まずは「都内で30分間の自動運転」を目指し、チューリングが開発用計算基盤を構築
生成AIで“ハンドルのない車”に一歩近づく? NTTドコモグループ支援で自動運転AIが始動
2024年11月11日 12時30分更新
Gaggle Cluster構築にはNTTドコモグループが支援、中長期的な価値創出のための協業も
今回、Gaggle Clusterの構築を支援したのは、NTTPCコミュニケーションズ(NTTPC)だ。同社は、NTTドコモグループにおいてネットワーク・データセンター事業を担い、生成AIがまだ登場していない2017年からGPUサーバーを販売してきた。
GPU基盤の構築には、パフォーマンスを最大限に発揮させるために、データセンターの設計から検証までの工程が求められ、時間とコストを要してしまう。この課題を解決するサービスが、NTTPCの提供する「GPUプライベートクラウド」である。
Gaggle Clusterでは、GPUプライベートクラウドでGPU計算基盤が提供され、NTTPCがそのチューニングから保守運用までを代行する。NTTPCは、GPUの調達力の面ではNVIDIAの「エリートパートナー」認定を受けており、運用力の面ではNTT版LLMであるtsuzumiのGPU基盤を手掛けるなど、それぞれ十分な実績を有しているという。
NTTPCコミュニケーションズの代表取締役社長である工藤潤一氏は、「チューリングは、これにより自動運転の開発に全面的にリソースを投入することができる。我々はビジネスの加速を支援する」と語る。
一方、資金面で支援するのは、NTTドコモグループのコーポレートベンチャーキャピタルであるNTTドコモ・ベンチャーズだ。2008年の設立以降、ドコモおよびNTTの双方から継続的にファンドを組成しており、累計運用額は1050億円に達する。
同社は、2024年4月にチューリングに出資している(具体的な金額は非公開)。ドコモ側のファンドによるもので、注力投資領域である「非連続なイノベーション」に取り組むベンチャーとしてチューリングに注目、中長期的な事業創出に期待しての出資だという。
NTTドコモ・ベンチャーズの代表取締役社長である安元淳氏は、「将来的には、tsuzumiやドコモのBtoC事業など、NTTドコモグループのアセットを連携させることで、完全自動運転の実現を支えていきたい」と説明した。
説明可能性より圧倒的な“安全性”が社会における許容の第一歩
発表会では、「End-to-Endの自動運転では、“判断や操作の根拠がブラックボックス化してしまう”ことに対する懸念にどう対処するか」という質問が投げかけられた。これに対しチューリングの山本氏は、「説明可能なものを作るために、安全性を無視して良いのか。とにかく“圧倒的に安全なものを作る”ことが、社会における許容の第一歩になる」と回答した。
加えて、「例えば、ルールベースのシステムでも、100万行からなるコードを普通の人は到底理解できない。既に説明できない複雑なシステムで社会が回っているのが現実で、そこにAIという新しいツールが入ってきただけ」と強調した。
またチューリングは、完全自動運転を2030年までに実現することを目指しており、そのためには「“AIがこの世界を人間のように理解できない”ことが圧倒的なボトルネック」と山本氏。「特に『身体性』を有したAIの開発が進んでいない。“自分がこう動くと他人はこう動く”、“自分がこうハンドルを切ると車はこう動く”といった、人が当たり前にできていることに追いつく必要がある。そのためのAI開発を、まずは2025年のTokyo30のプロジェクトまで走り切る」と展望を語った。