「Oracle CloudWorld 2024」の主要な新発表を“3つの戦略”でまとめる
分散クラウドからソブリンAIへ、“先行他社とは違う”オラクルOCIの戦略とは
2024年10月18日 11時00分更新
分散クラウド:顧客データセンターも他社クラウドも「OCIのリージョン」のひとつに
「分散クラウド(Distributed Cloud)」は、OCIが長年にわたり継続的に取り組んで来たテーマだ。
シャガラジャン氏は「2016年にOCIを発表して以来、われわれの信条は変わっていない」と述べたうえで、オラクルの分散クラウドは次に挙げる「4つの信条」に基づいて構築していると続けた。
「根底にあるのは『クラウドリージョンをあらゆる場所に展開する』というビジョンだ。そこでは、どんな場所(リージョン)を選んでも、同一の組み込みセキュリティ、同一のサービス、そして同一のコストでOCIを利用できる」
OCIでは現在、全世界合計で162のデータセンターにリージョンを展開しているという。ただし、分散クラウド戦略を特徴づけるのはリージョンの総数ではなく“内訳”だ。
商用リージョン(一般的な提供形態であるパブリックリージョン)は現在41リージョンを数え、昨年と比較すると2リージョンの増加だ。ただし「Dedicated Region Cloud@Customer(DRCC)」は、昨年比で5リージョンも増加している。さらに、昨年時点ではゼロだった「Oracle Alloy」は3リージョンとなり、「Oracle Database@Azure」「Oracle Database@Google Cloud」も、それぞれ7リージョン、4リージョンで提供を開始している。
こうした多様な形態のリージョンを展開しているのは、従来型の商用リージョンだけではカバーできないニーズに応えるためだ。たとえば、厳しいコンプライアンス要件やデータ主権の要件に対応するものとして、DRCCやAlloyといった展開形態がある。マルチクラウドというニーズに対しても、Oracle Database@Azure/Google Cloudという形で応える(今回はここにAWSも加わった)。
OCIの分散クラウドは“フルクラウド”も特徴としている。DDCRやAlloyであっても、通常の商用リージョンが提供するすべてのサービスが利用可能だ。今回、DDCRを最小3ラックから導入できる「Dedicated Region25」が発表されたが、ここでもフルクラウドの特徴は維持された。
このようにOCIは、分散クラウド戦略を通じて他社クラウドとは異なる特徴を持つことで、これまでクラウド移行が困難だったワークロードのクラウド移行や、各国のパートナーが運用するソブリンクラウドの提供、パートナー独自の特色を加えたクラウドサービスの提供を可能にする。
セキュリティ:新たなゼロトラストネットワークセキュリティ「ZPR」を実装
前述した“フルクラウド”の特徴と同様に、OCIでは分散クラウドのどこであっても、組み込み型セキュリティをフルスタックで提供する。
今回は、クラウド環境向けの新たなネットワークセキュリティ技術「ZPR」(ジッパー、Zero-trust Packet Routingの略)をOCIのネットワークに組み込む「OCI ZPR」が発表されている。昨年のOCWで予告されていたものだが、その一般提供を間もなく開始する見込みだ。
ZPRは、ネットワークのセキュリティポリシーを、ネットワークアーキテクチャとは完全に分離したかたちで管理できる技術だ。インテントベースのポリシーにより許可されたアクセス以外は、ゼロトラスト原則に基づき、ネットワークレイヤーですべて拒否する。そのため、クラウドネットワークで発生しがちな「複雑なネットワーク設定」「設定ミスによる脆弱性」などを防げる、とうたっている。
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