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自力で無理ならVCと公的支援を頼るべし 知財を活用した資金調達と契約のポイントを解説

スタートアップと知財専門家のためのネットワーキングイベント2024 in 福岡 by IP BASE~スタートアップの成長に直結する知財支援&無料相談会~

特集
STARTUP×知財戦略

この記事は、特許庁の知財とスタートアップに関するコミュニティサイト「IP BASE」に掲載されている記事の転載です。

 2024年12月4日、特許庁スタートアップ支援班は、知財セミナー「スタートアップと知財専門家のためのネットワーキングイベント2024 in 福岡 by IP BASE~スタートアップの成長に直結する知財支援&無料相談会~」を福岡市の「Fukuoka Growth Next」にて開催した。セミナーでは九州で活動する知財専門家が登壇し、知財戦略の基礎知識や資金調達での知財活用、オープンイノベーションを進める上での留意点が紹介された。セミナー終了後は参加したスタートアップと、知財専門家、現地のINPIT(独立行政法人 工業所有権情報・研修館 研修部)交えての、ネットワーキングも開催され、知財相談含めて話に花を咲かせた。

知財を資金調達につなげるには知財体制が必要

 藤岡国際特許事務所 弁理士の藤岡靖和氏による講演「『知財の基礎×資金調達』~VC支援を踏まえて~」では、知財の基礎知識と、資金調達につなげるためのポイントについて解説された。

藤岡国際特許事務所 弁理士 藤岡靖和氏

 知財権とは、形がないもの(無体物)を守り、ビジネスを「独占」および「排他」する権利であり、基本的には早い者勝ちの原則が適用される。知財権には、技術的思想を保護する「特許権」、構造や形状を保護する「実用新案権」、自他商品を識別するマークを保護する「商標権」、工業デザインを保護する「意匠権」が含まれる。

 知財を資金調達につなぐポイントは、1)早く出願(取得)する、2)実効的な権利を押さえる、3)知財体制を構築する―の3つ。しかし、スタートアップには出願費用の捻出や知財人材の獲得が難しい。その解決策として、この3つのポイントに理解のあるVCを見つけてVCの資金と人脈に頼ることを提案した。

契約書をそのまま締結するのは危険、契約時のチェックポイントは?

 田邊法律事務所 弁護士の網谷拓氏による講演「スタートアップに必要な契約の基礎」では、スタートアップが他企業と協業を進める上で重要となる契約のポイントについて説明された。

田邊法律事務所 弁護士 網谷 拓氏

 契約は口頭でも成立するが、その合意内容は不明確でトラブルが起こった際の証明が難しい。あらかじめ取引に関する当事者の義務やリスク分担などを取り決めて紛争を予防するのが契約書の役割だ。また、仮にトラブルが起きた場合も契約書があれば早期解決を図ることできる。

 スタートアップが作成する契約書には、投資契約書、株主間契約書、業務委託契約書、雇用契約書、賃貸借契約書などがある。このうち、投資契約書と業務委託契約書でのチェックポイントについて解説した。

 投資会社から提示される投資契約書は、株主に有利な内容となっていることが多く、そのまま受け入れると後々リスクになる可能性がある。払い込みの前提条件や期日、株主への情報提供の内容、株主買い取り請求条項の有無、といった内容をチェックすることが大切だ。業務委託契約書では、受託側として過度に広範な内容となっていないか、報酬金額や支払い方法、中途解約条項の内容、成果物の知的財産権の所有権、損害賠償条項などのチェックが必要になる。

 契約書の作成やレビューは、専門家の手を借りるのがおすすめだ。費用を抑えて自力で作成・確認する場合は、スタートアップ支援拠点など公的機関の相談窓口をうまく利用しよう。

特許庁のスタートアップ支援施策

 セミナーの最後には、特許庁スタートアップ支援班 係長 松田絵莉子氏より、特許庁のスタートアップ支援施策として、知財アクセラレーションプログラム「IPAS」、ベンチャーキャピタル(VC)への知財専門家派遣プログラム「VC-IPAS」、スタートアップ向け知財コミュニティ「IP BASE」、特許審査における支援、INPITの知財総合支援窓口が紹介された。

特許庁スタートアップ支援班 係長 松田 絵莉子氏

 特許審査における支援としては、スタートアップの早期権利化を支援するための施策で、「スタートアップ対応面接活用早期審査」「スタートアップ対応スーパー早期審査」、特許審査や特許料、国際出願手数料が3分の1になる減免制度などが用意されている。

 また、全国47都道府県に設置されているINPITの知財総合支援窓口では、令和6年度から「スタートアップ知財支援窓口」を開設し、スタートアップ支援に特化した知財戦略エキスパートによる支援を実施している。知財や契約に関するさまざまな相談が無料で受けられるので、ぜひ活用してほしい。

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