このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

業界人の《ことば》から 第604回

秋葉原の専門店からBTO業界の雄に、サードウェーブこの先の伸びしろは?

2024年09月04日 08時00分更新

文● 大河原克行 編集●ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

今回のひとこと

「サードウェーブは、まだまだ伸びしろがある企業。新たなことに挑戦する文化をより浸透させ、わくわく、ドキドキするPCを提供したい」

(サードウェーブの井田晶也社長兼COO)

 ゲームPCブランドの「GALLERIA(ガレリア)」や、PCショップ「ドスパラ」を展開するサードウェーブが、創業40周年の節目を迎えるなか、新たな経営体制をスタートさせた。 

 2024年8月1日付けで、インテル出身で、サードウェーブの副社長を務めていた井田晶也氏が社長兼COOに就任。主力事業である個人向けPC事業をさらに強化するとともに、新たに法人向けPC事業を拡大する方針を打ち出した。 

 創業家以外からは初の社長就任となった井田晶也社長兼COOは、「法人向けビジネスを、今後3年で2倍にする。2027年7月期には、少なくとも全社売上高1000億円を達成し、そのうち、約3割を法人向けビジネスで占めたい」と、成長戦略に意欲をみせる。 

 サードウェーブは、1984年に秋葉原でPCパーツの販売店からスタートした。当時の店名は、社名のサードウェーブだったが、1992年に、DOS/Vパラダイスへと店名を変更し、PCパーツの販売だけでなく、DOS/Vパソコンの販売を開始した。2003年には通称として広がっていた「ドスパラ」へと店名を変更している。

 また、2003年からは、それまでの店舗でのPC組立サービスに加えて、物流センター内でのパソコンの製造および出荷を開始。2004年にはゲーミングPCブランドの「GALLERIA」を誕生させて、PCメーカーとしての一歩を本格的に踏み出した。2007年には、デジタルクリエイター向けPCブランド「Raytrek」の提供を開始。その後、法人向けSIソフトウェアの開発事業や、深層学習用ワークステーションの開発、eスポーツ大会の主催や競技施設の開設などにも取り組んできた。 

 全国に48店舗を展開するドスパラと、PCメーカーとして、新製品の企画、製造、販売を自社で行う垂直統合モデルは、同社の大きな強みとなっており、柔軟な商品企画やカスタマイズへの対応、用途特化型PCの開発なども可能にしている。 

 井田社長兼COOは、「つるしではなく、テーラーメイドのPCを、短納期で、提供することができる」とサードウェーブの強みを示す。

GALLERIA、raytrek、THIRDWAVEの3本柱に

 新生サードウェーブでは、すでにいくつかの取り組みをスタートさせている。 

 ひとつめは、PCブランドの再編だ。これまでにいくつもの製品ブランドがあったが、これを再編し、ゲーミングやクリエイター向けの「GALLERIA」、法人向けPCの「raytrek」、カスタマイズ対応によって幅広いニーズに対応するテーラーメイドPCを提供する「THIRDWAVE」の3つに集約した。 

AVに最適化したPCもラインアップしている。

 「どんな用途で、どんなターゲット層に向けたブランドであるのかをわかりやすくするとともに、今後のビジネス戦略に沿った形に、ブランドを再構築した」と、井田社長兼COOはその狙いを語る。 

それぞれのブランドのターゲットは明確だ。 

 「GALLERIA」は、従来からのゲーミング用途だけでなく、クリエイターや、AIを活用するユーザーも対象にした製品をラインアップ。これまでのブランドを「拡張」することになる。 

GALLERIA

同社では、GALLERIAシリーズに用意していた「U(Ultimate-至高-)」「Z(Zealot-熱狂-)」「X(eXtend-伸展-)」「R(Refine-洗練-)」の4つのラインアップに加えて、新たにCPU性能に特化し、消費電力とコストを低減したオンボードグラフィックスの新シリーズ「D(Discovery-発見-)」を追加し、ラインアップを拡張している。 

raytrek

 これに対して、「raytrek」は、これまではクリエイター向けとしていたが、これを法人向けPCブランドに「刷新」する。同社の法人ビジネスの成長を担う中核的製品に位置づけるほか、プロユースでの利用を想定して、設計などのデザインなどの領域にも展開。さらに、AI PCのラインアップや、高校や大学といった教育分野にも提案していくことになる。 

THIRDWAVEブランドのミニPC

 そして、「THIRDWAVE」は、同社が持つ垂直統合の強みを生かして、一般的な用途から特定用途まで、様々なニーズに対応できる製品として展開することになる。カスタマイズの強みとともに、コストパフォーマンスの高さも訴求していくブランドだ。 

 「ブランドをシンプルに再編したことにより、それぞれの製品の狙いがわかりやすくなっただけでなく、この3つのブランドで、サードウェーブは成長戦略を描いていくんだということを、対外的に明確に示せた」と語る。

法人向けビジネスの強化

 2つめの取り組みは、法人向けビジネスの強化だ。 

 先にも触れたように、井田社長兼CEOは、全社売上高1000億円を目指す計画を発表し、そのなかで、法人向けビジネスを今後3年で2倍に拡大。約3割を法人向けビジネスに広げる目標を明らかにしている。つまり、今後の積極的な成長戦略の柱になるのが、法人向けビジネスになる。 

 井田社長兼CEOは、「サードウェーブが持つ強みを生かしながら、ビジネスをスケールできる分野が、法人向けPC市場である。柔軟なカスタマイズや特別な用途に最適化した仕様のPCを、国内で開発、製造し、販売できるのは、サードウェーブの強み。これは、今後の法人向け市場において、求められる要素でもある」と自信をみせる。 

 サードウェーブでは、PCの商品企画は東京・秋葉原の本社で行い、開発や生産、品質管理は神奈川県にある海老名事業所と綾瀬工場が担当し、平塚の物流センターから全国に配送している。ユーザーの要望にあわせたPCを、短納期で配送できる仕組みが整っている。 

 さらに、昨年度から、法人事業部の陣容を強化。業種や業態ごとの営業組織を強化したのに加えて、ディストリビュータやSIerなどのパートナー向けの営業体制の拡大や、中堅中小企業向けのインバウンドセールスやアウトバウンドセールスの強化などに取り組んでいる。 

 まずは、映像分野やゲーム開発にフォーカスしたPCや、CADやBIM(Building Information Modeling)を活用する建設/建築業界向けPC、DXハイスクールの対象となる高校や、大学の研究室などを対象にした文教市場に向けて最適なPCの提供に力を注ぐという。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