ありのままの魅力を伝えるカメラマンの原点

フォトコーチ・小木曽絵美子さん/すべての女性に、自信と勇気を。

文●源詩帆  編集●山野井春絵

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岐阜県恵那市で2人目不妊に悩みながら、よもぎ蒸しサロンを始めた小木曽絵美子さん。美しくなる女性たちを写真に納め、自信を持ってほしいという発想からカメラの道に進み、撮影×コーチングを行う「フォトコーチング」という撮影スタイルを確立。現在は「撮られることを文化に」というコンセプトで活動している。そんな小木曽さんのライフシフトの軌跡とは。

岐阜県恵那市を拠点に活躍するフォトコーチ、小木曽絵美子さん。撮影とコーチングを掛け合わせた撮影スタイルで一般女性に焦点を当て、延べ1700人の女性を撮影。

大きな苦難を乗り越えて、まずは3年やってみる

どんな荒波にも負けず、進み続けたカメラマンの道。

 

岐阜県恵那市に暮らす小木曽絵美子さんは、東京の服飾学校を経て大手アパレル企業に就職した。学びを活かした仕事ができず、将来を考えて帰京。そして結婚し、夫の両親と同居を始める。
地域がら、「結婚して子どもをたくさん産むことが女性の幸せ」という価値観が根強く、重いプレッシャーを感じていた。
2年後、待望の第一子の妊娠、出産を経験するも、どうしてももう1人欲しいと、本格的に不妊治療を始める。しかし願いは実らず、自分を責める日々だった。
 
そんなとき、体質改善のために、よもぎ蒸しに出合う。不妊に悩む女性に、この心地よさを提供したいと、小さなサロンを始めた。やがてサロンを営むなかで、小木曽さんはある気づきを得る。
 
「不妊に悩む多くの女性は自責の念があり、自信を失っている。綺麗になっていく姿を写真に収めたら、自信を取り戻せるのでは?と思いついたのが、フォトコーチの原点でした」
 
カメラに取り組み、夢中で学ぶ日々がはじまった。
ところが、カメラを始めて一年経ったころ、小木曽さんは思いがけない不幸に襲われる。
夫が亡くなったのだ。
 
「仕事で人間関係に悩んでいた夫は死を選びました。夫が帰らぬ人となったとき、『死んでしまったらどうにもならない』という強い気持ちが、私の潜在意識に入ってきました」
 
小木曽さんには、夫が応援してくれたカメラと、幼い息子が残った。だからこそ、カメラはまだ続けたい気持ちがあった。
しかし義両親からは、安定した職業に就くことを勧められたという。
 
「“安定した”公務員だった夫は、未来に希望を持てずに逝きました。息子と私を心配してくれているのはわかるけど、安定って何? 夫の死はこれでなかったことにならない?と考え、とにかく3年はカメラを仕事にしようと決意しました」

どんなに不安でも、生きてさえいれば無限の可能性があるから

2019年に行った写真展。「『モデルでなくても、撮られていいんだ』と思える人をもっと増やしたい」と小木曽さん。

 

2017年に本格始動し、女性向け連続講座の公式カメラマンを務めた。講座で撮影を重ねるごとに、おしゃれを楽しみ、綺麗になっていく女性たちがいた。写真を通じて女性たちに自信を届けたいという小木曽さんの想いは、より強固なものになっていく。
 
2019年、自身初の写真展を成功させるまでは、不安は拭えなかったという。なぜ乗り越えられたのか。
 
「生きているということは本当にすごい。そこには、無限の可能性があるから。どんなに不安がのしかかり、目の前に大きな壁が立ちはだかったとしても、それを女性たちに伝えたいという想いが私を突き動かし続けています」

どんな時でも、自分の中にある感覚を止めない

リトリート撮影会の様子。その人らしさを最大限引き出すために衣装やロケーション、光にもこだわる。

 

想いに突き動かされ、やると決めたら絶対に諦めないという小木曽さんの行動指針とは。
 
「大きく、二つを考えて行動しています。
 
一つ目は、会いたい人に会って、私のやりたいことを聞いてもらい、アドバイスをもらう。そして素直に行動してみること。母だから、40代だから、と諦めることなく、助言はすべて取り入れる。
 
