ホワイトカラーの生産性向上を背景にAI対応PCの普及が進む
MM総研 取締役研究部長の中村成希氏は「日本におけるAIパソコンの法人市場予測」として発表。「PC投資を増やすほど生成AIを積極的に活用するという強い結びつきがある」とコメントした。半年ごとの調査で毎回、劇的な変化がみられるという。
一方、その導入には課題もある。従業員規模別で見た場合、企業規模が大きくなるほど生成AIを活用する企業の数が増えていくが、これはAI人材の採用が中小企業では難しいという側面があるため。AIパソコンが普及するためには、それを打ち破る環境を作ることが必要である。普及シナリオにとって必要であるターンキーとしては、すぐ利用できる実践的なAIとAI関して専門的なデリバリー体制とシステム改修や専門活用人材がいなくても始められることだという。
Copilot+ PCに象徴されるAI PCについては成長が見込める。2028年までの年平均成長率(CAGR)は120%以上で、シンプルに倍々ゲームで増えていくと予測を示した。パソコンの販売台数はOSの世代交代などの影響も大きく受ける。2025年にはWindows 10がEOS(サポート終了)となるため、ここに大きな需要増とマイグレーションの機会が訪れる。
このため直近の法人PC需要は現状の706万台から1006万台と大きく増える見込みだ。ただ、こうした波とは別に、恒常的なAI需要に引っ張られ、法人向けPCの市場は700~850万台の水準でじわりじわりと安定して増えていくことが想定されている。牽引の力となるがAI PCであり、その構成比も安定的に増えていくとしている。
スペック面では、推論に強いNPUだけでなく学習領域で強いGPGPUやCPUなどの性能も必要だが、NPUを搭載し、生成AIの処理が身近になることはAI普及の大きな追い風となるだろう。
質疑応答では「日本の生成AIの使い方には特徴があり、ドキュメント、業務プロセス、翻訳などホワイトカラーが自分の業務のために使っている」「海外では管理職がインサイトを得たり、効率化のために使われている。推論のパワーが後者のほうが必要と言う面がある」というコメントもあった。さらに、PC上で生成AIの処理をするための小規模言語モデル(SLM)については「SLMは出始めたばかりだが、モダンなAIはほとんどがGPUとクラウドで処理を分けるような仕組みになってきているので、現在の性能がToo Muchと考えるのは早計である」などとも話していた。