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未来を変えるイノベーションが集結!注目スタートアップ10社が熱いピッチを繰り広げた「XTC JAPAN 2025」

「XTC JAPAN 2025」レポート

連載
JID 2025 by ASCII STARTUP

提供: XTC JAPAN

 2025年2月28日、グローバル課題に技術で取り組む起業家のための世界最大規模のスタートアップ・コンテスト「Extreme Tech Challenge(以下「XTC」)」の日本大会「XTC JAPAN 2025」が開催された(「JID 2025 by ASCII STARTUP」と共同開催)。

 XTCは、世界120カ国から数千社が参加するピッチコンテスト。世界のVC・企業70社以上が共同で運営し、グローバル課題に技術で取り組む起業家を発掘し支援する。日本では、2020年から「XTC JAPAN」を毎年開催しており、日本発のディープテック・スタートアップが海外展開や資金調達の機会をつかんできた。

 今回ピッチを行ったのは、多数エントリーした日本国内外の企業から厳選された10社。XTCでは、革新性、市場性、必要性、チームという4つの観点で総合的に審査が行われる。

 革新性は、プロダクトや事業にどれだけ新しい工夫がされていて、競合と比べてはっきりと差別化されているかどうかがポイント。今まで実現できなかった、他社には真似できないスタートアップが高く評価される。

 市場性は、事業がどれだけ大きく成長する可能性があるか、そのための道筋、アクションをどれだけ具体的に描けているか。素晴らしいSDGsのアイデアであったとしても、ビジネスとしてスケールしなければ世界は変えられないというXTCの強い思いを反映した大切な評価ポイントとなる。

 必要性は、事業が世界をどれだけ良い方向に変えるか、社会や地球への影響力となる。世界中のたくさんの人が真剣に困っている、今後困ることになるであろう問題に取り組む起業家を発掘、支援するのを目的とするXTCの大切なテーマだ。

 チームは、メンバーが事業を進めるのにぴったりなチームかどうか。どれだけ顧客や業界のことを深く理解しているか、そして、夢を実現するためにどんな能力が必要になるか。肩書きや実績だけでなく、登壇者の理解の深さがポイントとなる。

 審査員は、Infinite CORE株式会社の井上智子氏、立命館大学 情報理工学部の西尾信彦氏、株式会社アイティーファームの白井健宏氏、Plug and Play Japan株式会社の馬静前氏、アトラシアン株式会社のスチュアート ハリントン氏が務めた。

(左から)Infinite CORE株式会社 代表取締役 井上 智子氏、立命館大学 情報理工学部 教授 西尾 信彦氏、株式会社アイティーファーム ジェネラルパートナー 白井 健宏氏、Plug and Play Japan株式会社 Head of Ventures 馬 静前氏、アトラシアン株式会社 代表取締役社長 スチュアート ハリントン氏

 ピッチ時間は3分間。この日本大会に優勝した企業は、2025年11月に米国サンフランシスコで開催が予定されるXTC世界大会に招待される。世界中のXTCパートナー企業および歴代ファイナリストによるネットワーキング支援を受けられるXTCグローバルファイナリストコミュニティへの参加資格や、海外資金調達および海外協業をXTCとIT-Farmがサポートするという特典も得られる。

注射不要のインスリン経口薬を実現する「超微細気泡(UFB)医療用水」(ファルストマ株式会社)

 1社目の登壇はファルストマ株式会社 代表取締役CEO 久保田雅彦氏で、「医療用UFB水を用いたインスリン経口薬の開発 ~世界初のインスリン経口薬の実現を目指して~」というテーマでプレゼンした。

ファルストマ株式会社 代表取締役CEO 久保田 雅彦氏

 ファルストマは慶應義塾大学発のベンチャーで、気泡径が1マイクロメートル未満のウルトラファインバブル(UFB)を高濃度に含む医療用水を製造する技術を開発している。通常のシャワーヘッドでは1mlに5000万個ほどの泡が含まれるが、高濃度UFB水では155億個も含んでいるという。このコア技術をもとに、抗体医薬品や再生医療品、培養肉といったビジネスモデルを構想しているが、まずはインスリン経口薬の開発を進める。

