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佐々木喜洋のポータブルオーディオトレンド 第300回

インド発の密閉型/静電式ヘッドホン? オーディオ勢力図の変化を感じた「INOX」

2024年07月28日 09時00分更新

文● 佐々木喜洋 編集⚫︎ASCII

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Kaldas ResearchのINOX

 7月20〜21日に開催された「CanJam London 2024」で、密閉型の静電式ヘッドホンという興味深い製品が披露された。それがKaldas Researchの 「INOX」である。

インド発のオーディオマニア向け製品

 Kaldas Researchはインドの会社であり、インドで開発された静電式ヘッドホンという点でも興味深い。同社は5年前に初めて500ドルと低価格な静電型ヘッドホン「RR1 Conquest」を発表して話題となったメーカーでもある。RR1 Conquestは開放型だが、むき出しの配線をデザインの一部に取り入れた点も斬新だった。

 INOXはフラッグシップクラスの高い性能を有した静電式ヘッドフォンで、STAX Proバイアス端子仕様だ。RR1 Conquestとは全く異なった設計がなされ、ステンレススチールのシャーシを採用している。INOXという名称もそれに関係しているようだ。

Kaldas ResearchのINOX

電極

 ステンレススチールは医療グレードの素材である316Lが採用されている。これはAstell & Kernの「SP3000T」を始め、さまざまな高級オーディオ製品でも採用されている高級素材だ。パーツ類はイヤーパッドとヘッドバンド以外はすべて自社製造ということだ。また、INOXではすべての組み立てが2.5mmのトルクスネジ1本で可能なように考慮されている。

 密閉型の静電式ヘッドホンとしては、これまでSTAXの「SR-4070」やKOSSの製品があるので世界初ではないが、これらは主にプロ市場向けの製品である。Kaldas Researchでは、コンシューマー市場に向けた密閉型の静電式ヘッドホンは初めてだとしている。

Kaldas ResearchのINOX

周波数特性

 設計としてはハーマンカーブに準拠した聴覚的にフラットな特性を有しているが、イヤーパッドが二種類付属していて、好みによって音を変えられる。製品のバリエーションは標準版とプレミアム版の二種類があるようだが、詳細は不明。価格は1799ドル前後からということだ。

 インドは近年モディ首相のもとで目覚ましい発展を遂げている。オーディオマニア向けで、かつ密閉型の静電式ヘッドホンという面白い製品がインドから出てきたということは、最近の世界情勢の勢力図の変化とも関係しているようでとても興味深い。

最後にご挨拶

 さて、さまざまな日本では知られていない製品や新しい技術の話題を提供してきた本連載だが、定期更新は今回が最後となる。現在話題となっているMEMSスピーカー技術は本連載で数年前から取り上げてきたもので、新しい技術を受け入れる素地を日本国内に作れたことなどは、本連載の成果かもしれないと考えてはいる。

 今後こうした話題は、筆者の個人ブログがメインとなると思うので、この連載で紹介してきたようなポータブルオーディオ関連の話題に興味がある方は下記リンクを参照いただきたい。

 難しい話題も多く、取り付きにくい点もあったと思うが、これまで読んでいただいた方々に感謝を表したいと思う。

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