高層ビルや歴史的建造物など、丸の内の建築群を現場のレポートを交えながら紹介する連載「丸の内建築ツアー」。今回は、有楽町駅の目の前の三角形の敷地に建つ「読売会館」を紹介します。
読売会館の建設と経緯
読売会館は、終戦から約10年ほど経過し、日本が高度経済成長期に突入した1955年2月21日に着工します。設計は建築家の村野藤吾で、JRの線路や大名小路などの道路に囲まれた狭小で不整形の三角形の敷地に、商業施設とホールが入った複合ビルの計画がなされます。鉄骨鉄筋コンクリート造地上9階、地下2階、延床面積31,727㎡という規模で計画され、1957年5月22日に竣工しました。
竣工当時は、地下2階から地上6階まで「有楽町そごう」が入っており、1957年5月25日に開店、売場面積は13,816㎡で、「有楽町で逢いましょう」というキャッチフレーズが有名でした。なお、竣工時は地下の地下鉄有楽町駅への直結通路はありませんでしたが、1974年10月30日の営団地下鉄有楽町線「有楽町」駅の開業に合わせて地下2階入口が新設され、現在のような形で有楽町駅と直結しました。百貨店としては、都心立地でありながら狭小店舗であったことが災いし、経営には苦戦、そごうの破綻した2000年7月には一度閉鎖、2001年6月14日には家電量販店の「ビックカメラ有楽町店」が開店し、今に至ります。
7階から9階に入る「有楽町よみうりホール」は、「読売ホール」という名称で竣工当時から入っており、コンサートや落語、講演会、ミュージカル、各企業の社内研修などに利用されているコンサートホールとなっています。客席の構成は1階席522席、2階席578席の合わせて1,100席で、面積約820㎡、天井高8.78m、舞台は幅12.7m×奥行10.9mとなっており、建物の三角形の頂点側に舞台、客席部分は楕円を描いた平面形状であることが特徴的です。ホールは全体的にアールを描いた柔らかな印象の内装となっており、座席はえんじ色で統一されています。
8階に入るミニシアター「角川シネマ有楽町」は、237席の客席を有するものとなっており、竣工当時は日本テレビ放送網が使用していたスタジオが入っていた場所に、2004年にミニシアター「シネカノン有楽町一丁目」が開業、2010年に閉館したのち、2011年2月19日に角川シネマ有楽町が開館しています。
建物内では、今も有楽町そごう時代の名残を見ることができます。たとえば1階の一部の天井がかなり高い点、建物中央にエスカレーターが配置されている点などです。また、各階へつながる階段は幅が広く取られ、踊り場にお手洗いがある造りが昭和の百貨店の面影を残していました。また百貨店時代は屋上へも行けたのか、屋上へ至る階段は豪華な造りとなっています。
読売会館のデザイン
敷地は三角形で敷地いっぱいまで外壁を配置したことから、建物形状も三角形の平面形状をしており、更にJRの線路がある南東側の外壁は線路のカーブに合わせて微妙に湾曲していることが特徴的です。ファサード(建物正面)は、北側と南東側はガラスブロックによる水平ボーダーデザイン、現在はアルミパネルの外装材に張り替えられてしまった西側は、竣工当時は白い大理石の小片貼りの「テッセラ」による華やかなものでした。また、屋上の塔屋は新幹線から見える広告塔を意識したものか、かなり大型のものとなっており、現在は室外機が並んでいる屋上も竣工当時は屋上緑化も施されていたようです。
有楽町駅周辺地区まちづくりによる再開発事業で読売会館はそのうち消える?
竣工から約70年近くが経過した読売会館ですが、まだ具体的な建て替え計画や再開発計画は出ていません。しかし、読売会館や東京交通会館、旧東京都庁 第二本庁舎、第三本庁舎、東六号庁舎跡地の一帯を面的に再開発する「有楽町駅周辺地区まちづくり」という計画があり、MICE機能の推進・強化、KK線上部空間 (Tokyo Sky Corridor)と連携した歩行者ネットワークの拡充などから、国際ビジネス・都市観光拠点の形成を進める計画があります。
2023年6月には市街地再開発準備組合が設立されているため、こちらもまもなく見納めかもしれませんね。
以上で今回の建築ツアーは終了。百貨店の雰囲気を今も残す貴重な建物、読売会館。当時のにぎわいを想像しながらのビックカメラでの最新家電ショッピングは、エモい気分を味わえそうです。
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