ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第797回
わずか2年で完成させた韓国FuriosaAIのAIアクセラレーターRNGD Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU
2024年11月11日 12時00分更新
テンソル縮約に特化した内部構造
さて第1世代のWarboyでは公開されなかったNPUの中身である。RNGDではTCP(Tensor Contraction Processor)と呼んでいるが、そもそも畳み込みニューラルネットワークなどでは計算の大半がテンソル縮約(Tensor Contraction)の計算に費やされている。
このテンソル縮約は要するに行列積(Matmul)であって、世の中に多く存在するテンソル演算用のアクセラレーター(例えばNVIDIAのGPUに搭載されるTensor Core)はこの行列積を高速に実行するための機構を搭載しているのだが、テンソル縮約≠行列積ではない、とFuriosaAIは主張する。
要するに扱うべき行列のサイズは、大抵の行列積演算ユニットのものよりはるかに大きいので、固定サイズの行列積演算ユニットを使うのは不効率、というわけだ。RNGDはこれをどうしたかというと、行列のサイズに合わせて行列積の計算に使うコンピュートユニットの数をダイナミックに変更しながら、目的のサイズの行列積を一発で行なえる、というところが異なるとする。
下の画像左側がそのRNGDの構成で、1個あたり64TOPS/32TFlopsの演算性能と32MBのSRAMを搭載するTensor Unitが8つ搭載されている。右側はその個々のTensor Unitの構成で、内部的には8つのプロセッサー・エレメントが配される。
ここでFetch/Commit Sequencerと、テンソル縮約を行うContraction EngineやVector Engine/Transpose Engine/Commit Engineの間にスイッチが入っているのがミソで、大規模な行列に対してすべてのContraction Engine類が協調する形で処理できるようになっている。また個々のTensor Unitの間は非常に高速なNoCでつながっており、HBM3の帯域をすべてのTensor Unitで使い切れるような構成になっている。
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