 UFBであればインスリンを安定して分散させることで、腸壁を通過させ、注射不要の経口薬開発を実現できるという。大手製薬企業が挑戦しては失敗してきた難題を、微細気泡を利用する独自アプローチで克服しようとしているのだ。スケジュールは、3年後の2027年に臨床フェーズに移行する予定だという。

1.0マイクロメートル未満の気泡を含むUFB水を製造

UFBにより、インスリンを小さいまま腸壁を通過させられる

AIエージェントのトラブルを未然に防ぐデータ最適化管理プラットフォーム「datagusto」(株式会社datagusto)

 2社目は株式会社datagustoで、CEO/Co-Founderのパー 麻緒氏が登壇しプレゼンした。datagustoはAIエージェント向けデータ最適化AIエージェントを提供する。

株式会社datagusto CEO/Co-Founder パー 麻緒氏

 AIエージェントが自律的にアプリケーションを構築するようになる未来、誰がこのエージェントを管理したり、実際に機能しているかどうかをチェックするのかが課題となる。人間が手動で観察するのは非効率であり、スケールさせることが難しい。そこで、datagustoはプロセス全体を段階的にチェックし、データも確認してプロンプトを表示し、各ステップで問題が検出された場合は、顧客に直接届く前に防止する。その結果、AIエージェントの運用に伴うトラブルの対応時間を90%削減できるという。

 オープンソースでサービスを提供し、ユーザー自身がルールをカスタマイズし改善できるように設計している。これにより、ユーザーコミュニティの活性化が進み、サービスの精度や利便性が高まる仕組みだという。

 開発チームはデータサイエンスや自然言語処理分野で深い専門性を持つメンバーで構成され、すでにグローバルで約10社の顧客にサービスを提供しており、今後も米国市場を中心に事業を拡大していく予定とのこと。

ステップバイステップでAIエージェントの動作をチェックする

経験豊かな人材でチームを組んでいる

撮影後も焦点調整が可能なライトフィールド技術で工業検査を完全自動化するAIカメラ(ANAX Optics 株式会社)

 3社目はANAX Optics 株式会社 代表取締役 桐野宙治氏が登壇。ANAX Opticsはライトフィールド技術を活用したカメラシステムを開発している。

ANAX Optics 株式会社 代表取締役 桐野 宙治氏

「日本国内の素形材産業の会社数は、2017年からの5年間で3万社から2.2万社に減少しています。この業界は人手不足になっており、マシンビジョンカメラの市場もこの時期に伸びています。我々もここに参入し、ライトフィールド光学という新しい技術を導入して差別化を図ります。具体的には、人が目視で行っている検査をカメラとロボットとAIに置き換えることで、人を単純作業から解放しようとしています」と桐野氏。

 この技術は特殊な「自由曲面マイクロレンズアレイ」を用いており、従来のカメラとは異なり、撮影後に視点や焦点を自由に調整できるのが特徴だ。検査工程などの人手が多く必要だった単純作業をAIが正確に支援または代替できる。

 さらに、光を効率よく活用して小型でまぶしさを抑えた設計ができ、対象物に最適化した柔軟な検査システムを構築することが可能だ。コア技術であるLight Engineは特許出願済みで、光学設計を革新的に自動化し、中小製造業の人件費削減や大手製薬会社などの高度な検査工程の完全自動化を支援しているという。

 事業計画としては、27年10月期にソフト事業を軌道に乗せ、29年10月期にハード事業で売上とフィールドを拡大し、30年10月期にはソフト22億円、ハード30億円の売り上げを計画している。

これまでの常識にとらわれない光学系を設計できるようになる

Light Engineは半導体やバイオ、医療分野へ発展する可能性を持っている

外科医の手の震えを抑えて超微細手術の精度を高める手術支援ロボット「RAMS」(F.MED株式会社)

