AMDはクリエイティブ用途も強い! 注目の「AMD Ryzen 9 9950X3D」「AMD Radeon RX 9070 XT」の実力を探った!
2025年03月28日 16時00分更新
「AMD Ryzen 9 9950X3D」「AMD Radeon RX 9070 XT」でクリエイティブ用途のポテンシャルを探る
2025年3月、AMDはデスクトップ向けの新型CPU「AMD Ryzen™ 9 9950X3D プロセッサ」と、デスクトップ向けの新型GPU「AMD Radeon™ RX 9070 XT」を矢継ぎ早に市場へと投入した。どちらもゲームパフォーマンスが高いことからゲーマーから高い人気を博しているが、ゲーム以外の用途、たとえばクリエイティブ向けではどの程度のパフォーマンスが期待できるのだろうか。そこで、両者を組み合わせたテスト環境を用意し、そのポテンシャルを探った。
「AMD Ryzen 9 9950X3D」は、高クロック動作を可能にする第2世代「3D V-Cache」を搭載
まずは、これらのCPUとGPUについて、その詳細を説明していこう。
「AMD Ryzen 9 9950X3D」は、「Zen 5」アーキテクチャーを採用した最新世代の16コア/32スレッドタイプのCPUだ。ほかの「AMD Ryzen™ 9000」シリーズと同様に、整数演算命令の演算結果を一時的に収納する「Instruction Retire Queue」が448命令に増やされているため、順不同で実行できる命令が増え、SMT(Simultaneous Multi-Threading:同時マルチスレッディング)性能が向上している。クリエイティブ用途ではSMT性能が効いてくる場面が多いので、「AMD Ryzen 9 9950X3D」は高いパフォーマンスが期待できる。
そして、「AMD Ryzen 9 9950X3D」の最大の特徴は「AMD 3D V-Cache™ テクノロジ」(以下、3D V-Cache)を備えている点だ。この「3D V-Cache」は、CPUダイの上に高速なキャッシュメモリーダイを実装することで、三次キャッシュ(L3キャッシュ)容量を拡大させるというもの。これにより、CPUが低レイテンシーで大容量のキャッシュにアクセスでき、ゲームのパフォーマンスが向上するわけだ。ちなみに、「AMD Ryzen 9 9950X3D」の三次キャッシュ容量は128MBで、「AMD Ryzen™ 9 9950X プロセッサ」の64MBから2倍増を実現している。
この「3D V-Cache」は、「AMD Ryzen™ 7 5800X3D プロセッサ」といった「Zen 3」アーキテクチャーで初めてお目見えした技術だが、CPUダイとヒートスプレッダーの間に「3D V-Cache」が挟まる形となるため、CPUダイの熱を逃がしにくいという課題があった。そのため、「AMD Ryzen 7 5800X3D」をはじめ、「AMD Ryzen™ 9 7950X3D プロセッサ」などは、「3D V-Cache」を搭載しない同じモデルナンバーの製品より、動作クロックが低く抑えられていた。例えば、「AMD Ryzen 9 7950X3D」の最大ブーストクロックは5.7GHzと「AMD Ryzen™ 9 7950X プロセッサ」と同じだが、ベースクロックは4.2GHzと「AMD Ryzen 9 7950X」と比べ300MHz低くなっている。
しかし、「AMD Ryzen 9 9950X3D」が採用する「3D V-Cache」は第2世代へと進化し、「3D V-Cache」をCPUダイの裏側に実装することで第1世代の課題を解消。それゆえ、「AMD Ryzen 9 9950X3D」の最大ブーストクロックは5.7GHz、ベースクロックは4.3GHzと、これは「AMD Ryzen 9 9950X」から動作クロックを抑える必要がなくなっている。
このように、第1世代の「3D V-Cache」は動作クロックが抑えられていたため、動作クロックがパフォーマンスに影響するようなアプリケーションではあまり恩恵が受けられなかった。そのため、「3D V-Cache」搭載モデルはゲームパフォーマンスのみ注目される場面が多かったが、「AMD Ryzen 9 9950X3D」の動作クロックは高く、すべての利用シーンで高性能が期待できるCPUになったというわけだ。
レイトレーシング性能やAI処理が進化し、コーデックも改良が施された「AMD Radeon RX 9070 XT」
続いてGPUの「AMD Radeon RX 9070 XT」だ。こちらはAMDの最新GPUアーキテクチャー「RDNA 4」を採用したGPUで、Navi 48コアを採用している。4096基のStream Processorを有し、357mm2のダイサイズに約539億個のトランジスタが搭載されている。さらに、AI処理を担うAI Acceleratorを128基、レイトレーシングユニットのRay Acceleratorを64基備え、前者は第2世代へと、後者は第3世代へとそれぞれ進化した。Ray Acceleratorに関しては、AMDによると前世代の「RDNA 3」アーキテクチャーに比べて1基のCompute Unitあたりのスループットは2倍を実現したとのこと。
また、AMD独自の超解像技術「AMD FidelityFX™ Super Resolution 4」(FSR 4)では複数のフレームを生成でき、その処理にAI Acceleratorを使用するようになっている。
組み合わされるビデオメモリーは、従来と変わらずGDDR6で、その容量は16GB。メモリーバス帯域幅は640GB/sに留まるものの、AMD独自のキャッシュシステムであるInfinity Cacheは64MB用意されており、こちらも第3世代へと進化している。
そして、「AMD Radeon RX 9070 XT」にはメディアエンジンが2基用意され、H.264、HEVC、AV1コーデックの最適化が施されている。それにより、H.264やHEVCのエンコード品質が25%向上し、AV1は2倍のスループットを実現しているという。描画性能だけでなく、こうしたコーデックに関するパフォーマンスもしっかりとメスが入っているあたりは好感が持てる。
