リンゼイ氏は、紙巻たばこから代替製品への移行について重要な役割を果たすもののひとつが、たばこに関わる税制であると話す。例えばイタリアでは紙巻たばこと代替製品に40%の税率の差を、イギリスでは30%の税率の差を設けている。紙巻たばこと代替製品の販売価格の差が大きくなった結果、この2ヵ国では、紙巻たばこの喫煙率が劇的に減少しているようだ。
世界で初めて、紙巻たばこの喫煙者がいなくなる可能性
ところが、日本の状況は異なっている。
日本において、紙巻たばこと加熱式たばこの税率差は14%程度であり、他国に比べると比較的小さい。にもかかわらず、日本では紙巻たばこから代替製品への切り替えが進んでおり、2022年時点で、加熱式たばこのシェアは40%にものぼっているのだ。(下図の日本たばこ協会の統計データ、財務省、フィリップ モリスの調査を参照)
リンゼイ氏は、この状況を踏まえて「日本は世界で初めて紙巻たばこの喫煙者がいなくなる国になる可能性があります」と話し、続けて「日本が次の段階に進み、紙巻たばこを完全になくすためには、インセンティブが必要です」と語った。
つまり、紙巻たばこから代替製品に切り替えようとしないユーザーにとって、代替製品を選ぶ経済的なメリットなどがなければ、これ以上の切り替えは進みにくいというのがリンゼイ氏の意見だ。
たばこや、代替製品の販売価格に大きな影響を与える税制。リンゼイ氏は続けて「(代替製品に対する課税を維持・減額した場合において)税収が減少する懸念があるのは理解していますが、米国での調査では、紙巻たばこから代替製品に切り替えた成人一人あたりの医療費は、平均して10%削減されることがわかっています。これは年間1万3000ドルの医療費を基準とした場合で、毎年300億ドル(3000万人の喫煙者全員が切り替えたものとして計算)の節約になります」とコメント。代替製品の普及は、医療費の大幅な削減につながる可能性も示した。
同セミナーでは、フィリップ モリス ジャパン 副社長の小林献一氏や、都内で多数の飲食店を経営するグローバル・ハーツ 代表取締役の村田大造氏も登壇。それぞれ、たばこ業界と飲食店の視点から、たばこの税制について話した。
「たばこに関する税制について、国民があまり知らないうちに議論が進み、いつの間にか税率が上がってしまうことには、やや疑問を覚えます。透明性のある議論が求められるのではないでしょうか」(小林献一氏)
「飲食店は近年、加熱式たばこに合わせた設備投資をしてきました。価格を理由にして紙巻たばこを選ぶ方が再び増えると、厳しい経営状況にある飲食店にとっては、負担が増えすぎてしまいます」(村田大造氏)