生成AI「Box AI」を組み込んだBoxの将来像も披露、「BoxWorks Roadshow Osaka 2024」レポート
大阪ガス、豊中市も登壇 西日本に注力するBoxが大阪で大型イベント開催
2024年09月18日 08時00分更新
「日本国内における『Box』の導入社数は、2019年から現在までの間に3.5倍に増加しました。この大きな伸びの中核をなしているのが、西日本のお客様です」(Box Japan 代表取締役社長の古市克典氏)
Box Japanは2024年7月、大阪市内において、西日本で初開催となるカンファレンスイベント「BoxWorks Roadshow Oaska 2024」を開催した。「働き方の未来を創る」をテーマとしたこのイベントでは、生成AI機能の「Box AI」をはじめとするさまざまな最新機能が紹介されたほか、大阪ガス、豊中市、井村屋など、西日本のBox導入組織からの活用事例が紹介された。
本記事では、キーノートセッションおよび大阪ガス、豊中市の各セッションの概要をレポートする。
西日本でも急成長、Boxが日本市場で伸びている「2つの理由」
キーノートに登壇したBox Japan 代表取締役社長の古市克典氏はまず、これまで東京、サンフランシスコ、ロンドンなどで開催してきたBoxWorksイベントを、大阪で初めて開催できたことを「とてもうれしい」とあいさつした。
なぜ今回、BoxWorksを西日本で初開催することになったのか。
日本国内のBox導入社数は、コロナ禍の期間で急速に成長した。コロナ禍以前の2019年、国内の導入社数は4800社だったが、2024年現在はその3.5倍、1万8000社まで増加している。グローバルのBoxビジネスにおける日本市場の売上比率は、21%まで成長している(2024年度)。
記事冒頭に挙げた古市氏のコメントにあるとおり、こうした急成長の中核をなしたのが西日本の顧客企業だったというわけだ。
グローバルの売上における日本市場の割合が年々増加し、Boxは日本の顧客の要望にとても敏感になっている。古市氏は、日本でのBox需要が急拡大した「2つの理由」を挙げた。
ひとつは「製品特徴と市場ニーズの合致」だ。企業内にあるデータの9割は、たとえば業務ドキュメントや資料ファイル、写真や動画といった非構造化データ、いわゆる「コンテンツデータ」が占めると言われる。これらのコンテンツデータは、かつては個々人の業務PCを中心に散在していたが、コロナ禍でリモートワークが求められたことで、社員間での共有が容易なクラウドサービス(SaaS)へと集約されていった。
ただし、コンテンツがさまざまなサービスに分散して保管された状態では、本来目指すべき全社活用は難しい。そこで選ばれたのが、さまざまなサービスと連携しつつ、そのコンテンツを容量無制限で一元管理できるBoxだった。
急成長したもうひとつの理由は「Box Japanの組織運営のかたち」だと言う。
Boxはシリコンバレー企業だが、日本法人であるBox Japanは「シリコンバレー企業と日本企業のいいとこどり」だと古市氏は語る。迅速な意思決定、組織のダイバーシティ(多様性)などは“シリコンバレー流”、その一方で、代理店を介した100%間接販売、レイオフ(解雇)をしない堅実経営などは“日本流”だ。日本法人の各組織からのレポートラインも、海外の各担当幹部ではなく日本法人の社長(古市氏)に集約される。そのため、日本の部門どうしの横連携が促され、「日本のお客様からの要望もサービスに反映されやすい」と説明した。
AIの能力を組み込んだBoxは「インテリジェンスと自動化」へ進化
そして古市氏が、これからのBoxの位置づけを説明するうえで強調したのが、コンテンツデータに生成AI技術を適用する「Box AI」だ。Box AIの登場によって、Boxの進化は「インテリジェンスと自動化」という新しいフェーズに入ったと説明する。
「社内にあるすべての非構造化データをBoxに入れることで、データの全社活用は“ある程度は”可能になりました。ただしまだ、お客様自身が『どんなデータがどこにあるのか』を知らなければ、フル活用はできません。ここに生成AIが加わって『すべての非構造化データに生成AIが分析をかける』ことでそれが可能になる。非構造化データと生成AIは非常に親和性が高く、Box AIの登場で“ぴたっとハマった”感じがします」(古市氏)
Box AIも急速な進化を遂げている。単一のドキュメントに基づいて要約や質問回答をする「Box AI for Documents」や文章生成の「Box AI for Notes」に続いて、複数のドキュメントに基づいて要約と質問回答ができる「Box AI for Hubs」(ベータ版提供中)が登場している。
Box AI for Hubsについて、古市氏は「Box Hubsは必要な情報を集約し、常に最新の状態に維持できるので、古い情報などの“雑音”を排除して正しい情報を元に生成AIを利用できる」点が大きな特徴だと説明する。
社内データの生成AIによる活用を促すために、Boxでは「Enterprise Plusプラン」において、Box AIを追加料金なしの“使い放題”(利用回数上限なし)とした。さらに今後、ドキュメントからのメタデータ自動抽出「Box AI for Metadata」(ベータ版提供中)や、文書以外のスプレッドシートや画像からの情報抽出といった機能も提供を予定している。
なお、前述したBox AI for Hubsは、新機能である「Box Hubs」(ベータ版提供中)向けのBox AI機能だ。Box Hubsは社内の部門・チームごとにノーコードで作成できるポータル機能であり、チームメンバーがコンテンツを整理、公開することで、社内のデータ活用を促す狙いがある。
Box Japan プロダクトマーケティング部 シニアプロダクトマーケティングマネージャーの武田新之助氏は、「Box Hubsは“Box版のプレイリスト”のようなもの。大量に保存されたコンテンツから必要なものを探すのは大変ですが、誰かがプレイリストのようにキュレーション(収集、整理)してくれたBox Hubsを見れば、重要なコンテンツがすぐに探し出せます」と説明する。
Box AIを強化し「インテリジェンスと自動化」を実現していく新たなフェーズにおいて、Boxはどんなゴールを見据えているのか。Box Japan プロダクトマーケティング部 エバンジェリストの浅見顕祐氏は、まずは「非定型業務を支えるナレッジ基盤」、そして将来的には「革新的なECM(エンタープライズコンテンツ管理)」を実現していく狙いがあると説明する。
まず、Boxに社内のあらゆるコンテンツを集約し、Box内蔵のAIを通じてそれを活用することで、Boxは「コンテンツ基盤から『ナレッジ基盤』へと進化します」と浅見氏は説明する。これまでは担当者ごとにコンテンツを検索し、読み、理解したうえでインサイトを得ていたが、それにかかる時間が大幅に短縮される。また、AIがBoxに統合されているため、あらゆるコンテンツをナレッジの対象として回答精度を高められる一方で、アクセス権限にまつわる問題もクリアできる。
さらにその先では、ノーコードで独自のECMが構築できる「次世代コンテンツクラウド」の実現を目指す。これは、契約管理、案件管理、稟議申請など、ドキュメントが中心となってワークフローが構成される業務全体を、ノーコードによる自動化でサポートするプラットフォームだ。データの入力や取り込み、ドキュメントの生成と保管、レビューと承認のプロセス、電子署名、ワークフローの進捗可視化といった機能群を順次リリースしており、これらをつなげてドキュメントのライフサイクル管理を行う。
「Boxは、ECMを超えた“ICM”、AIのインテリジェントを組み込んだ“インテリジェントコンテンツマネジメント”の実現に向けて、これからもさまざまな機能をリリースしていきます」(浅見氏)