ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第795回
AI性能を引き上げるInstinct MI325XとPensando Salina 400/Pollara 400がサーバーにインパクトをもたらす AMD CPUロードマップ
2024年10月28日 13時00分更新
AIネットワークを最適化するPensando Salina 400と
ネットワークカードのPollara 400
もう1つ説明があったのが、新たに投入されるPensando Salina 400/Pollara 400である。このPensandoシリーズはこれまでも軽く流してしまっていたので、説明しておこう。2022年にAMDはPensandoを約19億ドルで買収した。このPensandoの買収により、AMDはIPU(Infrastructure Processing Unit)を手に入れることになった。ちなみにAMDはこれをDPU(Data Processing Unit)と称している。
IPUの話は連載634回でインテルのMount Evansをテーマにして説明しているが、Pensandoの製品はこのIPUの機能に、ついでにイーサネットまで一体化したような構造になっており、これを利用することでEPYCベースのサーバーのネットワークインフラ周りを丸ごとオフロードできるようになった。
PensandoはAMDの買収前にCaprlと呼ばれる第1世代の製品と第2世代のElbaを開発してほぼ完成していたところで、AMDはElbaをベースとした第2世代+に相当するGiglio、それと第3世代のSalinaの開発から加わることになる。といってもAMDはPensandoの開発チームをほぼそのまま残したようで、ほぼPensandoのロードマップ通りに製品が投入されることになった。
AMDはGiglioを"Pensando 2nd Gen Plus DPU"という名称ですでに発売しており、今回発表があったPensando Salina 400は第3世代製品としてロードマップ通りに出荷された形になる。
Salina 400はP4言語(*2)を利用したネットワーク専用プロセッサーで、AMDによれば例えばSalina 400を使うことでネットワーク経由でクラスターを組んでAIの学習処理をする場合のネットワーク待ち時間を平均30%減らせるほか、AI向けネットワークの利用効率を95%以上に高められる、としている。
(*2) 連載634回でも少し触れたが、ネットワーク機器でデータパケットの処理を柔軟に定義するための言語。P4.orgで仕様が策定されている。
さてこの同じPensandoのブランドで投入されたのが、Pollara 400である。こちらは業界初のUEC(Ultra Ethernet Consortium)準拠のイーサネットである。UECはLinux Foundation傘下の団体であり、2013年12月にAMDが開催したAdvancing AIイベントでその結成が発表された。
ちなみにこのUECのステアリングメンバー(運営委員)にはAMDだけでなくインテルも加わっており、ジェネラルメンバー(一般会員)にはNVIDIAも名前を連ねているあたり、別にAMD専用のネットワークというわけではない。
主要な目的は、HPCやAIなどにおける大規模ネットワークの効率化を図るというもので、物理層は既存のイーサネットそのままであるが、その上を独自の高効率なネットワーク・スタックを搭載することで性能を改善しよう、という試みである。実際UECを利用した場合、従来のTCP/IPベースのイーサネットと比較してより高速であるとする。
UEC自体の結成は2013年7月であり、UEC Specification 1.0のリリースは2025年第1四半期を予定しているが、これに先駆けてすでにUEC Readyのイーサネットを市場投入したことの意味は大きい。これまでHPCやAIのネットワークは汎用のイーサネットか、NVIDIAベースのソリューションだとそこにInfiniBandという2択になっていたが、今回のPollara 400の投入で汎用イーサネット/InfiniBand/UECの3択になる。地味ながら大きなインパクトのあるニュースと言えよう。
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