「挑戦意欲のある人材に予算と権限を」日米比較の調査結果からPwCコンサルが提言
初動は早かったが、結局生成AI活用で後れを取る日本 理由はリスク対策・保守的な文化
2024年10月07日 13時15分更新
従来アプローチでは不十分、「3つの変化」を提言
三善氏は調査結果のまとめとして、日本は現状、生成AI活用を企画し、検証し、実装し、運用・改善するというサイクルを回せておらず、「検証部分で足踏みしている企業が多い」とする。その要因として、下支えするガバナンスがガイドライン・ポリシー策定のレベルに留まり、ユースケース毎の具体的なリスク対策が遅れていること、保守的な文化などが障害になっていることを挙げる。
結果、対策を打たずともリスクが許容できる社内業務や既存事業に生成AIを活用するものの、コスト削減が主な目的となり、「得られるリターンも大きなインパクトは出ない」(三善氏)状況に陥る。これは従来型のAI活用時にみられた日本企業の傾向・課題が、また顕在化してしまっているという。一方の米国は、新規事業や社外向けのサービスに生成AI活用を広げており、コスト削減だけではなく、競争優位性につながる新たな顧客体験を生み出そうとしている。
「何故こうなっているか。過去の技術的なイノベーションによる成功体験の差も感じている。差をつけられないためにも、リスク対策をきちんと講じた上で、企画・検証・実装・運用のサイクルを回し続けていくことが重要」(三善氏)
最後に、三善氏は「従来のアプローチは不十分で、やり方を変えるしかない」と、日本企業に3つの変化を提言する。ひとつは、挑戦する意欲のある人材に予算と権限を委譲して、活動を推進させることだ。「今までのやり方を変えて、新しいアイディアを生み出せる人材は、既存のやり方をリスクやミスなく回せる人材とは違う」と三善氏。
2つ目は、100%の精度を求めるなど、“間違えを許容できない”という文化や考え方を変え、適切なリスク分析と具体的な対策を検討すること。「精度を100%追い求めるのなら、70%、80%だとしても、使い続けて磨いていく。使わないことやノウハウが溜まらないことによる機会損失の方が実はリスクとして大きいのでないかと捉え直すことが大事」と強調する。
3つ目は、生成AI活用で、マネジメントを高付加価値業務に変えていくことだ。本来マネジメント層がリソースを割くべきなのは、工数管理などの短期的な企業価値の維持ではなく、中長期的な戦略立案などの業務だ。三善氏は「マネジメント層自体も生成AIを積極活用して、本来能力を発揮するべきところにシフトする意識変革をしなければならない」と締めくくった。