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“あのセキュリティ事故”はどうやったら防げた? 検証委員会 第1回

リモートワーク環境はまだまだセキュリティ対策が不十分

ハイブリッドワーク中の社員PCがフィッシング詐欺被害! どうやったら防げた?

2024年11月25日 11時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

提供: フォーティネット

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■今回のセキュリティ事故:

 S県にある中堅食品商社のR社では「ハイブリッドワーク」を推進している。オフィス勤務を基本としたこれまでの労務管理を見直し、各社員が週に2日までリモートワークができる制度を設けた。コロナ禍での経験をふまえ、社員にはモバイルノートPCが支給されており、業務資料もクラウドストレージに保管/共有するルールにしているため、業務に大きな不都合はない。この制度は子育て世代の社員を中心に好評だ。

 そんな中でセキュリティ事故が起きた。自宅でリモートワーク中の社員が、取引先に偽装したフィッシング詐欺メールのリンクを開いてしまい、業務利用しているクラウドサービスのIDとパスワードをだまし取られてしまったのだ。異常に気づいた社員から緊急連絡を受けたセキュリティ担当者は、すぐにそのアカウントを停止したものの、この短い時間の間に社員の持つ情報が盗まれたり、サービスが悪用されたりしてしまった可能性もゼロではない。

 担当者が調べたところ、この詐欺サイトへのアクセスは、社内に設置されたファイアウォールならばブロックできていた。つまりこの事故は、リモートワーク中だからこそ起きたものだった。……このセキュリティ事故はどうやったら防げたのだろうか?


ハイブリッドワークは普及しても、そのセキュリティ対策は不十分

 近年、オフィス勤務とリモートワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」を採用する企業が増えている。その背景には、人手不足の一方で、子育てや介護などの理由から「柔軟な働き方」を必要とする社員が増加していることがある。コロナ禍を経て、社内情報共有や会議などのクラウドツール(業務SaaS)が広く普及したことも、ハイブリッドワークの実現を後押ししている。

 ただし、ハイブリッドワークへの移行において「セキュリティ対策が不十分」だと気づかないまま移行してしまうケースも少なくないようだ。今回取り上げたセキュリティ事故も、そんな一例である。

 オフィス勤務の場合、業務PCはファイアウォールなどのセキュリティ機器で守られたオフィスネットワークに接続して使う。だが、その業務PCをオフィス外や社員の自宅に持ち出すと、ほとんど無防備な“丸腰”の状態でインターネットに接続することになる。持ち出したPCにもアンチウイルスソフトは入っているだろうが、それではフィッシング詐欺などの幅広いセキュリティ脅威すべてには対抗できない。

 通常、オフィスネットワークとインターネットの“出入口”(ゲートウェイ)には「FortiGate」などのファイアウォール製品が設置されており、セキュリティ脅威の侵入や、内部からの情報漏洩をブロックしてくれる。

 今回取り上げたフィッシング詐欺も、仮に社員のPCがオフィスネットワークに接続されていれば、ファイアウォールが詐欺サイトへのアクセスをブロックできたようだ。しかし、社員の自宅ネットワークにはそうしたセキュリティ機能がなく、被害につながってしまったわけだ。

同じ業務PCでも社外に持ち出すと「無防備」になる

 もうひとつ、リモートワーク時のセキュリティ対策が不十分なまま見過ごされてきた経緯として「VPN」の存在がある。

 コロナ禍以前、少人数の社員が外出先で業務PCを使う際には、オフィスネットワークにVPN接続して社内の業務サーバーにアクセスする方法が取られていた。外出先でインターネットにアクセスする場合も、VPNでいったんオフィスネットワークを経由するかたちにすれば、社内にいるのと変わらないレベルのセキュリティが担保できていた。

 しかし近年では、リモートワークを行う人数が増え、業務PCの主なアクセス先が社内サーバーからクラウドサービスに代わった。こうなると、VPN経由よりもインターネットで直接クラウドにアクセスするほうが効率が良い(レスポンスも良い)。そのため、今回の事故のようにリスクを抱えたまま直接インターネットに接続し、セキュリティ事故に遭うケースが増えている。

SASE:クラウド利用やリモートワークが増えた時代の新たなセキュリティ

 こうした課題に対する新たなソリューションとして、近年、人気を集めているのが「SASE」(セキュアアクセスサービスエッジ、「サッシー」と読む)である。

 SASEのコンセプトはシンプルだ。先ほど触れたように、従来はオフィスネットワークの“出入口”にファイアウォールなどを設置し、そこを通過するトラフィックにセキュリティを適用していた。SASEは、これを同じことをクラウド上に設置した“出入口”で行う。業務PCのトラフィックをすべてSASE経由にしてしまえば、同じように脅威の監視、ブロックができるわけだ。