 4社目は、F.MED株式会社 CEO、Co-Founder 下村景太氏によるプレゼン。F.MEDが開発するのは、顕微鏡を使った微細な手術の精度を向上させるロボットRobot-Assisted MicroSurgery(RAMS)システムだ。

F.MED株式会社 CEO、Co-Founder 下村 景太氏

 従来、頭頸部がんや乳がん後の再建手術、脳梗塞のバイパス手術、切断指の再接着手術、リンパ浮腫の治療、腎疾患といった微小な血管や神経を縫合する手術は、外科医の手の震えが問題となり、習熟には長年の訓練が必要だった。

 RAMSは特許取得済みの円筒型プラットフォームマニピュレーターを備えており、外科医の手の動きを再現しつつ、動きを縮小して微細な操作を可能にし、手の震えを抑えることができる。0.3ミリという極めて細い血管でも縫合したり糸を結んだりできるという。

 安全性と効率的な訓練を両立でき、これまで難しかった症例でも手術が可能になる。市場にはすでに外科ロボットが存在するが、それらは主に腹腔鏡手術用であり、顕微鏡やルーペを用いた微細な縫合を必要とする手術向けではないという。

 RAMSはまず、日本国内の大学病院や医療センターを対象に製品展開を始め、再建手術など比較的リスクの低い領域で臨床実績を確立した後、より高度な手術領域に展開する。そして、2029年以降のIPOを視野に、医療機器としての承認取得を目指しているという。

提供するソリューションの例

極小のリニアモーターを利用して、マニピュレータをスムーズに操作できる

常温・常圧で環境負荷なく芳香族化学品を生産する、次世代のバイオものづくり(BioPhenolics株式会社)

 5社目は、BioPhenolics株式会社 代表取締役社長 貫井憲之氏。BioPhenolicsは2023年に創業した筑波大発スタートアップで、真に経済性のある「バイオものづくり」に取り組んでいる。

BioPhenolics株式会社 代表取締役社長 貫井憲之氏

 従来の石油化学に代わってバイオマスを原料に用い、発酵技術を駆使して芳香族化学品を製造する。特に、フェノールやカテコールなど炭素数6以上の芳香族化合物に注目し、スマートフォンや自動車、半導体など幅広い分野への応用を目指している。芳香族化学品市場は約30兆円規模で成長中で、バイオ由来への転換により市場拡大と持続可能な社会実現の両方を追求している。

 技術的な特長は、常温常圧で水系のバイオプロセスを用いている点で、従来の石油化学品に比べて製造時のCO2排出量を大幅に削減できる。また、生産した化学品を長期間使用することで、大気中のCO2を長期間貯蔵する効果もある。すでにキロ単位の生産を行っており、将来的には大規模な量産を視野に入れている。

 事業展開は、自社製品の開発・販売を行うフェノリクス事業と、他社から受託するバイオものづくりの開発サービスの二軸となる。2028年までに中型の実機を立ち上げ、その後2034年までに大型実機を複数基導入する計画だ。

石油に頼らないバイオものづくりにチャレンジしている

ラボから製造までをワンストップで行う

焼却ゼロ・輸送ゼロを目指すAI制御のごみ熱分解プラント「JOYCLE BOX」(株式会社JOYCLE)

 6社目は株式会社JOYCLE CEO 小柳裕太郎氏が登壇。ごみをデータとAIの力で運ばず、燃やさず、資源化する分散・可搬型IoTアップサイクルプラント「JOYCLE」をプレゼンした。

株式会社JOYCLE CEO 小柳 裕太郎氏

 日本の人口減少に伴い、ごみの焼却施設が次々と閉鎖されているという。そのため、ドライバーが不足している中、ごみを遠くの焼却施設まで運ぶ必要があり、廃棄物処理の費用が過去10年間で10%以上も増加。ごみの輸送や焼却処理は二酸化炭素の排出にもつながり、環境面での問題も深刻化している。このような課題を解決するために、小型で移動可能な「JOYCLE BOX」という装置を開発した。データとAIを活用して、ごみを燃やさずに熱分解し、無害なセラミック灰やバイオ炭へと資源化するのが特徴だ。

