を担う神経細胞集団が経験をした後の睡眠中の再活動によって定着することがわかっています。富山大学学術研究部医学系の井ノ口馨卓越教授らの研究チームは、神経細胞の活動を光で観測する独自技術を使って、脳内で記憶をつかさどる領域である海馬の細胞集団が、新しい出来事の経験中やその前後の睡眠中にどのような活動をしているのかをマウスで観測。睡眠中に、過去の記憶の定着と、未来の記憶を獲得する準備という2つのプロセスが並行して進行していることを明らかにしました。

 研究チームは、新しい空間Aにマウスを置いて探索させ、その翌日、睡眠から覚めたマウスに空間Aを再経験させた後、新しい空間Bを探索させて、その前後の睡眠中に海馬の中の細胞集団がどのような活動をするかを調べました。すると、未来の経験の記憶を担う「エングラム予備細胞集団」が、その経験をする前の睡眠中に既に脳内に準備されていることがわかりました。さらに、同予備細胞集団は、前の経験を記憶した後の睡眠中に、その記憶のエングラム細胞集団と同時に活動して出現することも判明しました。

 同チームは続いて、神経回路モデルによるシミュレーションを実行。エングラム予備細胞集団が出現するためには、前の記憶のエングラム細胞の再活動の影響を受けてそれ以外の細胞で起こる睡眠中のシナプスの変化が重要であることも示しました。睡眠中の脳が日々の記憶を秩序立てて獲得する仕組みが明らかになったことで、睡眠中の脳活動や睡眠法への介入によって、脳の潜在的な能力をより引き出せば、記憶力を向上させる方法につながることも期待されます。

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事

アクセスランキング

  1. 1位

    sponsored

    60年の時を超え「COBOL」がGitHub Copilotでよみがえる 勘定系アプリの“超難関”モダナイに7社が挑戦

  2. 2位

    ビジネス・開発

    富士ソフトがエンジニア1万人超を「AIネイティブ」化 実装力を武器にフィジカルAIなど3本柱に注力

  3. 3位

    ITトピック

    IT技術者の8割超「AI生成コードには人間のレビューが必要」/「偽・誤情報を見破れる」と自信を持つ人はICTリテラシーテストの正答率が低い、ほか

  4. 4位

    sponsored

    「現場に行くのが当たり前」を変えたアズビルのリモート調整 効果はプライスレス

  5. 5位

    TECH

    攻撃するAIと防御するAI 日本企業のセキュリティ対策にいま何が必要か?

  6. 6位

    デジタル

    東京タワー相当の紙を“完全撤廃” 点検業務をkintone化した“現場ファースト”な改善術

  7. 7位

    ITトピック

    実用化が楽しみすぎるスマート技術たち 「長距離ワイヤレス給電」から「室内向け太陽電池」「超音波センサー」まで

  8. 8位

    TECH

    パンや酒、チョコづくりにも関わる微生物「酵母」の進化を追求

  9. 9位

    デジタル

    IoTデバイスをサイバー攻撃から守る IoT向けゼロトラストの“3つのアプローチ”

  10. 10位

    ITトピック

    6割超の企業で「セキュリティは取引条件」 SCS対応も進む/パワハラと指導の違い、あなたの基準は?/AIへの危機感か 転職希望のIT人材が増加、ほか

集計期間:
2026年07月22日~2026年07月28日
  • 角川アスキー総合研究所