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U-MAP、高熱伝導性繊維状セラミックス「Thermalnite」の量産開始

 名古屋大学発の研究開発スタートアップの株式会社U-MAPは6月17日に、同社が開発した高熱伝導性繊維状セラミックス「Thermalnite」の量産体制を確立したと発表した。「Thermalnite」は放熱性能に優れ、熱対策材料としての役割が期待されるという。

 同社によると、エレクトロニクスの高性能化やEVの普及が進む中で熱設計は製品の信頼性、寿命、エネルギー効率に直結する重要な要素になっている。しかし、これまで高熱伝導性の電子材料を実現するには「強度」「軽さ」「加工性」といった性能の両立が難しく、トレードオフの中で妥協する必要があったという。

左:Thermalnite(ファイバー状窒化アルミニウム単結晶)写真、右:Thermalnite SEM像

「Thermalnite」は、少ない添加量で高い熱伝導性を発揮しながら、複合材料全体の強度も引き上げるなど、多様な性能の向上を実証しているとのこと。
・従来の電子材料に「Thermalnite」を10%添加することで熱伝導率が10倍に向上、軽量・柔軟かつ高熱伝導を両立するという。
・従来品に数%添加することで機械強度を4倍に向上。10W/mKを超える熱伝導率でも、液体やペースト状だけでなく、特定の形状を形成することが可能になったとのこと。
・射出成形などの成形方法を用いた構造設計にも新たな可能性をもたらすとしている。
「Thermalnite」はさまざまなフィラー材料・樹脂材料との組み合わせが可能で、単なる放熱性能向上にとどまらず、多機能の実現やプロセス改善など「設計の自由度を高める」という新しい視点で、製品開発の可能性を広げると、同社はしている。

左:Thermalniteの添加量における複合樹脂の熱伝導率、右:市販品との引張強度比較

 同社では、技術としての効果検証と並行し、新素材における懸念点であった「量産性」と「安定供給」についても段階的に準備を進めてきたとのこと。大型合成炉を用いた「Thermalnite」の生産プロセスを確立し、プレ量産フェーズへの移行を完了。これにより、まずは年間数百kg規模の生産を開始し、初期の市場ニーズに対応可能な安定供給体制を確立したとのこと。今後はさらなる増産も計画しており、今後の需要拡大に対応していくとしている。

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