「JOYCLE BOX」にごみを投入すると、AIがデータ管理を行い、火を使わずに電熱線で200〜300℃まで加熱して一次処理を行う。その後、有害ガスを効率的に分解しつつ冷却し、最終的に灰やバイオ炭を取り出す。この工程で液体や金属以外の燃えるごみを、元の体積の約1/100に圧縮することが可能だ。さらに、この処理で発生した熱を利用して発電もでき、廃棄物を新たなエネルギー源にできるというメリットもある。

「JOYCLE BOX」は、病院や地方自治体、離島のごみ処理問題に有効で、例えば病院の産業廃棄物処理コストを年間約半分に削減することが可能。観光地や離島など、遠方への輸送や大型施設の維持が困難な地域での活用も見込まれている。すでに国内では自治体や医療施設など複数の場所で導入が進められており、海外市場でも特にアジアの離島地域などを中心に需要が高まっているという。

AIを活用して、効率的に炭化・煙無害化を実現する

100床以上の病院なら3~5割の産廃処理コストを削減できる

唾液だけで簡単・高精度に6種類のがんリスクを評価できる検査キット「サリバチェッカー」(株式会社サリバテック)

 7社目は株式会社サリバテック 代表取締役 砂村眞琴氏がプレゼンした。サリバテックは、唾液を用いて簡単にがんリスクを評価する検査「サリバチェッカー」を提供している。

株式会社サリバテック 代表取締役 砂村 眞琴氏

「サリバチェッカー」は口腔がんや大腸がん、乳がん、肺がん、膵がん、胃がんの計6種類のがんリスクを評価できる。唾液で検査できるので身体に負担がなく、血液や尿検査と比べて手軽なのがメリットだ。また、唾液中に含まれるポリアミンなどの代謝物の変化を独自のAI解析技術で高精度に検出し、がんリスクの効率的な評価を行っている。価格も比較的安価であり、個人だけでなく企業や医療機関への導入が進んでいるという。

 ビジネスモデルとしては医療機関の自由診療に加え、企業向けには従業員の健康管理パッケージとして提供することで健康経営の実践を支援するほか、個人向けには検査キットをサブスクリプション形式で販売することで幅広い層にアプローチし、安定した収益基盤を構築するとした。

 すでに国内市場では、医療機関への導入施設数が1900施設、企業や団体の導入数も900を超え、延べ7万人にサービスを提供している。2025年以降には、常温返送キットの導入を含むサービス展開を予定しており、地方での利用拡大や顧客満足度の向上を図る。さらに2030年からは北米およびアジア市場への進出も見据えているという。

「サリバチェッカー」はだ液だけで6種類の眼リスクを評価できる

すでに多くの人がサービスを利用している

非破壊検査を自動化し、安全性と収益性を飛躍的に高める6脚型ロボット(AMC Robotics)

 8社目に登壇したのはAMC RoboticsのMarc-Lorenz Dohmer氏。AMC Roboticsは、35年以上のビジネス経験とロボット技術の研究を融合し、産業用の検査に特化したロボットを開発している。

AMC Robotics Marc-Lorenz Dohmer氏

 AMCが開発したロボットは6本の脚を持ち、360度の視界を備え、インフラなどの構造物を壊したり傷つけたりせずに内部を検査する「非破壊検査」を自動化する。高精度なデジタルデータを収集し、デジタルツインにも活用できる。ロボットによる検査を導入することで検査コストを20分の1に抑え、安全性を高めながら検査頻度を増やすことも可能になる。特に造船業界において品質保証や品質管理を自動化し、今後5年間で55の造船所への導入を目指し、年間6300万ドルの継続的な収益を見込んでいるという。

 収益モデルとしては「RaaS(Robotics as a Service)」を採用しており、顧客のワークフローに直接組み込むことで長期的な関係を築き、74.8%の高い粗利益率を実現している。

