新チップセットAMD 800シリーズと
新たなオーバークロック(OC)手法
Ryzen 9000シリーズを動かすためのチップセットは、既存のAMD 600シリーズのチップセットが利用できる(BIOSの更新は必要だ)ほか、今秋には新たにAMD 800シリーズチップセットが登場する。すでに発表済みのX870EやX870のほかに、コストダウンを意識した新チップセット「B850」「B840」の2モデルの存在が明らかになった。
X870EとX870はUSB 4対応およびグラフィック(PCI Express x16スロットのこと)やCPU直結のNVMeはGen 5対応が必須となっているが、B850やB840ではUSB 20Gbps/ 10GbpsかつPCI ExpressもGen 4ないしGen 3対応止まりという違いがある。またOCについては全チップセットでメモリーOCは可能な一方で、CPUのOCはB840のみ非対応である。
また、基板のレイヤー数を4層にしても安定した品質を確保できるとか、EXPO利用時により高クロックのOCメモリーに対応するといったメリットについては既報通りという扱いなのか、Tech Dayで改めて語られることはなかった。
Ryzen 9000シリーズではOCに関しても手が入る。Ryzen 9000シリーズでは、メモリーやOC周りの強化も実装された。前述した定格のメモリー最大値がDDR5-5600に引き上げられたほか、DDR5-8000までのメモリーOCに対応する。
実際そこまで上げられるかどうかは良いモジュールを手にいれられるかによるが、メモリーのOCはRyzenのパフォーマンスを効率良く引き上げることのできるテクニックなので、自己責任ではあるが積極的に活用したい。
ちなみに、uclk(メモリーコントローラークロック)とmclk(メモリークロック)が1:1で動作する上限(Ryzen 7000シリーズおよび8000GシリーズではDDR5-6000)についての言及はなかった。
さらに新しいメモリーOC手法である「メモリーOC OTF(On-The-Fly)」ほか、Curve Optimizerよりもさらに細かいチューニングを志向する「Curve Shaper」が実装される。これらの機能については、既存の700シリーズでも新AGESAに対応したBIOSに更新することで利用できるので、新チップセット搭載マザーを待つ必要はない。
Zen 4の時よりもあっさり風味だったTech Day
Ryzen 7000シリーズのTech Dayと比較すると、今回のTech Dayはかなりあっさり風味だった。前回は新アーキテクチャーへの移行と同時に新チップセットやSocket AM5など、AMDが伝えるべきことは山のようにあったが、今回はZen 5への刷新がメインテーマであり、すでにSocket AM5プラットフォームは立ち上がっている(そして、2027年以降も使われる)ことから、相対的に薄味になってしまうのは仕方がない。
Zen 5だけでなくRyzen AI(NPU)も採用し、今後のパーソナルコンピューティングのカギを握るAIに踏み込んだRyzen AI 300シリーズ推しになるのは当然の帰結といえる。
次なるAMD Tech Dayレポートは、Ryzen 9000シリーズで新しく利用可能になる2つのチューニング技法、すなわちメモリーOC OTFならびにCurve Shaperについて解説するとしよう。