産業向けエッジ領域に新たなプラットフォームを投入
2つめの「次世代ビジネスの成長」では、エッジ領域の産業オートメーションや、Enterprise AIに注力し、顧客の次世代ビジネスを加速、育成していく方針だ。
産業オートメーションでは、Device Edge、Ansible Automation Platform、OpenShiftを組み合わせた「Red Hat Industrial Edge Platform」を投入している。このエッジプラットフォームを通じて、産業オートメーション向けソフトウェアのモダナイズを図り、工場の生産ラインをソフトウェアで集中管理可能にする狙いだ。
同領域の事例も紹介した。たけびしでは、Red Hat Device Edge上で稼働するレッドハット認定コンテナの「Device Gateway」を提供している。Ansible Automation Platformによる自動化ソリューションを共同開発することで、エッジ大量展開時の運用負荷を大幅に削減しているという。レッドハットの恵比寿オフィスには、両社開発の生産ライン運用デモ環境も展示している。
オープンソースの力で「エンタープライズAIの民主化」を図る
Enterprise AIの民主化も実現していく。自社製品への生成AI採用(Red Hat LightSpeed)だけでなく、「RHEL(Red Hat Enterprise Linux)AI」「OpenShift AI」を通じて、顧客のAI開発も支援する方針だ。
ここでは、LLMに企業データを容易に取り込む新たな手法として「LAB (Large scale Alignment for chatBots)」を紹介した。このLABは、レッドハットとIBMリサーチが共同で提案するもので、従来手法のRAGやファインチューニングとは異なるものだ。
「AIを活用するためには『AIを育てる』ことも重要になってくる。企業ごとのルールを理解してアドバイスをしてくれるAIが求められており、データサイエンティストが在籍していなくても、多くの人に最適なAIを利用してもらえる環境を構築する。2024年度後半に向けても製品を発表していく」(三浦氏)
レッドハット テクニカルセールス本部の北山晋吾氏は、LABによって「(AIの)専門的知識を持たないエンジニアでも、質問への回答というかたちで個人の知識を拡張子、それを調整してLLMに注入できる」と説明する。これにより、少量のデータと少量の計算で“自社独自のAI”が活用可能になるという。
レッドハットでは、5月の「Red Hat Summit」において、オープンなLLM開発モデル「InstructLab」を発表している。このInstructLabを通じて学習データの基となるスキルや知識をコミットすれば、AIの専門知識を持たなくても、LABを使ってIBMのLLM「Granite」を学習させることが可能になるという。
北山氏は「オープンソースの開発スタイルで、企業のAIを育てることができるもLABの特徴」であり、「誰もがAIを育てられる環境が整う。AIの民主化が実現する」と説明した。