 また、AMC Roboticsは今年中にシードラウンドの資金調達を実施して仙台市にエンジニアリング施設を設立する計画を立てている。2027年にはシリーズAの資金調達を行い、2028年からロボットの量産化を開始して他分野への展開を図るという。

 最終的な目標として宇宙市場への参入を掲げ、すでに株式会社ispaceやブラジルの宇宙機関と月面ミッションについて交渉を進めているとのこと。宇宙市場は2040年代初頭に約300億ドル規模に拡大すると予測されており、AMC Roboticsは地球上から宇宙まで活躍するロボット技術のリーダーとなることを目指しているという。

AMC Roboticsが開発する6本足のロボット

将来的に宇宙領域に進出する計画を持っている

山火事現場の人命リスクとコストを削減する、AI搭載・遠隔操縦型消火ロボット(知能技術株式会社)

 9社目には知能技術株式会社 代表取締役の大津良司氏が登壇。知能技術は山火事を安全かつ効率的に消火するための防災ロボットを開発している。

知能技術株式会社 代表取締役 大津 良司氏

 山火事は世界中で深刻な問題になっており、その消火活動には多くの困難が伴う。特に、現在主流の空中散布による消火方法は、多くの水を必要とし、高額で危険なヘリコプターや飛行機を利用するため、事故のリスクもある。実際に2023年には米国カリフォルニア州でヘリコプター同士が衝突し、殉職者を出す悲劇的な事故も起きているそう。このような状況を背景に、消防隊員の命を守りつつ、効果的に消火活動を進める新たな手法が求められている。

 この防災ロボットは、小型の建設機械をベースにしたもので、遠隔操縦によって消火活動を行えるのが特徴。消防隊員は離れた安全な場所からロボットを操作できるため、人命のリスクを大幅に減らせるのだ。さらに、単に火を消すだけではなく、火災現場で必要な堀の掘削や障害物の除去なども自動化できるAI技術を搭載しているのがポイントだ。

 作業エリアを設定することでロボットが自動で掘削や土砂の移動を行うため、複雑な現場であっても効果的な防火帯の構築が実現可能になる。さらに、同社では操縦方法や作戦展開に関するマニュアルも完備しており、ロボット導入後のトレーニングやメンテナンスの体制も整えているため、消防隊員がロボットの運用に困ることがないよう工夫されている。

 海外市場へも積極的に展開を進めており、自治体や消防署に対して導入提案を行っているという。

「例えばカリフォルニアでは年間7000回の火災が起きています。財政的負担も大きくなっていますが、我々のロボットを使うことができれば、コストと人的負担と言う課題を解決することができます」(大津氏)

知能技術の消防ロボット。すでに10府県の消防が配備している

山火事などの過酷な環境でも防火帯が作れる

24時間いつでも細菌検査を自動化し、医療現場の負担を解消する「Mycrium」(株式会社GramEye)

 最後となった10社目は、株式会社GramEye CEO/M.D. 平岡悠氏が登壇した。GramEyeは、医療現場で広く使用されているグラム染色という細菌検査をAIとロボティクスを活用して自動化する技術を提供する。

株式会社GramEye CEO/M.D. 平岡 悠氏

 グラム染色は細菌の分類に使われる検査法で、日本国内だけでも年間約6500万回も実施されている。しかし、この作業は現在も手作業で行われ、微生物検査技師の作業時間の約40%を占めており、大きな負担となっている。報告までに半日から2日かかることもあり、結果として患者の治療開始が遅れ、その分、入院期間の長期化や抗菌薬耐性菌のリスクが増大してしまうという。夜間や休日に検査ができる施設もごく一部に限られているというのも問題だ。

 GramEyeが開発した微生物用自動染色分析装置「Mycrium」は、検体の染色や顕微鏡観察、判定までのプロセスを自動化する医療機器だ。血液や喀痰(かくたん)、尿など一般的な検体に対応しており、わずか10分で処理できるのが特徴。最大で同時に45検体の処理が行え、24時間対応できるため、従来の検査手法と比べて圧倒的な効率化を実現する。AIにより菌の形態を4つに分類でき、将来的にはさらに詳細な菌種の特定まで可能となる見込みだ。

