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連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第159回

IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 11月9日~11月15日

急成長する国内AIシステム市場が初の1兆円超えへ、若い社員は“会社と仕事に前向きだが長続きしない”? ほか

2024年11月18日 08時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。

 今回(2024年11月9日~11月15日)は、生成AIが牽引し急成長する国内AIシステム市場の動向、“工場DX”を背景に伸びるIoT/OT機器の運用監視サービス市場、若い従業員の会社や仕事に対するエンゲージメントと勤続意向、日本の労働生産性についてのデータを紹介します。

[生成AI]国内AIシステム市場は年平均30%成長、生成AI市場は84%成長を見込む(IDC Japan、11月14日)
・AIシステム市場の国内支出額市場は2024年、前年比41.6%増を予想
・市場規模は初めて1兆円の大台に到達、1兆763億円
・AI市場のうち生成AI市場は2024年に1016億円、2028年には8028億円と急成長

 国内AIシステム市場(ソフトウェア、クラウド/ハードウェア、システム)の産業別(27分野)/ユースケース別予測。2023~2028年の年平均成長率(CAGR)は30.6%、2028年には2兆8911億円規模と予測している。市場の成長を牽引するのは「生成AI」で、生成AIに限ると2023~2028年は「CAGR 84.4%」の急成長が見込まれている。生成AIのユースケースは「要約」「検索」といった汎用的なものから、徐々に目的特化アプリケーションでの自然言語利用などに広がっていくと見ている。

国内生成AI市場のユースケース トップ5予測(2023年~2028年)。縦軸は2023~2024年の成長率、横軸は2023~2028年のCAGR、バブルの大きさは2024年の市場規模を示す(出典:IDC Japan)

[IoT][セキュリティ][OT]“工場DX”を背景にIoT/OT機器運用監視サービスが大きく伸びる(アイ・ティ・アール、11月14日)
・2023年度の国内IoT/OT機器運用監視サービス市場は7.5億円、前年度比70.5%増
・2024年度も引き続き高い伸び(前年度比64%増)を予測
・2023~2028年のCAGRは37.6%、2028年の売上金額予想は37億円を見込む

 国内のIoT/OT機器運用監視サービス市場規模についての推移および予測。これまでOT機器は外部ネットワークと遮断された環境で運用してきたが、“工場DX”の動きを背景としてインターネット接続するIoT機器が増加し、OT機器もオープン化が進んだ。そのため厳格なセキュリティ対策が求められるようになり、機器の運用監視サービスについても需要が高まっている。以前から必要性が指摘されてきた“OTセキュリティ”が、国内でも本格化してきたと言える。

IoT/OT機器運用監視サービス市場規模推移および予測(2022~2028年度)(出典:ITR)

[EX]日本の若い従業員は「会社へのエンゲージメントは高く、勤続意向は低い」(クアルトリクス、11月12日)
・若い従業員(18~24歳)の「エンゲージメント」は57%と高い(全体平均は42%)
・一方で、若い従業員の「3年以上の勤続意向」は61%と低い(全体平均は68%)
・在職期間が6カ月未満だと勤続意向は48%、ただし6カ月以上になると68%に伸びる

 22カ国で18歳以上の就業者3万5023人(うち日本は2077人)を対象に調査を実施した「2025年 従業員エクスペリエンス トレンドレポート」より。日本の若い世代の従業員では、会社や仕事に対する「エンゲージメント」(帰属意識、愛着)や「自社の将来は有望」といった前向きな意識が平均より高い反面、「3年以上の継続勤務意向」は平均を下回る。また、在職期間が6カ月を超えると勤続意向が高まる傾向があることから「入社時と退職時の体験をよくすることが重要」とアドバイスしている。近年は“静かな退職”という言葉が世界的なトレンドだが、意欲が高い若者が少ないわけではないようだ。

日本の従業員における「前向きな姿勢」「3年以上の継続勤務意向」(18~24歳とその他年齢層の比較)(出典:クアルトリクス)

過去1年間の応募体験・退職体験に対する評価(出典:クアルトリクス)

[生産性]日本の労働生産性は3年連続で上昇、引き続きOECD平均は下回る(日本生産性本部、11月13日)
・2023年度の時間当たり名目労働生産性は5396円、1994年度以降で最高レベル
・年間の一人当たり名目労働生産性は883万円
・製造業では2020年第2四半期の落ち込みからV字回復したものの、停滞続く

 「日本の労働生産性の動向2024」より。2023年度の時間当たり名目労働生産性(就業1時間当たりの付加価値額)は、現行基準のGDPをもとに計算できる1994年度以降で最高値となった。物価上昇を織り込んだ実質の労働生産性上昇率は0.6%で、3年連続で上昇率はプラスとなった。実質経済成長率が1%となり上昇に寄与した一方で、就業者数が0.4%増加し下押し圧力となった。なお労働生産性の国際比較においては、OECD平均を下回る状態が続いている。

時間あたり名目労働生産性の推移(2000~2023年度)(出典:日本生産性本部

「労働生産性の国際比較 2023」より。時間当たり労働生産性(左)、就業者1人当たり労働生産性(右)ともにOECD平均を下回っている(出典:日本生産性本部

主要産業別の労働生産性動向(サービス、小売、飲食、製造)(出典:日本生産性本部

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