AIを創る・使うにおけるパートナーとの支援例、「事業化支援プログラム」も第2期に
立ち遅れる日本の生成AI活用 日本MSが“巻き返し”のポイントを指摘
2024年10月25日 07時00分更新
ギブリーの“使うAI”支援:生成AIは現場の工夫ありき、成功の分かれ目は“経営層の環境整備”
続いて、Microsoft 365 Copilotなどの“使うAI”の利活用を支援するギブリーの取り組みだ。同社は、自社サービスの展開にあわせて、生成AI活用のためのリスキリングや協創開発、BPOなどを手掛け、これまで500社以上を支援してきた。
同社の取締役 Operation DX部門長である山川雄志氏は、生成AIを「現場の工夫ありき」のソリューションと評する。「幅広い業務に活用を広げられる一方で、定着のしやすさや利用の強制力の面では“働きづらい”。従来のDXツールと異なり、使わなくても仕事はできるため、成果最大化に向け工夫をしないと利用が進まない」と山川氏。
その“工夫”を支援したのが、住友商事における事例だ。同社はMicrosoft 365 Copilotを全社導入して、9000人が利用できる環境を整備。しかし、導入当初は利用率が上がらず、むしろ業務時間が増加してしまうケースもあったという。そこでギブリーは、具体的に活用イメージを持ってもらえるよう、ユースケースを洗い出し、「ゴールデンプロンプト集」を作成した。
さまざまな社員がいる中で汎用的に使えるよう、ユースケースは「発言集」や「議事録」「要約・報告書」の生成に絞り、“ほぼコピペで使えるプロンプト集”を目指した。綺麗に整った発言集や議事録が求められたことから、Teamsでの文字起こしを、一度Copilotで成文して、Wordで成形、Outlookで共有するという流れを、プロンプトのコピペだけで進められる仕組みを構築。「4時間の作業時間が、今では2時間に半減した」と山川氏。
加えてギブリーは、ゴールデンプロンプト集の作成を起点とした「生成AI活用定着のためのサイクル」を推奨した。ゴールデンプロンプトを作り、それを活用して現場で「成果を創出」して、社内に「ノウハウを共有」する。それを新たなユースケースとしてナレッジ化して、「推進とモニタリング」で定着化を図るというサイクルだ。
このサイクルにおいて成功の鍵となるのが、DXを推進する側である“経営層のコミットメント”だという。適正人材のアサインや工数確保、評価や報酬、ナレッジ化・仕組み化といった、現場がサイクルを回せるような環境を経営層が整える必要がある。山川氏は、「現場が工夫しなければいけないのが生成AIなので、その工夫をしっかり評価する、ナレッジ化できる状態をつくることが非常に重要」と強調した。
160社参画の「生成AI事業化支援プログラム」も第2期に突入
最後に、日本マイクロソフトがパートナーと取り組む、「生成AI事業化支援プログラム」の成果と今後の展開について触れられた。
同プログラムは、2023年10月から開始。この1年間で、約160社のパートナー企業が参画して、各企業が生成AIのサービスやメニューを設けた。さらに、4000人以上がAIのスキリングを広めるAIトレーナーになり、250以上の生成AIの活用事例が生まれたという。
同プログラムで形成した生成AIコミュニティを、今後の第2期では更に拡大していく。参画パートナーを250社まで増やし、AIトレーナーの数も1万人に、活用事例数も昨年以上の300件を生み出すことを目標にするという。