 すでにこの技術の特許を取得しており、日本国内の病院8施設での導入が2024年度中に予定されている。また、グローバル市場への展開も視野に入れており、米国やヨーロッパへの進出計画が進行中だ。グラム染色のデジタル化が世界的にも遅れている中、同社が提供する自動化ソリューションは国際的な標準化に向けた重要なプラットフォームとなる可能性を秘めている。

GramEyeの「Mycrium」

AIライセンスはサブスク、試薬については「pay-as-you-go」方式を採用

気鋭のスタートアップ8社がフラッシュピッチで斬新なアイデアを披露
X-Pitch by Plug and Play Japan Cross-Industry Startup Showcase

 ファイナリスト10社によるピッチ終了後、審査が行われている間には、ディープテック企業8社によるフラッシュピッチ・セッション「X-Pitch by Plug and Play Japan Cross-Industry Startup Showcase」が行われた。

 同セッションは、Plug and Play JapanとXTCとの共同開催によるもの。これから市場に挑戦する新進気鋭のスタートアップも登壇し、それぞれの革新的なビジネスモデルや先進の技術、斬新なアイデアを次々と披露した。登壇したスタートアップは、以下の通り。

・アンペアクト株式会社 https://www.amperact.co.jp/
 ナンバープレート認証技術を活用したEV充電プラットフォームを提供

・株式会社SEGNOS https://segnos.co.jp/
 血液1滴で診断可能な高感度診断技術による医療DXの実現に貢献

・モビ・ウェザー
 自動車を気象センサー化し、その高密度な気象ビッグデータを活用した積乱雲予測

・ヴィタネットジャパン株式会社 https://www.vita.net/jp/
 モバイル通知による店舗内広告で顧客体験を向上させる広告プラットフォームとデジタル本人認証を提供

・株式会社Kailas Robotics https://kailasrobotics.com/
 ドローンなどの移動体に搭載可能な小型・高性能ロボットアームの開発

・株式会社PaymentTechnology https://pay-tech.co.jp/
 スキマバイトから正社員までの経験者(アルムナイ)に特化した人材採用サービス「エニジョブ」を提供

・パートナーサクセス株式会社 https://www.partnersuccess.co.jp/
 代理店との関係管理や協力体制の強化、代理店満足度の向上のためのPRMツールの開発・提供

・株式会社ErudAite https://about.erudaite.ai/
 独自アルゴリズムに基づき文脈を理解する超高精度翻訳AIエージェントを提供

フラッシュピッチの様子

「XTC JAPAN 2025」優勝はサリバテック、準優勝は知能技術に決定

 審査の結果、「XTC JAPAN 2025」優勝を果たしたのは、唾液成分から6種類のがんリスクをスクリーニング検査するサリバテック。そして、準優勝は山火事消火のための遠隔操縦重機を開発する知能技術となった。

 優勝したサリバテックは、2025年11月に米国サンフランシスコで開催が予定されるXTC世界大会に招待されるほか、世界中のXTCパートナー企業および歴代ファイナリストによるネットワーキング支援を受けられるXTCグローバルファイナリストコミュニティへの参加資格を得る。

 サリバテック 代表取締役の砂村氏は、「このような素晴らしい賞をいただき誠にありがとうございます。私たちの組織、一緒に働いている人たちみんなが、社会のために貢献したい、社会のために良いことがしたいとの思いで日々取り組んでいます。そして、それを事業として成功させることが、私の大きな夢です。日本代表として世界大会にも出場し、かならずこのビジネスを育てていきたい」と受賞の喜びと抱負を語った。

優勝したサリバテック 代表取締役の砂村氏(右)と審査員を務めた井上氏(左)

準優勝を収めた知能技術 代表取締役の大津氏(右)と審査員を務めたスチュアート ハリントン氏(左)

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