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業務プロセスそのものを変革する“APA”の実現に向けた動き

「エージェンティックAI」とは? UiPath CEOが自動化とRPAの未来を語る

2024年10月21日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 RPA/業務自動化ソリューションベンダーのUiPath。その共同創業者でありCEOを務めるダニエル・ディネス(Daniel Dines)氏が、2024年10月21日~24日に米国で開催する年次イベント「UiPath Forward 2024」を前に来日し、メディアのインタビューに応じた。

 ディネス氏は、現在注目を集めている「エージェンティックAI(Agentic AI、自律型AIエージェント)」とは何かを説明したうえで、それが業務自動化に与える影響、エージェンティックAIを組み込んだ自動化を実現するプラットフォームとしてのUiPathの優位性について語った。

UiPathの共同創業者兼CEOのダニエル・ディネス(Daniel Dines)氏。UiPathジャパンオフィスにて

エージェンティックAIとは何か、RPAをどう進化させるのか

 あらためて、「エージェンティックAI」とは何か。

 エージェンティックAIは、ユーザー(人間)が与えた「目的」をふまえたうえで、自ら取得したさまざまな情報に基づいて「自律的に」意思決定を行い、アクションを自動的に実行するAIを指す、新たな概念だ。

 その名前だけを見ると、これまでも存在した「AIエージェント」(人間の業務を対話形式で支援する生成AI)と混同しそうになるが、まったく異なるものである。従来型のAIエージェントは、あくまでも人間の意思決定を“支援する”立場にとどまり、自ら意思決定をすることはないからだ。ディネス氏は、これまでのAIエージェントの限界をこう語る。

 「現在、生成AIはビジネスユーザーの生産性向上ツールに広く採用されている。多くの場合、チャットボット(=AIエージェント)に質問をすれば回答が返ってくるかたちだが、回答内容を確認(して最終的な意思決定を)するのはユーザー側の役割だ。強力な支援ツールではあるものの、“ビジネスのやり方を変革する”ものではない」

 一方でエージェンティックAIは、人間の判断を待つことなく「自律的に」意思決定とアクションを行う。そのため、これまでは実現不可能だったレベルの高度な自動化が実現可能となり、ビジネスプロセスそのものを大きく変革する可能性もある。

従来のRPAが搭載してきたロボットと、エージェンティックAIが実現する「エージェント」の違い

 そしてエージェンティックAIは、これまでのRPA(Robotic Process Automation)を「APA(Agentic Process Automation)」に進化させる可能性も持っている。

 RPAのロボットは、あらかじめ人間が設定したルールに従って動き、業務を自動化してくれる。ただしロボットは意思決定を行えないため、適用できる業務は「変化のない繰り返し作業」に限られた。ここに意思決定ができるエージェンティックAIの力が加われば、より幅広い業務を自動化できる可能性が生まれるわけだ。

「ロボット」と「エージェント」は補完的に働く

 ただし、エージェンティックAIの登場によって、これまでのロボット処理(ロボティックな処理)が不要になるという意味ではない。

 生成AIは、従来のRPAにあった「非構造化コンテンツを理解できない」という制約を取り除く一方で、「信頼性が低い」「決定論的な動作をしない(同じ条件下でも異なる意思決定をしてしまい、再現性がない)」という課題があると、ディネス氏は指摘する。

 そのため、現実の業務プロセスでは、ルールベースで静的に自動化したい部分と、エージェントに動的な状況判断をさせたい部分とが混在することになる。そこで、両者を補完的に機能させながら自動化していくアプローチが求められる。

 ディネス氏は、ルールベースで働くロボティックを“左脳”、意思決定を行うエージェンティックを“右脳”にたとえ、両者が補完関係にあることを示す。

 「わたしたちの身体でも、脳を機能させるために必要な心拍や呼吸といった動作は、無意識に(意思決定なしで)行われている。われわれは、生成AIを効率的に動作させるためには右脳だけでなく左脳、ロボットの部分も必要だと考えている」

ロボットは“左脳”、エージェンティックAIは“右脳”を担うイメージ

 さらにディネス氏は、脳に情報を取り込むための“目や耳”、アクションを起こすための“手や足”といった器官も必要だと付け加えた。コンピューターに置き換えれば、外部のさまざまなアプリケーションと接続し、意思決定に必要な情報を取得したり、アクションを実行したりする必要がある。加えて、こうした全体をうまく連携動作させる(オーケストレーションする)こともできなくてはならない。

RPAプラットフォームの持つ優位性を生かして“APA”へ進化

 UiPathのRPAプラットフォームはすでにこうした機能の多くを備えており、「常に中立的な立場で、複数のビジネスシステムと接続できる点が強みだ」とディネス氏は説明する。たとえばSalesforceやSAPといった業務アプリケーションにエージェンティックAIを搭載しても、自動化の範囲はそれぞれのアプリケーション内に限定されてしまう。RPAという立場であれば、そうした制限がない(少ない)というわけだ。

 さらに、セキュリティやガバナンスという側面でも、RPAプラットフォームにはすでに実績があると説明した。「『誰がエージェントにアクセスできるか』『エージェントにどんな業務アプリへのアクセスを許可するか』など、これまでのロボットと同じように、エージェントやアプリを保護することができる」(ディネス氏)。

RPAによるプロセス自動化で埋められなかった“ラストワンマイル”を、エージェンティックAIが埋める「APA」の未来像

 「この(ロボットとエージェントの)組み合わせは非常に強力であり、自律的な自動化処理を提供するための鍵を握っている。さらに、複数のアプリケーション、エージェント、ロボット、人間の間に立ってオーケストレーションをすることもできる。エージェンティックAIを提供するうえで、UiPathは本当に良い位置付けにあると考えている」

 エージェンティックAIによる高度な自動化は、現時点ではまだ実現していない。AIからの「提案」に対して、最終的な意思決定を人間が行うというプロセスは残っている。ただし、提案に対する人間の判断(フィードバック)をAIに学習させることで、少しずつその実現に近づいていくだろうとディネス氏は答えた。最終的には「ビジネスのAIトランスフォーメーション」が起きると予測する。

 「(AIが自律的に意思決定を進める)AIトランスフォーメーションの世界に向けて、ビジネスプロセスをどのように再設計するかはとても重要になってくるはずだ。エージェンティックAIによる自動化は大きなビジネスになるだろう」

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