このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第828回

TOP500の4位に躍り出たJUPITER Boosterは効率と性能/消費電力比が驚嘆に値する 

2025年06月16日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 昨年11月にEl Capitanが首位に躍り出たTOP500であるが、その最新版が6月11日に発表された。ただ今回、トップ10に関してはあまり変動がない。

 下の画像は前回と今回のトップ10を並べたものだが1~3位、つまりEl Capitan/Frontier/Auroraに関してはコア数もRmax/RpeakもPowerも同じで、要は前回から構成などの変更がないままということになる。

左(赤)が2024年11月、右(青)が今回のTOP10である

 唯一の違いは今回紹介する4位のJUPITER Boosterで、これが4位に入ったことで前回の4位以降がすべて1つずつずれる格好になった。5位のEagleから10位のLeonardoまでもやはりコア数/Rmax/Rpeak/Powerに変化がない。そこで、今回は4位に入ったJUPITER Boosterを詳細に見てみたい。

EuroHPC初のエクサスケール・スーパーコンピューター
JUPITER Booster

 JUPITER Boosterは独ノルトライン=ヴェストファーレン州のユーリッヒ研究センターで稼働する、NVIDIAのGH200 Grace Hopper Superchipをベースとしたシステムである。

 このJUPITER Boosterは、2024年1月に建屋が完成し、そこから納入が開始。2024年3月には最初の272ノードをベースにしたJUPITERというアプリケーション開発用プラットフォームが稼働を開始し、昨年6月のGreen 500で1位を獲得した。ちなみにJUPITER Boosterはおよそ2万4000ノード(正確には2万3536ノード)からなるので、フルシステムの100分の1ほどの規模である。

 2024年6月には10ラック分(1920ノード)の構成がJETIとして稼働し、この状態でTOP500の18位にランクインしている

JUPITER Boosterの先行型であるJEDIシステムの映像。1ラックに24枚のブレードが入っているように見える。10ラックだと240ブレードだから、1ブレードに6つGH200が格納されている計算になるが、実際には8つ搭載され、これで2ノードを構成している

 そして、今回はいよいよフルシステムでの稼働になる。ちなみに今回のTOP500では4位のJUPITER Booster以外に以下がランクインしているが、JEDIは上で説明したJUPITER Boosterの先行型なので、実質ユーリッヒ研究センター以外は3サイトのみしか導入していないことになる。

23位 CEA-HE
37位 Miyabi-G
148位 ROMEO-2025
259位 JEDI

 もう少しJUPITER Boosterの数字を見てみよう。JUPITER Boosterは先に書いたようにNVIDIAのGH200 Grace Hopper Superchipを利用したシステムであり、Total Coresは480万1344個、Accelerator/Co-Processor Cores(要するにGPUのコア)は310万6752個なので、CPU Coreは169万4592個という計算になる。

 そのGH200の構造を今さら説明するまでもないのだろうが、Grace CPUは72コアのNeoverse V2コア、Hopper GPUは132 SMXという構成になっている。CPU Coreの数からCPUノード数を算出すると

169万4592÷72=2万3536(ノード)

 同様にGPU Coreの数からGPUノード数を算出すると

310万6752÷132=2万3536(ノード)

 となるので、GraceだけやHopperだけ、というノードはなくGrace Hopperの形で2万3536ノードが実装されているものと思われる。

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

  • 角川アスキー総合研究所

プレミアム実機レビュー

ピックアップ

デジタル用語辞典

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン