運転士なしの無人運転と安全面の課題
●さらなる高速化と自動運転に向けたテスト車両「ALFA-X」
最後に、冒頭でも軽く触れた未来の新幹線の姿を、少しだけ紹介しよう。
JR東日本では「ALFA-X(アルファエックス)」と呼ばれる試験車両を製造し、2019年から夜間を中心にさまざまな試験を実施している。設計最高速度は時速405km。2024年10月時点では、時速360kmでの営業運転実現に向けたデータ収集や、将来の自動運転化に向けた基礎研究が主な役割だ。
同社は2028年度から、上越新幹線で営業列車の半自動運転や、回送列車の無人運転を順次導入することを決めており、ALFA-Xでも遅延を検知して自動で回復運転をする定時運転装置の試験を実施中。早ければ2030年代中頃には、上越新幹線から「運転士」という職業が消滅する見通しだ。
一方、JR東日本では9月19日、東北新幹線で走行中に連結が外れ、緊急停車する事故も発生。車輌製造時に付着した金属片が連結解除スイッチを誤作動させたものと推定されているが、原因が何であれ、新幹線の安全神話が大きく揺らぐ出来事であることは確かだ。
また、JR東海でも7月、保線車両の脱線により東海道新幹線が一部区間で終日運休する事態が、JR西日本でも9月に入り、作業員による検査数値の見落としが原因で列車の運休が発生するなど、内容や程度の違いはあれど、JR東日本以外の新幹線でもトラブルは出ている。
次の10年間で、自動運転の導入など、開業以来最大の変化が訪れる新幹線。その成功は、今起こっている問題をきちんと解決し、安全性を高めることができるかどうかに掛かっている。