「自動細胞加工装置の産業化へ向けた共同開発」を開始 ハインツテックの「革新的細胞加工技術」と荏原の「卓越した流体技術」が実現する高度産業システム
ハインツテック株式会社
株式会社荏原製作所(取締役代表執行役社長 CEO&COO 浅見正男、本社:東京都大田区、以下「荏原」)と早稲田大学発スタートアップのハインツテック株式会社(代表取締役社長 青木睦子、本社:福岡県北九州市、以下「ハインツテック」)は、自動細胞加工装置の産業化を目指した共同開発プロジェクトを開始しました。
本プロジェクトは、ハインツテックが製造する革新的細胞加工ツール「ナノチューブ膜スタンプシステム」の産業化へ向けて、荏原がこれまで培ってきた流体解析、制御、自動化技術等を活用し、共同で操作性かつコストパフォーマンスに優れた産業システムの開発および構築を目指すものです。
1.背景
近年、細胞の可能性は医療にとどまらずさまざまな領域で応用が進んでいます。代表的な例に、医療分野(再生医療、細胞治療、細胞診断、他)、環境分野(バイオエタノール、バイオレメディエーション、他)、食品分野(細胞培養肉、発酵食品、品種改良※1他)などがあり、細胞が持つ多様な特性が最大限に活かされ、各分野において革新的なソリューションの創出や新製品・治療法の開発が進展しています。そのなかでも、細胞加工、とりわけ標的細胞へ任意の物質を導入する、あるいは細胞から物質を抽出する技術の開発は、細胞機能の解析やバイオものづくりをはじめ全ての開発における基幹技術です。今後さらに進展が期待される当分野において、その技術革新を支えるプラットフォームの高度化が強く期待されています。
2.概要
ハインツテックは、微細加工技術を用いて標的細胞への物質導入・抽出を実現する革新的なツールやシステムを開発・製造する早稲田大学発の研究開発型スタートアップ企業です。代表的な製品に、多数のナノスケールの中空管(ナノチューブ)が貫通した構造の薄膜を用いた「ナノチューブ膜スタンプシステム」があります。従来技術では、細胞内へたんぱく質や単離したミトコンドリアなどの高分子を導入するのは困難でしたが、本ナノチューブ膜を細胞に直接穿刺することでナノチューブを介した細胞内とのやり取りを可能とし、これら高分子の「短時間」「高効率」「高生存率」での導入を実現しました。また細胞内物質の抽出ができる点にも優位性があり、この技術は細胞の新たな高機能化を実現するツールとしてその活用が期待されています。
一方荏原は、1912年に大学発のベンチャー企業として創業した産業機械メーカです。これまでポンプメーカのパイオニアとして社会・産業インフラを支え、現在は送風機や冷凍機、コンプレッサ・タービン、ごみ処理施設、半導体製造装置など多岐に渡る事業を手掛けています。また、長年培ってきた流体技術や熱制御技術を活かし、培養肉の大量・安定生産や陸上養殖、完全閉鎖型の植物工場など、さまざまな企業と組み、持続可能な社会の実現に向け貢献しています。
この度両社は、細胞加工を基盤に研究開発を行う機関や企業に対して広く高度な技術基盤を提供するために協業し、操作性とコストパフォーマンスに優れた産業用装置の開発を目指してまいります。本共同開発では、両社の技術を融合させ「自動ナノチューブ膜スタンプ穿刺システム」の設計、開発を行い、細胞への物質導入システムの産業化とその普及へ寄与していきます。
3.今後の展開
ハインツテックの先進的な微細加工技術および革新的な細胞加工ツールと、荏原の卓越した装置自動化技術の融合により、この先多くの研究機関や企業に細胞加工のための高度な技術基盤を提供できるよう取り組んでまいります。また、今後さらなる進展が期待される「バイオものづくり」領域を含む、広範な分野における技術革新を促進し、ライフサイエンス分野におけるイノベーション推進に寄与してまいります。
なお、2024年9月4日~6日に幕張メッセで開催される、最先端科学・分析システム&ソリューション展「JASIS 2024」の荏原ブースにて、本共同開発の進捗成果を展示する予定です。
※1:作物の収量増加や陸上養殖など
<ご参考>
■「ナノチューブ膜スタンプ」の使用イメージ
■ハインツテック株式会社
ハインツテックは2021年に設立された早稲田大学発スタートアップ企業です。「世界唯一の革新的な細胞加工ツール及びシステムを活用した高度な技術基盤を提供するプラットフォーマーとして、ライフサイエンス領域の研究機関や企業が目指す技術革新を支えることで、人・生物の健康と幸福を向上させる」ことを目指し、ライフサイエンスのコア技術となる、任意の物質を細胞内部へ導入または細胞内物質を抽出するためのツール・システムの開発・製造・販売、およびそれらを用いた研究開発支援事業を行っています。