レグザの2024年秋冬モデルとして、110V型の「110Z990R」(実売価格500万円)を筆頭に、「100Z770N」(実売価格80万円)、85Z770N(実売価格44万円)、85M550N(実売価格32万円)の4モデルが発表された。事前に行われた新製品説明会での大画面レグザの詳細を解説していこう。
新しく発表された大画面モデル投入の経緯は昨年末に発売された100V型モデル、「100Z970M」(実売価格約107万円)が大きなきっかけとなったという。100V型という特大のサイズながらも、この1年で当初の予想を大きく上回る販売数を記録したそうだ。
85V型を超える大画面というと、まだまだ非現実的と考える人は少なくないと思われるが、世界市場で見ていくと需要は着実に伸びていて、国内市場でもニーズはあることがわかった。そこで、レグザとしても最大サイズとなる110V型モデルだけでなく、85V型以上のモデルをフラッグシップからスタンダードモデルまでラインアップすることにした。
なかなか大胆なチャレンジだが、ラインアップを強化することで選択肢を増やし、特大画面の市場を活性化することが目的だ。実際、高画質モデルの「100Z770N」でも、現行モデルよりも安価になることが予想され、スタンダードモデルの「85M550N」は、現在の65V型や55V型の高級モデルよりもやや高いくらいの価格になっている。まさしく、特大サイズのレグザがぐっと身近になってきたことがわかるだろう。
説明会では、大画面レグザシリーズの魅力についてわかりやすく解説。4Kの魅力は詳細なディテールの再現である。そしてそれが大画面になるとよくわかるという。つまり「大画面は見やすい!よくみえる!」。これは実際に購入したユーザーの感想を頂戴したものといい、大画面レグザシリーズのキーワードとして使っていきたいそうだ。
100V型クラスの大画面というと、多くの人は購入をためらうだろう。理由としては「価格が高い」、「電気代が高い」、「我が家には大きい」などの声が現場のスタッフから集まったからだという。その理由をひとつひとつ潰していく。
価格についてはすでに説明した通り。最上位モデルはさておき、けっして手の届かない価格ではなくなった。電気代については、このためにしっかりと試算し、65V型から85V型へのサイズアップで電気代は1ヵ月で約190円アップ。65V型から100V型では電気代は約340円アップと、ひと月あたりでは決して高いわけではないことを示した。
サイズが大きすぎるという声には、実際の視聴距離からサイズをおすすめしたいとした。一般的な家庭でのテレビとの距離(視聴距離)は約2~3mで、実はこれはブラウン管テレビの時代(最大でも37型、ワイドテレビで36型)から変わっていない。そうした実際の視聴距離を元にしたサイズ選びとして「2mより近い距離で見ているなら55V型程度」、「2m以上離れて見ているなら65V型以上」が適切とした。
これよりサイズが大きいと大画面らしい迫力や臨場感が増し、逆に小さいと細部が見えず、スケール感や臨場感が不足する。これをふまえて「2.6m以上離れて見ているなら85V型」、「3m以上離れて見ているなら100V型以上」というサイズ選びの目安を示していた。
そのサイズ感や実際に見た印象を声優の小岩井ことりさんが代表して体験する一幕もあった。ずらりと特大のレグザが並ぶなかで、「50V型でも大きいはずですよね」と比較すると小さく見えてしまうことに驚いていた。75V型となる「おおおおおお・・・」と、その大きさに言葉にならない様子。110V型ともなるとその大きさに圧倒されていた。その映像をじっくりと見ながら「見やすいですね。当たり前のようだけど大画面ってよくみえる」と大画面がもたらす高精細な映像に感激していた。
筆者も見慣れた55V型のサイズや110V型の特大サイズで距離により見え方を確認してみたが、確かに2m以下の距離だと55V型でも十分に大画面と感じるし、110V型は大きすぎて画面全体を一目で見ることができない。逆に3mも離れると55V型は小さくてよく見えないが110V型は十分によくみえるし、スケール感が出ると感じた。こうした部屋の大きさから適正なサイズを考えると、8畳や10畳くらいのリビングでも85V型のサイズでいいと思うし、それ以上の広いリビングならば110V型は十分に現実的だと感じる。
このほか、サッカーやプロ野球など、スポーツのライブビューイングなどで、見逃せないゴールシーンなどで自然とテレビの前に近づいてしまうのはなぜか? という人間心理にそった大画面を求める理由も示した。理由は極めて明解で「テレビが見えないから近づきたくなる」のだ。しかも一緒になって歓声を上げ、手を叩いてしまうのは、その場に居る臨場感を感じるからだ。
「大画面は見やすい!よくみえる!」。たしかに納得できる考え方だ。
4Kレグザの最高峰。110V型の最上位モデル「110Z990R」
各モデルを詳しく紹介していこう。最上位モデルの「110Z990R」では、高画質エンジンに「新世代レグザエンジンZRα」を搭載。AI映像解析、パネル駆動技術が大きく進化するという。実際に発売に向けて、画質担当者や音質担当者が大画面にふさわしい映像を仕上げているそうだ。
