これは何だ? イタリアのPythonだ!
まずは写真から。超ミニサイズだが、これはカプセルトイなどではない。れっきとした単品スピーカーの筐体(エンクロージャー)だ。ブランドはイタリアのK-array。「Python」と呼ばれるシリーズの最も小型のスピーカーである。
K-arrayの製品は爬虫類の名称がシリーズに用いられている。Pythonはフルレンジスピーカーを密集した状態で並べ、近距離はもちろん遠距離でも完璧な移送応答性を確保できる仕組みになっているという。
要するに、距離に関する減衰が少なく、広い範囲に均一な音を届けられるスピーカーということになる。この仕組みは大規模なライブ会場などでコンサートホールの天井から吊り下げられているラインアレイスピーカーと同じ。水平方向に音が均一に拡散する一方で、垂直方向の音の拡散は抑えられ、天井や床による反射の悪影響は排除できるので、石造りの教会など、反響が大きな環境でも明瞭な音の再生が可能になっている。
Pythonを駆動するための専用のアンプやサブウーファーも用意されており、製品や設置される環境に合わせた最適かも可能となっている。Pythonは非常に小型のスピーカーだが、質感が高く、そして驚くほど音がいい。こういったスピーカーソリューションはなかなか思いつかない。
Pythonのような独創的な製品を生み出すK-arrayは、デザインの世界的な中心地でもあるイタリア、その古都フィレンツェで2005年に創業したスピーカーブランドだ。国内の総代理店はオーディオブレインズが務めており、「世界で最も革新的なハイテク・ハイエンドスピーカーメーカー」のひとつという触れ込みだ。実際、美術館、ホテル、劇場などでの導入例が多く、視覚と音が融合するような空間の演出に適したスピーカーの開発に強みを持ち、高い評価を得ているそうだ。
筐体も質感の高い削り出しで、24金メッキをはじめとした様々な表面処理を加えられる。高いカスタマイズ性を持つ点も特徴だ。カテゴリーとしては業務用スピーカーだが、そのイメージかは大きく逸脱した、ファッション性やアクセサリー性も兼ね備える。非常にユニークなブランドがK-arrayなのである。
購入は施工業者などを通じて発注するためはっきりと決まっていないが、最も小型のスピーカーが8万円程度、スピーカーを4つ配置したものが10万円程度、8つ並べた長いものが30万円程度。これにサブウーファーやアンプなどを合わせるとかなりの金額になってしまうが、仕上げの美しさに加えて、パフォーマンスも高く、アイデアが広がりそうな製品だ。
ギャラリーやホテルなど、視覚的と聴覚両方を刺激する空間で活躍
そんな特徴を持つK-array。その姉妹ブランドには、より汎用性が高くコストパフォーマンスにも優れた「KGEAR」、オーディオとライティングを混在させた「KSCAPE」などもある。
そして、Kーarrayを始めとした業務用スピーカーが一堂に解する輸入総代理店オーディオブレインズ主催のイベントが12月10日に開催された。この試聴イベントでは大手町のよみうりホールを貸し切って、この3ブランドの製品が一堂に会したほか、普通はあまり機会のないSRスピーカーの聴き比べなども実施された。オーディオブレインは、イギリスのMartin Audioの代理店でもあり、別会場ではMartin Audioのデモも実施。ブランドの性格の違いも体験できる機会となったのが印象的だった。