【JSTnews5月号掲載】NEWS&TOPICS 研究成果/戦略的創造研究推進事業CREST 研究領域 「生体マルチセンシングシステムの究明と活用技術の創出」 研究課題 「知覚と感情を媒介する認知フィーリングの原理解明」
霊長類の脳機能をデジタル上で再現!「デジタルツイン脳シミュレーター」が開発される!
2025年05月26日 07時00分更新
現実世界の物やプロセスをコンピューター上でモデル化する「デジタルツイン」の実用化が進んでいます。モデル化の対象となるのは、産業用機械や飛行機など多岐にわたり、最近ではヒトの臓器のデジタルツインが循環器の治療や手術前シミュレーションで利用されています。精神・神経疾患は個人差が大きいため、個別化治療への適用が期待されていますが、複雑な構造と機能を持つ脳での開発は困難とされていました。
国立精神・神経医療研究センターの高橋雄太室長らの研究チームは、霊長類であるマカクザルの脳活動をリアルタイムでシミュレーションし、覚醒状態を正確にモニタリングする「デジタルツイン脳シミュレーター」を開発しました。具体的には、脳の3つの階層における潜在的な脳活動をモデル化し、大脳皮質で生じる電気活動「皮質脳波(ECoG)」信号を予測して生成。さらに、予測と観測の誤差に基づいて、潜在状態をリアルタイムに推測して予測を更新する「データ同化技術」により、その時点の脳の状態を反映させた高精度なシミュレーションを可能にしました。
3つの階層における潜在的な脳活動を表すモデルを作成し、モデルが生成したECoGとマカクザルで観測したECoGの誤差をモデルにリアルタイムにフィードバックすることで、麻酔時や覚醒時の高精度なシミュレーションを可能にした。
研究チームは、麻酔時の潜在状態変化を引き起こす薬物投与シミュレーションで、モデルの生成するECoG信号が麻酔時や覚醒時の特徴を十分に表現していることを確認。さらに、覚醒度の変化に重要な役割を果たしている脳の機能的ネットワークを発見しました。今後は、脳活動と感覚信号を統合的にモデル化し、精神・神経疾患における情報処理の変調を包括的に再現する研究を進めることで、精神・神経疾患における病態解明や個別化治療の開発が期待されます。
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