二つ目は、思いついたことを温めすぎず、言葉にすること。自分の中にある感覚を止めてはいけないと気付いたんです。最近は、息子も私にいろいろと問いを投げかけてくれるようになって、今では大切なメンターの一人になりました」
 
信頼している人と話しているうちに“なぜやるのか(Why)”が明確になった。その内容をSNSで発信すると、共感してくれる人がさらに増え、心から尊敬し合える仲間にも恵まれたという。

「撮られることを文化に」それこそが私の人生

 小木曽さんの作品の一例、3人の子どもを育てる40代主婦。「綺麗になりたいと思ったら綺麗になっていいし、もっと自分に素直に生きようと思えた」

「モデルのような自信もないし、写真を撮られるのが苦手」という一般女性はとても多い。そこで小木曽さんは、写真を通じて「既に持っている自分の魅力に気づいてほしい」と“撮られることを文化に”というコンセプトを打ち立てた。

  「目の前の人が理想の未来に向けて、必要な自信を持てるよう、私は言葉で魅力を伝え、最高の瞬間を切り取ることに全力を注いできました」

  撮影を続けることで、女性たちにどのような変化があったのか。

  「例えば、期日までに痩せたくても間に合わず、そのまま撮影することは多いです。でも、私はありのままの魅力を写真と言葉で伝えます。すると、今まで気がつかなかった魅力に気づき、『体型や自分は変わってないのに見えるものが変わった』と話してくれます」

  その現象は、小木曽さん自身も実感している。不妊で悩んでいた時、いい母、いい嫁といった評価されるべき何者かにならないと、「幸福」や「やりがい」は得られないと考えていた。幼い息子にも、足りないと思う部分にばかり目を向ける日々だった。 しかし、現在の仕事を通じて、ありのままの自分は幸せな道を選んでいい、掴んでいいと自分を許せるようになった。仲間や家族にも優しくなった。

 「今では、呼吸をするように自然に、貢献できることにやりがいを感じます。すべての人にもそう感じてほしいと思うようになりました」

自分の可能性に蓋をしている女性たちへ、必要な自信と希望を

撮影を通じてコーチングを行う「フォトコーチ」。その取り組みは、多くの女性たちに勇気と自信を与えてきた。

 「自信を持つことができれば、今まで選択肢になかった未来を選ぶことができる」と小木曽さん。自信に満ち溢れた女性たちの写真は、観る人にも勇気を与える。

小木曽さんは、その先の未来に向けて、新たな活動を始めている。
 
「新しいジャンルであるフォトコーチングという仕事をもっと世の中に広めたい。そのために、養成講座をスタートしました。私1人ではどうしても時間がかかってしまう。少しでもフォトコーチが増えてくれたら、“撮られることを文化に”という考えがより浸透し、明るい未来が開けるはずです」
 
自信を持つ手段の一つとして、美容院やネイルサロンのように、当たり前に写真撮影を行う、そんな文化を根付かせたいという。
 
「私は、自分の可能性に蓋をしてしまっている女性たちが、“いくつになっても自分には無限の可能性がある”と信じられる未来を作っていきたい」
 
小木曽さんの言葉には、いつもどこか亡き夫との深い繋がりがある。「生きてさえいれば、無限の可能性がある」という考えを女性たちへ伝えることは、今も心で繋がる夫婦の旅の続きなのかもしれない。
 

Profile:小木曽絵美子

こぎそ・えみこ/不妊治療や夫の死をきっかけに、自分の魅力を否定しつづけていたことに気付き、もともと趣味だったカメラの道に進むことを決意。その人特有の美しさを、カメラとコーチングを使った対話で引き出すのが得意で、延べ1850人の女性を撮影している。自分自身が80回以上撮影を受け、魅力を受け取って変化してきた経験から、撮られることは女性が変化をする近道であると確信。「撮られることを文化に」を掲げ、一般女性のための写真展を4年間で6回開催。 撮られることを通して、女性が力を社会に発揮できるように活動している。2024年春から同じように活動したい人を増やして行くためにフォトコーチ養成講座を開講。

Instagramアカウント:@emmy_photo308

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