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シュナイダーエレクトリック開催のパネルディスカッションレポート

液浸冷却から直流800V給電、デジタルツインまで 理研とアット東京が語るAIデータセンターの未来

2025年12月16日 08時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 AIニーズの急増により、現在のデータセンターではAIサーバーが高密度運用され、ラックあたりの電力消費量が急速に上昇している。こうした中で注目を集めているのが冷却と電力の技術だ。

 2025年11月に米国で開催されたHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)の国際会議・展示会「Supercomputing 2025(SC25) 」においても、システムの熱を冷却する技術や大容量の電気を供給する技術が主要テーマだったという。

 2025年12月8日、シュナイダーエレクトリックは、SC25で見えたトレンドやAI・HPCを支えるデータセンターのあり方について語り合うパネルディスカッションを開催。スーパーコンピューター「富岳」の運用・高度化を担う理化学研究所(理研) 計算科学研究センターの三浦信一氏、全国13箇所でデータセンターを運営するアット東京の錦織雅夫氏が登壇した。

 なお、モデレーターを務めたのは、電気・空調周りのトータルソリューションを手掛けるシュナイダーエレクトリックで大型データセンターの担当営業を務める須田拓真氏だ。

SC25の中心議題は「高密度化に対する冷却技術」

シュナイダーエレクトリック 須田拓真氏(以下、須田氏):我々3人ともに、SC25に参加しました。グローバルの中でも一番、サーバーやファシリティ、サービスも含めてスーパーコンピューターの最新情報が揃ったイベントだと思います。印象に残った技術や製品はありましたでしょうか。

理研 三浦信一氏(以下、三浦氏):現状、スーパーコンピューターの技術は、AIのための技術のひとつであり、いかにAIに適用できるかがトピックになっています。その中でもAIの計算インフラを支える上でキーテーマとなっているのは、計算サーバーを「いかに冷やすか」です。

 私が過去に携わったスーパーコンピューターである東京工業大学(現、東京科学大学)の「TSUBAME3.0」、産業技術総合研究所(産総研)の「ABCI 1.0」でも「液冷」を投入し、理研の富岳でも100%採用しています。2025年度末に「富岳NEXT(※)」のテストベットとして導入する新たなスーパーコンピューター2台(NVIDIAのGB200 NVL4)でも力を入れています。

※2030年頃の稼働を目指し、理研が開発を主導し、富士通とNVIDIAが参画するスーパーコンピューター富岳の後継機

理化学研究所 計算科学研究センター 運用技術部門施設運転技術ユニット 量子HPC連携プラットフォーム部門量子HPCプラットフォーム運用技術ユニット Al for Scienceプラットフォーム部門AI開発計算環境運用技術ユニット ユニットリーダー 三浦信一氏

 チップを冷やすのは直接液冷方式が中心ですが、残りの部分をどう冷やすかも大きなテーマです。産総研のABCIでは、ラックとシュナイダーのファンコイルユニット(小型の空調装置)を組み合わせて冷やす取り組みをしましたが、SC25では、その延長線上にある「クーリングポッド(Cooling Pod)(※)」も見られました。

※ラックや電源、ネットワーク配線、給水管など、冷却に必要なコンポーネントをひとつのパッケージとして収めたもの

クーリングポッドを実装した産総研のABCI(産総研のサイトより)

 SC25では、基本的にはこうした冷却技術が注目されていましたが、それ以外では電源にも注目が集まりました。NVDIAが「直流800V給電(※)」に乗り出すという話題もあり、高電圧直流(HVDC)をいかにサポートするかもテーマになっています。

※NVIDIAは2025年5月、AIサーバーにおいて直流800Vを用いた電力供給に対応していくことを発表。この構想に、シュナイダーエレクトリックを始めとする関連企業が協業する

アット東京 錦織雅夫氏(以下、錦織氏):クーリングポッドは話に聞いていましたが、SC25で実物を見ることができました。そして、直流800V給電についても、それを実現するための設備の展示がありました。ただ、色々と検証段階で、HVDCでサーバーに電力供給する部分は方向性が定まっていないという印象を受けています。加えて、日本に導入するには様々な課題がありそうです。

6年後には量子コンピューターがデータセンターにも?

須田氏:SC25では、未来の技術が提示されましたが、「未来のデータセンター像」についても聞きたいです。

錦織氏:データセンター事業者としてはもちろん、顧客ニーズに応えるために先端技術は追いかけていきます。ただし、SC25は本当に最先端であり、その技術がデータセンターに落ちてくるのは少し先という感覚でいます。もちろん、準備をしておくことが重要で、施設側としては、コストや納期のバランスを取りつつ、どのような要件でも対応できるような柔軟性を確保しておく必要があります。

アット東京 技術・サービス本部 設備構築部長 錦織雅夫氏

三浦氏:我々は、2030年に向けて富岳NEXTを計画する中で、「AIデータセンターはこうあるべきだ」というイメージは固まっており、そのための調達を進めています。ポイントのひとつが「量子コンピューター」です。

 2025年には、超電導方式の量子コンピューターであるIBMの「Quantum System Two(ibm_kobe)」と、イオントラップ方式の量子コンピューターであるQuantinuumの「黎明」を導入しており、もちろん理研としても開発を進めます。いざ量子コンピューターを導入してみると、従来型データセンターでの運用は厳しいと実感しています。振動や熱の管理であったり、スーパーコンピューター以上の難しさです。

神戸の理研に設置されたQuantum System Two(理研のニュースリリースより)

 我々は、スーパーコンピューターでは電源の安定性にこだわらなかったのですが、量子コンピューターは一度電源が落ちると再スタートまでに相当の時間を要します。未来のデータセンターでは、電源の安定性という要件が求められるのではないでしょうか。

須田氏:産業技術総合研究所でクーリングポッドを手掛けたのが6年ほど前。量子コンピューターも、6年後にはデータセンターに入るかもしれないですね。

三浦氏:その通りです。我々は、もっと先を見据えていますが、量子コンピューターがスーパーコンピューターの横で連携する未来に備えて、冷却システムを構築していきたいです。

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