結城さんの「作りたいもの」を最優先、工場と直接交渉してハイスペックでもかなり価格を抑えた

「結城さくなのプロ意識にキャリーされた」― AMICISコラボキーボードは本人120%監修、作り手の情熱や哲学に迫る

文●Okano 編集●八尋/ASCII

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可愛さの裏に隠された“本気”―結城さくなの想いを乗せたハイスペックへの挑戦とLUMINKEYの職人技

――価格を抑えつつ高品質を維持するために、とくにご苦労された点はありますか?

森坂氏:この価格設定を実現するまでには、相当な苦労がありました。当然ながら、高品質な部品や高性能なスペックを求めれば価格は上昇します。一方で私たち自身、結城さん、そしてフカヒレ先生にも適切な利益を確保する必要がありました。そのため、パーツの選定や仕様調整で可能な限り妥協せず、かつ「年間でさまざまなプロジェクトがあるため、これだけの発注量が担保できる」といった特殊な交渉も行ないながら、なんとか価格を抑えることができました。

 とくに結城さんはファンの皆様のことを第一に考え、「可能な限り安くしたい」という強いご意向でした。そのお気持ちに応えるべく「どうにかします!」と言ってしまったことを、後で後悔するほど大変でした(笑)。

多くのファンの手に届くように、価格についてもかなりがんばったという

 また、生産工場が中国にあるため、言語の壁にも苦労しました。パーツに関する細かい要望や価格交渉、ユーザビリティーに関する考え方の共有、工場側の製造意図の確認など、非常に複雑なコミュニケーションが求められ、「ラピッドトリガー」のような専門用語も多く、意思疎通には細心の注意を払いました(笑)。

――キーボードブランド「LUMINKEY」との協力体制も特徴的ですね。

森坂氏:LUMINKEYさんの技術のおかげで、非常に高いレベルのスペックと安定性を兼ね備えた、素晴らしいキーボードが完成しました。

 とくにLUMINKEYさんの職人気質と、製品に対する強いこだわりは一緒に協力していただくうえで大きなポイントでした。例えば、キーキャップは白とピンクのグラデーションデザインですが、これは塗装工程が非常に複雑になるため、通常の工場では敬遠されがちです。しかし、LUMINKEYさんは一切妥協せず、見事に仕上げてくださいました。工場選定においては、単に「大手だからいい」という基準ではなく、職人気質で細部にまで徹底的にこだわってくれるかどうかをもっとも重視しました。実際に現地へ足を運び、工場環境や機材の品質などを直接確認した上で、提携を決定しています。

――LUMINKEYさんの品質管理は、具体的にどのようなものだったのでしょうか?

森坂氏:LUMINKEYさんは単にクオリティーが高いだけでなく、職人気質をお持ちです。例えば、虫眼鏡を使わないと見えないような本当に小さな傷ですら決して見逃さず、納得がいくまで塗装をやり直します。そのチェック工程も、機械と人間の目によって何度も繰り返されるのです。通常の工場では、まずそこまで徹底しません。

 実際、検品ではじかれた製品を見ても、私たちですら「どこに問題が?」思うほどその基準は厳しいものでした。「本当にいいものを世に送り出したい」という彼らの理念は、私たちのブランドコンセプトとも深く共鳴する部分であり、だからこそ意気投合できたのだと思います。こだわりが強い分、ときにはLUMINKYさん側から「もっとこうすればよくなる」といった積極的な提案をいただくこともありました。

――結城さんのプロ意識とLUMINKEYの職人気質がAMICISというブランドのうえで成り立っているんですね。

森坂氏:このプロジェクトは、結城さんの高いプロ意識と、LUMINKEYさんの職人としての揺るぎないこだわり、そうした要素が融合し、素晴らしい成果へと繋がったのだと感じています。それぞれの強みを結集することで、最高のプロダクトを生み出すことができました。どれか一つでも欠けていたら実現できていなかったと思います。