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連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第145回

IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 7月26日~8月2日

ChatGPTは1分間に46万時間ぶんの労働時短効果、企業へのサイバー攻撃数は過去最悪、IT人材不足と定着率向上の施策、ほか

2024年08月05日 08時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。

 今回(2024年7月26日~8月2日)は、AI利用のコストと成果、デジタルビジネスプロフェッショナルサービス市場、「IT人材不足」への企業の対応策、2024年第2四半期のサイバー攻撃数、日本人の国内旅行/海外旅行についてのデータを紹介します。

[AI][データ]毎分6944件のChatGPTプロンプトを処理、スパコン冷却に185ガロンの水を消費(ドーモ、8月1日)
・ChatGPTへのプロンプト送信数は毎分平均6944件
・企業従業員のChatGPT利用で、1分間に46万7882時間ぶんの労働時間削減効果
・毎分29万3000ドルがAI利用に費やされている

 年次分析レポート「Data Never Sleeps(DNS)」の“AI版”として、AIサービスの利用状況などのデータを集めた。1分間に「ChatGPT」には6944回のプロンプトが送られ、「DALL-E 2」は1389の画像を生成するなど、AIサービスの利用は進んでいる。企業従業員がChatGPTを利用することで、1分間に46万7882時間ぶんの労働時間削減効果が生まれているほか、教員向けの論文盗用検出サービス「Turnitin(ターンイットイン)」では、毎分52本の論文やレポートを「盗用あり」と判定している。AIの利用には毎分29万3000ドル(およそ4300万円)のコストが費やされており、ChatGPTスパコンの冷却には毎分185ガロン(およそ840リットル)の水が使われているという。

AI版の「Data Never Sleeps」レポート。「AIの世界で1分間に何が起きているか」を表している(出典:ドーモ)

[サービス]デジタルビジネスプロフェッショナルサービスは2023年に1.3兆円(IDC Japan、7月25日)
・2023年の国内デジタルビジネスプロフェッショナルサービス市場は前年比31%増
・2023~2028年の年平均成長率(CAGR)は18%、2028年には3.1兆円規模に
・今後は「AI活用業務変革支援」「ビジネスモダナイゼーション」などに需要

 デジタルビジネス支援サービスのうち、プロジェクトベースで提供される「ビジネスコンサル」「ITコンサル」「カスタムアプリケーション開発」「システムインテグレーション」「ネットワークコンサル&インテグレーション」について調べた国内デジタルビジネス(DB)プロフェッショナルサービス市場予測。2023年の同市場は、前年比31%増の1兆3431億円となった。全領域で高い成長を遂げたという。デジタルビジネス戦略の策定、各種オペレーション変革支援、人事/組織変革、GRC(ガバナンス/リスク/コンプライアンス)の支援など、幅広い領域でニーズがあったという。

国内デジタルビジネスプロフェッショナルサービス市場予測(出典:IDC Japan)

[人材]31%の企業で「IT人材不足」がトップ3の組織課題に(ガートナージャパン、8月1日)
・人材・組織の課題として「IT人材が質的に不足」を1~3位に挙げる組織は31%
・人材不足の対応策は「中途採用」(47%)、「インターン活用」(31%)
・定着率向上の施策は「フレキシブルな勤務時間」(59%)、「リモートワーク」(58%)など

 売上高500億円以上の日本企業を対象としたITマネジメント調査より。人材・組織の課題で「IT人材が質的に不足」を1位とした組織は14.5%、1~3位に挙げた組織は31.9%で、最も選択される課題となった。人材不足への対応策としては「中途採用の積極化」(47.3%)、「インターン制度の活用」(31.8%)、「新卒採用の条件改善」(30.8%)など。また「働き方改革の促進」(31%)、「柔軟な報酬体系の導入」(19.3%)などに取り組んでいることもわかった。定着率や従業員エンゲージメント向上の施策としては、「リモートワーク」(58.8%)、「フレキシブルな勤務時間」(59.1%)が多い。

「どの分野の人材が不足しているのか」については、13分野すべてで不足が見られる(出典:ガートナージャパン)

定着率と従業員エンゲージメント向上の施策(出典:ガートナージャパン)

[セキュリティ]2024年第2四半期のサイバー攻撃は前年同期比30%の増加(チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ、7月25日)
・2024年第2四半期の世界サイバー攻撃は前年比30%増
・1組織が毎週受ける攻撃数は1636件(世界平均)、日本は1389件
・狙われる業界は「教育・研究」「政府・軍」「医療」がトップ3

 2024年第2四半期に世界の組織が受けたサイバー攻撃の傾向をまとめた。1つの企業/組織が1週間に受ける攻撃数は平均1636件と、前年同期比で30%増えた。前四半期(2024年第1四半期)からも25%の増加と、過去最大の増加率を記録している。攻撃を多く受けた業界のトップ3は「教育・研究」(1組織平均で3341件)、「政府・軍」(同2084件)、「医療」(同1999件)。教育・研究については、前年同期比で53%もの増加となっている。

1組織が受けるサイバー攻撃は1週間平均で1636件、過去最悪に(出典:チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ)

業界別の1週間ごとの平均攻撃数(出典:チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ)

[生活]国内旅行者はコロナ前に戻らず、海外旅行の1泊あたり支出額はコロナ前の5-6割増(明治安田総合研究所、7月30日)
・国内居住者の国内旅行消費額は2023年に15.1兆円、前年比27%増
・国内旅行数は減少傾向、2015~2019年の月次平均3082万4000人を下回る
・海外旅行の消費額は2兆878億円、2019年比で43%減

 観光・レクリエーション目的の国内旅行消費額は、2023年に前年比27.6%増の15兆1045億円となり、同統計開始以来の最高額となった。ただしその背景は物価高で、宿泊費は2020年平均から3割以上上昇、外食費もおよそ1割上昇している。延べ旅行者数の月次平均を見ると、宿泊旅行はコロナ前の2015~2019年の月次平均(3082万4000人)を下回ったまま。一方で日帰り旅行者数は伸びている。海外旅行の1回1人あたり支出は、2023年は平均32万917円、2024年1~3月は同30万744円。宿泊費はそれぞれ6万550円、6万5462円となり、2015~2019年の平均費用(4万433円)から5~6割も高い。渡航者数は2024年1~3月が245万4000人で、2019年同期から35.6%も減っている。

国内旅行の延べ旅行者数、「日帰り旅行」(黄色)の増加が目立つ(出典:明治安田総合研究所)

海外旅行の1回/1人あたり旅行支出は、現地のインフレと円安の影響により増加傾向にある(出典:明治安田総合研究所)

出国する日本人数はコロナ前よりも減少したままだ(水色:2019年、黄色:2023年、緑色:2024年)(出典:明治安田総合研究所)

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