クラウド利用やAI/データ活用の動きを受け、多様化するデータセンターを知る
2025年からのデータセンター選びは「5つのトレンド」を押さえよう
2025年01月27日 12時30分更新
データセンターと言えば、かつては「立地」「規模」「コスト(利用料金)」といった要件から選定されることが多かった。もちろん、それらの要件は今でも変わらず重要なのだが、近年のデータセンターでは“それ以外の特色”もアピールされ始めている。
こうした変化の背景には、「パブリッククラウド利用」「AI/データ活用」といったITトレンドに伴う「データセンターの位置付けの変化」がある。2025年現在、どのようなトレンドが生まれているのか、5つのトレンドとして紹介する。
トレンド1:GPUサーバー/AIインフラへの対応
パブリッククラウドの利用が一般化した現在、あえてオンプレミスで(自社保有型で)ITインフラを構築する目的のひとつが、生成AIを中心とした「AIワークロード」の増加だ。これからAIをビジネス活用する動きが本格化すると、「処理するデータは社外(クラウド)に出せない」「クラウドサービスでは割高になる」といった理由から、AI用のインフラを自社保有する企業は確実に増える。
そのため、データセンターには「AIインフラ対応」の性能が求められることになる。具体的には、GPUサーバーの設置と稼働に対応した「給電容量」「冷却能力」「耐荷重」などのスペックが重視される。
たとえば、NVIDIAのGPUサーバー「DGX H100/H200」の消費電力は1台あたり最大10.2kW、「B200」は同14.3kWと、従来の汎用サーバーをはるかに上回るものとなっている。高性能化に伴って、GPUサーバーの消費電力は今後もさらに高まると予想されるが、古いデータセンターではラックあたりの最大供給電力が10kVAを下回ることも多い。冷却能力もそれに合わせて設計されているため、最新のGPUサーバーが設置できないケースがある。
古いデータセンターでも、一部にGPUサーバー/高集積サーバー向けの専用区画を設けて、ラックあたり20kVA程度の電力供給を可能にしているケースも出てきている。ただし、データセンター全体の受電容量という制約もあるので、大規模なAIインフラの設置までは対応できない。
NVIDIAのGPUサーバー「DGX B200」は8基のB200 GPUを搭載し、最大消費電力は14.3kW(出典:NVIDIA Webサイト)
トレンド2:液冷(水冷)方式の冷却への対応
上述したAI向けGPUサーバーや、高性能なCPUを高密度に収容したHPCサーバーは発熱量が大きい。そのため、データセンターの冷却性能も問われることになる。そこで注目されているのが「液冷(水冷)方式」への対応だ。
空冷方式を前提とした旧来のデータセンターでは、施設内を循環する冷却水はサーバールームの「外」にある空調機に供給されていた。しかし、空冷方式で対応できる排熱量は、ラックあたりの消費電力量が20kW程度までとされる。
そこで液冷対応データセンターは、サーバールームの「内」まで冷却水を引き込み、ラック内やラック列に設置されるCDU(冷却液の循環/熱交換システム)を介して、熱源であるサーバーのより近くで排熱を回収できるように設計されている。液冷対応サーバーでは直接サーバー内部のコールドプレートへ、空冷サーバーでは大型ファンを内蔵したラックのリアドアへ冷却液を供給して、冷却を行うのが一般的だ。
なお液冷方式の冷却は、空調機を使った空冷方式よりも消費電力を抑えることができる。そのため、データセンターにおける消費電力削減にも一役買うことになる。
高発熱サーバーでは液冷方式への対応が必要になっている(出典:NTTコミュニケーションズ、2022年発表会資料)
トレンド3:クラウド/外部DCへのネットワーク接続性
現在、データセンターを利用する企業のほとんどは、パブリッククラウドと併用する「ハイブリッドクラウド」構成を前提としているはずだ。自社データセンターにあるシステムとクラウド上のシステムを連携させ、データのやり取りを行いながら活用するためには、閉域接続を含むさまざまな形でネットワーク接続できる「接続性(コネクティビティ)」が重要になる。
近年のデータセンターでは、この接続性を重視する傾向が強まっている。具体的には、複数の通信事業者(マルチキャリア)の回線、パブリッククラウドのPOP(ダイレクト接続ポイント)、IXやISP、他のデータセンターとの接続サービスを提供するDCI(データセンター相互接続)といった事業者をデータセンター内に誘致することで、外部へのネットワーク接続を柔軟かつ短期間に構築できるようにしている。
なお、クラウド活用を積極的に進めるユーザー企業では、データセンターをサーバーの設置場所としてではなく「クラウドへの安全な/安定的なネットワーク接続拠点」として利用するケースも増えているという。さらに、マルチクラウドを活用する企業では、「複数のクラウド間の接続拠点」にもなるだろう。データセンターの新たな位置付けとして注目される。

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