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AI向け大規模GPUクラスタ、顧客/パートナー専用リージョンなど他社にない特徴をアピール、2025年度事業戦略

「Oracle Cloudは先行他社と違う進化を遂げ始めた」日本オラクル 三澤社長

2024年07月12日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 日本オラクルは2024年7月9日、今年6月からスタートした同社2025年度の事業戦略説明会を開催した。

 日本オラクル 取締役 執行役 社長の三澤智光氏は、今年度の重点施策として昨年度と同じ「日本のためのクラウドを提供」「お客さまのためのAIを推進」の2つを挙げ、多くの企業の基幹システムを支えるITベンダーとして「日本企業を支える基幹システムの進化」に注力していく方針だと強調した。

 また三澤氏は、この1年間の動きを振り返る中で「オラクルのクラウドは、明らかに先行他社とは違う方向へ進化を遂げ始めた」と述べ、大規模なGPUサーバークラスタや顧客/パートナー専用リージョンなどの独自性のあるサービスを提供していることが、Oracle Cloudの成長につながっているとの認識を示した。

Oracle Cloudが“後発組”の利点を生かした独自性のあるサービスを強みとし始めていることを強調した

日本オラクル 取締役 執行役 社長の三澤智光氏

「15兆円のクラウド受注残額」背景には大規模GPUリソースへの強い需要

 三澤氏はまず、昨年度(2024年度)のグローバルおよび日本の業績を簡単に紹介した。いずれも業績は好調であり、日本オラクルは通期として過去最高の業績を記録している。

グローバル、日本の2024年度業績

 グローバルの業績について三澤氏が強調したのが、クラウドサービスの受注残額に当たる「RPO(総残存履行義務)」の金額だ。第4四半期のRPOは、前年同期比で44%増の980億ドル(およそ15.7兆円)という巨大なものになっている。

 「この決算発表後、時間外取引で(米オラクルの)株価は10%近く跳ね上がった。年間売上8兆円くらい(530億ドル)の会社が、すでに15兆円の受注残を作っているという点が、市場に大きく評価されたと聞いている」

 RPOは、いわば“売約済クラウドリソース”の金額(これから使われるリソースの額)を示す。それが急伸した背景には、オラクル独自のOCI Superclusterに対する、LLM開発や生成AIサービス開発を手がけるAI企業からの高い需要があるという。

 OCI Superclusterは、高速なRDMAネットワーク(RoCE v2)接続で構成された大規模なベアメタルGPUサーバークラスタである。「NVIDIA H100」で構成する場合は1クラスタあたり最大1万6384GPU、「NVIDIA B200」では同 最大6万5536GPU(予定)の大規模GPU環境が実現する。この巨大なGPUリソースを求めて、パートナーシップを組むマイクロソフト(Bing Search)やOpenAI、さらにNVIDIA、xAI、MosaicMLといった数多くのAI企業が、OCIを選択するようになったという。

 三澤氏は「このように、多くの生成AI企業がOCIを採用しているのは大きなトピック。AI企業向けとしては最大規模の実績を誇るクラウドになることができた」と述べる。

Microsoft、OpenAIをはじめ、多くのAI企業がOCIを選択していることをアピール

 なおOCI Superclusterについて、日本でも今年度中、「夏過ぎ」頃にはOCI東京/大阪データセンターに設置する計画であることが明らかにされた。設置する具体的な規模(GPU数)については明言しなかったが、「万に近い」ものになると表現している。

 また、エンタープライズにおける生成AI活用という文脈で、ベクトルデータベース機能(AI Vector Search)を統合した「Oracle Database 23ai」を“マルチモーダルデータベース”と紹介。あらゆるデータを単一データベースで管理し、SQLで検索できる利点を強調した。

「お客さまのためのAIを推進」そのほかの重点施策

顧客企業/パートナー専用リージョンの強み

 競合クラウドとは違うOracle Cloudの独自性として、三澤氏は「マルチクラウド/分散クラウド戦略」についても言及した。

 特に「パブリッククラウドだけでは要件が満たせなくなってきている」と指摘したうえで、顧客/パートナーに“専用リージョン”を提供できる「OCI Dedicated Region」や「Oracle Alloy」という、OCI独自の提供形態を用意していることを強調する。

 各国のローカルパートナーがOCIインフラを自社データセンターに導入し、OCIのフルサービスに独自サービスの付与や価格設定も行いながら、自社のクラウドサービスとして運用/提供できるOracle Alloyについては、今年4月に野村総合研究所(NRI)が稼働を開始したほか、富士通も採用を発表している。富士通では来年4月のサービス提供開始を目指して構築を進めているという。

 こうした提供形態は、データ主権の確保やソブリンクラウドといった顧客ニーズへの対応を可能にするものである。三澤氏は、たとえば今後、ソブリンクラウド要件として「日本国内で24時間365日サポートができること」が求められたとしても、国内のパートナーと共に要件をクリアできる仕組みを作ろうとしていると説明した。

Dedicated RegionやAlloyは、海外でも徐々に導入事例が出てきている

 マルチクラウド戦略に関して、昨年度はMicrosoft Azureとのパートナーシップ強化、さらにGoogle Cloudとの提携開始も発表している。いずれも、各クラウドサービスが持つ特徴的なサービスを組み合わせて利用しやすくするための取り組みである。

 Microsoft Azureとのパートナーシップは、2019年のクラウド間インターコネクト(相互接続)から継続的に拡張してきたものだ。昨年9月には新たに、Azureデータセンター内に設置したOCIのインフラからデータベースサービスを提供する「Oracle Database@Azure」を発表した。現在は11リージョンで提供しており、今年度には日本国内のAzureリージョンからも提供開始予定としている。

 Azureと同様に、Google Cloudとの提携も開始した。今年6月には、両クラウド間のインターコネクト、およびGoogle Cloudデータセンターからオラクルが提供する「Oracle Database@Google Cloud」を発表している。Azure、Google Cloudとも、インターコネクトは低レイテンシのクラウド間通信を可能にするうえ、「クラウド間のデータ転送量が無料」という点もアピールポイントとなっている。

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