Mini LEDと量子ドット技術を盛り込んだ液晶パネルには、新開発の「Mini LEDファインエリアコントロール」を採用。4万分割以上の緻密なエリア駆動を実現し、引き締まった黒の再現を追求。そして、最大輝度5500nit以上のピーク輝度を活かして輝く光を再現と、こうした高いコントラストを実現している。エリア駆動の制御でも、細分化されたエリアごとにLED点灯時間だけでなく、電流をダイナミックに制御している。
説明会では市販モデルのLEDモデルとMini LEDモデルをいくつか用意して、液晶パネルを外してLEDがどのように駆動しているかを実際に見ることができた。LEDの実際の光は強すぎるので減光しているそうで、ピーク輝度の違いはわかりにくいものの、モデルによって分割数が明らかに違うし、分割数が多いモデルほど光っている部分の端のところで微妙な輝度のコントロールが行われている。
このため、明るく光った星のまわりがぼんやりと光ってしまうようなこともなく、キレのよい明暗の再現が可能になる。画面全体を見てもエリア分割数が多いほど、実際に表示しているものが何なのかがわかる。
そして現行のレグザでも採用されている「AIシーン高画質PRO」、「ネット動画ビューティーPRO」、「ネット動画バンディングスムーザーPRO」、「地デジAIビューティーPRO」なども搭載。後ろに「PRO」とつくのは、「レグザエンジンZRα」ならではのもので、後段にもうひとつ追加された映像処理専用LSIでより精密な処理を行っているためだ。
音質面では「重低音立体音響システムZIS」を搭載。2Wayトップスピーカー、2Wayサイドスピーカー、2Wayメインスピーカー、2Wayセンタースピーカー、重低音バズーカ(サブウーファー)を内蔵し、スピーカーユニットは20個。それを合計出力122Wのマルチアンプで各チャンネルごとに独立駆動している。
ドルビーアトモス対応で、内蔵スピーカーだけで豊かなサラウンド再生が可能だ。このほか、テレビリモコンに内蔵するマイクで部屋の音響特性を測定し、最適な特性に補正する「オーディオキャリブレーションPRO」、ミリ波レーダーを使ってテレビの前にいる人を判別し、見ている人の位置や距離に合わせて適切な映像、音声とする技術なども盛り込まれる。
このほか、多彩なネット動画への対応はもちろん、地デジ放送を6ch全録できる「タイムシフトマシン」も搭載。「新ざんまいスマートアクセス」でテレビ放送も快適に楽しめる。レグザの高画質・高音質はもちろん、多彩な機能や便利機能をすべて盛り込んでいる。
高画質モデル、スタンダードモデルも実力は十分
100Z770N、85Z770N、85M550Nでは、高画質エンジンは「レグザエンジンZR」となる。
Z770NシリーズではMini LED+量子ドット技術を搭載。高画質技術については、現行モデルとほぼ同様で「ネット動画ビューティー」、「ネット動画バンディングスムーザー」、「地デジAIビューティー」などの機能が盛り込まれている。
音質は、Z770Nシリーズでは「重低音立体音響システムZ」を搭載。メインスピーカーとサイドスピーカー、重低音バズーカによる7個のスピーカーを合計60Wのマルチアンプで駆動する。もちろんドルビーアトモスにも対応。85M550Nでは「レグザパワーオーディオ」となり、画面下部に配置される左右2個のスピーカーを合計30Wのアンプで駆動する。
その他の機能では、多彩なネット動画への対応は同様。テレビ録画機能も備え、好みのジャンルや推しのアーティスト名を登録するだけで自動で録画する「おまかせ録画」、見たい放送やネット動画を好みに合わせてピックアップしてくれる「新ざんまいスマートアクセス」も備える。見たいシーンを選んですぐ再生できる「シーンリスト」機能も便利。そして、テレビ番組以外の活用法として、スマホの画面をワイヤレスで表示できるAirPlay2、スクリーンミラーリングにも対応。大画面をさまざまな形で活用できる。
そして、外出先からテレビ番組の録画予約をするリモート予約では、LINEのチャットを使って番組を録画できる「LINEから録画予約」が全機種で対応。現行モデルでもすでに対応している機能で、なかなか好評のようだ。まだ使ったことのない人はぜひ試してみよう。
100V型クラスの大画面がどんどん身近になる。レグザのビッグサイズラインアップに期待しよう
今までの特大サイズのモデルは、各メーカーの技術力をアピールするためのモデルという意味合いが強く、価格も現実的ではなかったし、サイズ(特に奥行き)などを含めて家庭で使うには厳しいモデルも少なくなかった。
しかし、今後のレグザの大画面ラインアップは、現実的なサイズ感や機能性を含めてかなり実際に家に置くことが想像できる製品となっていたと感じる。
そして、この動きはレグザだけでなく、特にグローバル市場でテレビを販売しているメーカーも追従してくるに違いない。特大サイズの大画面テレビはますます身近になってくるだろう。
家で見る100V型クラスの大画面はまさに映画館の感覚。テレビはもちろんさまざまな映像コンテンツがもっと楽しくなるのは間違いない。レグザのビッグサイズラインアップ、その登場に期待しよう。