ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第829回
2026年にInstinct MI400シリーズを投入し、サーバー向けGPUのシェア拡大を狙うAMD AMD GPUロードマップ
2025年06月23日 12時00分更新
6月12日、AMDはAdvancing AI 2025を開催した。昨年12月のAdvancing AI&HPC 2024 Japanや、昨年9月のAdvancing AI 2024と同じく、主にAIをターゲットに絞っての製品とソリューション紹介のイベントである。基調講演の模様はYouTubeで中継されているが、順に解説していこう。
サーバー向けGPUでシェアを獲得すべく投入した
Instinct MI350
AMDは広範なソリューションを昨年までにそろえており、NVIDIAほどではないにしても、順調にシェアを広げている。特にEPYCに関しては2025年第1四半期にはマーケットシェアが40%近くまで伸びており、Graceをベースにサーバー用CPU市場を狙うNVIDIAと大差をつけている。ただサーバー向けGPUは逆にNVIDIAに大差を付けられているわけで、ここをどう今後リカバリーしていくかという話になる。

AMDがそろえる広範なソリューション。Ryzen AIはともかくRadeon AIは今年のCOMPUTEXで発表されたばかりで出荷は7月からである
そのための武器として今回発表されたのがInstinct MI350シリーズである。もともと2024年6月のCOMPUTEXでMI400までの製品ラインナップのアナウンスこそ行なわれていた。
このうちMI325Xは2024年10月に正式発表され、またこの時にMI350シリーズのMI355Xの性能プレビューも紹介された格好だが、今回正式に発表された形だ。
MI350Xシリーズの内部構造については次回説明するとして、主な特徴が下の画像である。そもそもMI355Xの性能の詳細は連載795回で説明しており、基本的にはそう変わらない。
MI300Xと比較しての性能、という意味ではCDNA4のホワイトペーパーがすでに公開されており、そのなかに下表がある。

MI300Xの性能一覧表。そもそも論で言えば、MI300XのMatrix FP64とMatrixr FP32の性能が同じ、というのがおかしい。HPC向けにMatrix FP64の性能を高めたのがMI300Xというわけだろうか?
細かい話は次回として、Vector性能に関しては基本的に差がなく、動作周波数がやや下がっている関係で若干性能が落ちる格好だ。またMatrix FP64はあっさり半減されたが、これはユーザーのフィードバックというよりは、Matrixユニットの再設計でいろいろ新しいデータ型をサポートする分でエリアサイズを喰ってしまうため、これを犠牲にした感じに見える。
その代わりFP16以下ではほぼ倍近い性能であり、また新たにFP6/FP4のサポートが加わった。加えてメモリーも192GB(MI300X)→256GB(MI325X)→288GB(MI355X)と少しづつ増強されており、すでにパラメーター500BのLLMでも実行可能としている。
実際LLama 3.1を405Bパラメーターで実行したときの性能は、MI300Xの35倍にもなるとしている。

LLama 3.1を405Bパラメーターで実行したときの性能は、MI300Xの35倍。MI300XはFP8での実行なので、ここで2倍の性能になるうえ、MI300Xではパラメーターをメモリーに格納しきれないが、MI355Xでは全部オンメモリーで格納できる結果がこれである
ほかにもさまざまな性能が平均で3倍以上向上しているあたりは、単にFP8→FP4で倍速になっただけでなく、必要とされるメモリー量が減ったことで無理なくHBM3eに格納可能となり、結果効率が向上したものと考えられる。

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