リモートワークのPCも、SASE経由でインターネットにアクセスすればオフィス内と同様のセキュリティがかけられる

 SASEは、さまざまなネットワークセキュリティを統合して提供する。たとえば、インターネット側からの攻撃通信をブロックするファイアウォールのほか、危険なWebサイトへのアクセスやマルウェアのダウンロードをブロックするSWG(セキュアウェブゲートウェイ)、VPNよりも詳細なチェックを行いつつアプリケーションへの安全なリモートアクセスを許可するZTNA(ゼロトラストネットワークアクセス)といった機能だ。

 SASEは、大容量のネットワークを備えたクラウドデータセンターで提供されるので、クラウドサービスへのアクセスもレスポンスが良い。海外出張などの場合でも、最寄りのクラウドデータセンターにあるSASEに接続すれば、国内にいるのと変わらずセキュアにアクセスができる。

FortiSASE:“オフィスと同じセキュリティ”を実現、運用管理も容易

 フォーティネットのFortiSASEは、市場で代表的なSASEサービスのひとつだ。豊富な機能を備えているため、ここで一つひとつを紹介することはできないが、主な特徴とメリットは次のとおりだ。

FortiSASEは幅広いセキュリティ機能を統合したサービス。クラウドサービス(SaaS)、プライベートクラウド、Webなどのインターネットアクセスを包括的に保護する

○リモートワークでもオフィスと同じセキュリティが実現:
 FortiSASEは、オフィス設置型のファイアウォール「FortiGate」と同じOSで動作しており、まとめて監視や管理ができるため、IT担当者の業務負荷を増やさずに導入できる。設定項目も共通であり、同じセキュリティポリシーが適用できるので、リモートワーク環境であってもオフィスにいるのと同じセキュリティが担保できる。

 また小規模なオフィスや店舗であれば、FortiGateの代わりとして、FortiSASEとの統合機能を備えたアクセスポイント「FortiAP」やネットワークスイッチ「FortiSwitch」を設置し、セキュリティを適用することが可能だ。

FortiSASEの管理画面。オフィスに設置した「FortiGate」や「FortiAP」などともまとめて管理/監視ができる

○リモートでも業務PCの監視が簡単に:
 リモートワーク中の業務PCであっても、IT担当者は「リスクの高いWebサイトにアクセスしていないか」「許可されていないクラウドサービスを“シャドーIT”で使っていないか」「危険なアプリケーションがインストールされていないか」「OSやアプリケーションの脆弱性が放置されていないか」など、幅広いセキュリティ状態が監視できる。もちろん、危険な通信はブロックも可能だ。リモートから一元監視できるので、リモートワークの利便性を失うことなく、IT担当者の業務負荷を軽減できる。

FortiSASEの管理画面。ダッシュボードでは、マルウェア感染の有無、Webフィルタリングを行った件数など、全社の業務PCの稼働状況が一目で分かる

○PCにインストールするエージェントソフトは1つだけ:
 FortiSASEに接続するためには、業務PCに「FortiClient」というエージェント(クライアントソフト)をインストールすることになる。ただしこのFortiClientには、SASEだけでなく、エンドポイント保護(アンチウイルスやサンドボックス)、アプリケーション体験品質の監視(DEM:デジタルエクスペリエンスモニター)、脆弱性アセスメントといった機能も統合されている。いくつものエージェントをインストールする必要がないので、導入や管理の手間が省け、業務PCの動作も重くなりにくい。


■セキュリティ事故、その後日談:

 セキュリティ事故の起きたR社では、社員が安心してリモートワークができるようにFortiSASEを導入することに決めた。その導入に合わせて、これまで社内に設置していたセキュリティ機器や、PCにインストールしたセキュリティソフトの“棚卸し”を行い、FortiSASEに統合できるものは統合してコスト圧縮を図る計画だ。

 さらに、これまで着手できていなかったクラウドサービスアクセス時のセキュリティ強化も、FortiSASEのZTNA機能を使って進める方針である。セキュリティ事故が発生したことで、社員もIT担当者も一時は冷や汗をかいたが、結果的には“災い転じて福となる”かもしれない。


※この記事で紹介したストーリーはフィクションです。実在する組織や人物とは関係ありません。

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