脱VMwareに向けて大手SIerのNTTデータがKVMに舵を切るという記者発表会のレポートは、読者の関心も高かったようだ(関連記事:脱VMwareで“KVM”に舵を切る NTTデータが仮想化基盤市場に本格参入)。ここではKVMの歴史を振り返り、テクノロジーの選択について学べることはないか考えてみたい。
現在のITを支える基盤とも言える仮想化技術。商用UNIXだけでなく、インテルやAMDなどのx86プラットフォームで利用できるようになったのが、VMwareの功績であることは間違いない。1990年代後半から一気に市場を席巻したVMwareに対して、2007年にシトリックスがLinux最古のハイパーバイザ型仮想化技術であるXenの開発元(XenSource)を買収し、2008年にマイクロソフトもHyper-Vの提供を開始した。KVMがLinuxカーネルにマージされたのもちょうどそんな時期。2008年にはKVMの開発元(Qumranet)をレッドハットが買収し、Red Hat Enterprie LinuxにKVMベースの仮想化機能を初めて搭載した。その後、XenやHyper-VがVMwareの牙城を崩すのに苦戦する中、KVMは着実に実績を積んでいく。
一方で、2010年代後半から台頭してきたのはクラウドとの親和性や柔軟性の高いコンテナだ。Dockerからkubernetesへとエンジニアの関心は移り変わり、サーバーレスとともにクラウドネイティブなシステム開発で当たり前のように使われるようになった。そんな中、仮想化技術に関しては、2017年にAWSがハイパーバイザーをXenからKVMに移行したのが大きな分岐点となった。その後、ブロードコムによる買収をきっかけにした脱VMwareの流れで、結局は実績を積んだKVMが再注目されるようになったという経緯だ。
前述したNTTデータの発表会で注目したいのは「システム主権の確保」だ。脱VMwareに右往左往を余儀なくされる現在の動向を考えると、「OSやWebサーバー、アプリケーションサーバー、データベースなどでは、OSSが浸透しており、『仮想化基盤だけが取り残された』(NTTデータ 冨安氏)状況だった」というのはけっこう重い指摘。ベンダー依存しないためのOSSの知見を、普段からきちんと積んでおくことの重要さを再認識させられる。
文:大谷イビサ
ASCII.jpのクラウド・IT担当で、TECH.ASCII.jpの編集長。「インターネットASCII」や「アスキーNT」「NETWORK magazine」などの編集を担当し、2011年から現職。「ITだってエンタテインメント」をキーワードに、楽しく、ユーザー目線に立った情報発信を心がけている。2017年からは「ASCII TeamLeaders」を立ち上げ、SaaSの活用と働き方の理想像を追い続けている。

この連載の記事
-
第117回
ITトピック
生成AI時代の露払いとしてAlexaの果たした役割は大きい -
第116回
Team Leaders
その日、オレは思い出した 場所と時間に囚われていた社員総会を -
第115回
ITトピック
生成AIでアプリを作ったらSaaSを解約できた話 -
第114回
ITトピック
旅の途中で金沢のSORACOM UGに参加したら、地方勉強会の良さを改めて体感できた話 -
第113回
ITトピック
AIが商品を選び AIが店を切り盛りする -
第112回
TECH
ドワンゴサイバー攻撃で改めて認識したい「皆さん他人事じゃないです」 -
第112回
ネットワーク
IoTはオワコンじゃない 10年目のソラコムイベントで見た熱狂 -
第111回
ITトピック
スピッツの曲に見た「人の価値創造」 及川さんの話、刺さりすぎです -
第110回
エンタープライズ
PC管理はもう勘弁 Windows 365 Linkへの関心に情シスの叫びが聞こえる -
第109回
ITトピック
コードも行動も「バイブス」の時代? 情報オーバードーズに疲れて人が行き着く先 -
第108回
ITトピック
Skypeよ、安らかに眠れ コミュニケーションがアプリになる世界をリード - この連載の一覧へ








