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AIブームで原発復活の狼煙、スリーマイルとMSが20年契約

2024年10月05日 12時11分更新

文● Casey Crownhart

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Matthew Hatcher/Getty

画像クレジット:Matthew Hatcher/Getty

マイクロソフトがスリーマイル島原子力発電所と長期電力供給契約を締結した。運転再開後にマイクロソフトが全量買い取る契約で、隣接する同社のデータセンターで利用する。この発表は何を意味するのか。

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

スリーマイル島に原子力発電が戻ってくる。

スリーマイル島原子力発電所は、普段、極めて特殊な出来事と結び付けて語られる。同発電所の原子炉の1つである2号機が、1979年に部分的なメルトダウンを起こしたことは、米国史上最大の原子力事故として今も記憶されている。それ以降、2号機は閉鎖されたままだ。

しかし、ペンシルベニア州にあるこの発電所には、1号機というもう1つの原子炉があり、そちらは2019年に閉鎖されるまで、数十年にわたって安定して安全に発電していた。この発電所の所有会社は9月20日に、マイクロソフトと契約を結び、稼働再開の計画があることを発表した。マイクロソフトは今後20年間、同発電所の全発電量を購入する予定だ。

このニュースは多くの理由で興味深い。米国の原子力の歴史において、同原発が重要な意味を持つことは明らかだ。閉鎖後に国内で最初に再稼働する原子炉の1つになる可能性があるからだ。そして、マイクロソフトがこの原子炉で作られたすべての電力を購入する。このことが原子力産業の将来と巨大テック企業の電力需要について何を物語っているのか、詳しく見ていこう。

スリーマイル島の2号機は、事故が起こった1979年3月まで、数カ月間しか稼働していなかった。当時、1号機は燃料補給のために停止していた。1号機は、議論を巻き起こしながら1980年代半ばに再稼働し、30年以上にわたってこの地域の何十万という家庭向けに十分な電力を発電した。

しかし、最終的にこの発電所は経済的苦境に陥った。非営利のシンクタンクであるニュークリア・イノベーション・アライアンス(Nuclear Innovation Alliance)のパトリック・ホワイト調査部長によると、同発電所は比較的高い効率と低コストで稼働していたにもかかわらず、天然ガスの記録的な低価格と、比較的安価で補助金の出る再生可能エネルギーの送電網への導入によって閉鎖に追い込まれたという。

しかし、その状況はここ数年で変わったとホワイトは話す。「インフレ抑制法(IRA)」におけるテクノロジーに偏らない新たな税額控除など、原子力に利用できる資金は増えている。また、人工知能(AI)を動かすのに必要なデータセンターへの電力の供給を目論む巨大テック企業の影響もあり、電力網のエネルギー需要の増加に対する懸念も高まっている。

スリーマイル島原子炉1号機の所有会社であるコンステレーション・エナジー(Constellation Energy)は、マイクロソフトとの契約と同時に、発電所の名称変更についても発表した。改名後の名称は「クレーン・クリーン・エネルギー・センター(Crane Clean Energy Center)」である (これが定着するかどうかはわからない)。

この原子炉の特殊な場所と、その電力がデータセンター(およびその他のインフラ)に供給されるという事実が重なり、一瞬にしてこの発表全体に注目が集まった。ある見出しでは、「大量の電力を必要とするマイクロソフトのAI、米国の核メルトダウン発電所を活用」とされていた。

気候問題に携わる人の中には、この契約に大いに納得する人たちもいる。原子力は、今日でも最も高価な電力形態のひとつである。しかし、原子力発電所は普段から一定量の電力を供給しており、送電網で重要な役割を果たすことができると専門家は言う。発電が途切れることがある風力や太陽光などの再生可能エネルギーとは対照的に、原子力発電はよく「安定した電力」と呼ばれている。

資金の保証がなければ、この原子炉は予定どおり廃炉になっていた可能性がある。最近閉鎖された発電所を再開すれば、まったく新しいプロジェクトを立ち上げることなく、原子力発電のメリットを享受する機会が得られる可能性がある。

3月、ミシガン州のパリセード原子力発電所(Palisades Nuclear Plant)は、再稼働のために、米国エネルギー省の融資プログラム局から15億ドルを超える融資保証を得た。パリセード発電所は2022年に閉鎖されたが、所有会社は2025年後半までに再稼働したいとしている。計画通りに進めば、米国で閉鎖されていた原子炉が再稼働するのはこれが初めてとなる(詳細については、今年先立って書いた記事をご覧いただきたい)。

スリーマイル島もそう遠くない先かもしれない。コンステレーションは、原子炉は2028年までに再稼働できると話している(興味深いことに、この施設は、現在2034年までの稼働しか認可されていないため、わずか数年後に別途再認可手続きを受ける必要がある。標準的な20年間の延長では、2054年までの稼働が可能となる)。

スリーマイル島原発が再稼働すれば、マイクロソフトが恩恵を受けることになる。同社の長期電力購入契約により、年間約80万世帯に電力を供給するのに十分な電力を確保することになるからだ。ただし、今回その電力は、マイクロソフトが発電所と同じ地域に構えるデータセンターインフラの運営に利用される。

巨大テック企業が原子力発電に飛びつく兆しが見られたのは、これが初めてではない。今年に入って、アマゾンは同じくペンシルベニア州にあるサスケハナ(Susquehanna)原子力発電所のすぐ隣にデータセンター用地を購入した。

アマゾンはサスケハナ発電所の発電量の一部しか使用しないが、マイクロソフトはスリーマイル島で作られる電力をすべて購入する。そうなると、この一連の仕組みにおいて、誰が何にお金を支払うのかという疑問が生じる。コンステレーションのジョー・ドミンゲスCEO(最高経営責任者)は、施設の再開にかかる費用を納税者が負担することはないとワシントンポスト紙に語った。そして、州からの特別な補助金を求めることもないと付け加えた。

その一方で、ドミンゲスCEOはワシントンポスト紙に対し、このプロジェクトを進めるには連邦政府の資金が鍵となるとも語った。具体的には、既存の原子力発電所向けに設けられたインフレ抑制法の税額控除が存在する。

コンステレーションは、ワシントンポスト紙に潜在的な税額控除の額を明かすことを拒否し、本誌のコメント要請にも応じなかった。私は電卓を叩いて自分で計算してみた。835メガワットの発電所が96.3%の稼働率(コンステレーションが発電所の最終稼働年の数値として示したもの)で稼働し、1メガワット時あたり15ドルの税額控除があり、賃金と料金の要件が満たされていると仮定すると、その金額は年間約1億ドルに達する可能性がある。

発電所再稼働の流れがどこまで続くのか、見ものである。アイオワ州にあるデュアン・アーノルド(Duane Arnold)原子力発電所は候補のひとつだ。同発電所は45年の稼働を経て2020年に閉鎖されたが、所有会社は再稼働の可能性について公にコメントしている。

これら3つの発電所のいずれかまたはすべての再稼働は、原子力の復活が近づいていることを示す最新の兆候かもしれない。巨大テック企業は大量のエネルギーを必要としており、古い原子力発電所を電力網に組み込むこと、あるいは、できれば老朽化している発電所を稼働させ続けることは、需要を満たすための素晴らしい方法のように私には思える。

しかし、最近閉鎖された、または閉鎖される予定の発電所から電力を獲得する機会が比較的稀であるとなると、業界にとっての最大の疑問は、この関心の高まりが新しい原子炉の建設にもつながるかどうかということだろう。

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