【JSTnews7月号掲載】NEWS&TOPICS 戦略的創造研究推進事業CREST/研究領域「未踏探索空間における革新的物質の開発」 研究課題「Giant CISS物質:界面陽電子・電子の全運動量制御」
自発的に巻き上がり、超音波で巻き戻る新素材ナノチューブ
2025年07月11日 12時00分更新
共有結合性有機構造体(COF)は2005年に初めて報告された新材料であり、近年研究が進んでいます。有機分子が共有結合でつながった2次元あるいは3次元の結晶性材料であり、多数の微細な穴を持つことから、触媒やバッテリー材料、ガス吸着などさまざまな分野で応用が検討されています。COFでナノチューブ構造を形成できれば、1次元性に起因する特徴的な性質が現れると考えられますが、これまで同構造を得た例は非常に限られていました。
京都大学大学院工学研究科の関修平教授らの研究チームは今回、ピレン(C16H10)の炭素原子のうち2カ所を窒素原子で置換したジアザピレンと呼ばれる有機分子を骨格とする2次元シート状のCOFが、2つの液体の境界で自発的に巻き上がることで1次元ナノチューブ状の構造になることを見つけました。さらに、このナノチューブを分散した液体に超音波を当てると、巻き上がったナノチューブ構造から元のシート構造に戻ることを確認。併せて、同ナノチューブのプロトン(水素イオン)の伝導特性を評価し、世界最高レベルの伝導性を示すことを明らかにしました。
研究チームはこれまでにジアザピレンで、平面に近い構造を持つCOFを形成することに取り組んできました。今回、COFを合成する際に、使用する溶媒の比率と温度を変更すると、シートとは決定的に異なる構造になることを発見。そのままでは「COF合成の失敗作」として見逃してしまうところを、合成した物質の超微細構造を詳細に追跡し、1次元のナノチューブになっていることを突き止めました。同ナノチューブは、共有結合による高い安定性を持つと同時に、電子・プロトン伝導性が共に極めて高いことから、膜やクリーンエネルギー材料など、さまざまな場面での利用が期待されます。
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