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パナソニック、AIで労働時間を18.6万時間削減 個人特化のAIも検討

2024年06月25日 16時00分更新

文● @sumire_kon

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AI活用戦略ステップの図

 パナソニックグループのパナソニック コネクトは6月25日、社内への生成AI導入から1年間の成果や今後の活用構想などを発表した。

労働時間を年間18.6万時間削減

 同社は2023年2月より、業務生産性の向上、社員のAIスキル向上、社員が会社に無断でAIを業務に使用するシャドーAI利用リスクの低減を目的として、国内全社員(約1万2400人)向けにOpenAIの「ChatGPT」をベースに開発した生成AI「ConnectAI」を導入。情報の検索から企画立案まで幅広い用途で活用している。

 今回発表された2023年6月から2024年5月までの1年間の活用実績は以下のとおり。いずれの結果も良好で、導入目的を十分に達成したといえる状態だ。

発表の概要をまとめたスライドの画像

●業務生産性の向上

・1回あたり平均約20分、年間で18.6万時間の業務時間削減に成功
・戦略策定の基礎データ作成など、人の手では長い時間が必要な作業ほど時短効果が高い

●社員のAIスキル向上

・検索エンジン代わりの簡単な用途から、戦略策定や商品企画など、1時間以上の生産性向上につながる利用のほか、製造業特有の素材や製造工程に関する質問なども増加

●シャドーAI利用リスクの軽減

・導入後16ヵ月間で情報漏えい、著作権侵害などの問題は0件

新機能も積極的に追加

 同社は単に生成AIを導入するだけでなく、新機能の追加も随時実施している。

 2023年9月には同社固有の公開情報(ウェブサイトなど約3700ページ、ニュースリリース495ページ、対外向けホームページ3200ページ)を元に回答する自社特化AIの試験運用を実施。良好な結果を得たことから、2024年4月より品質管理情報630件(1万1743ページ)を加えたバージョンの運用を開始した。

“過去の事例やノウハウを調べる機能のイメージ1”
過去の事例やノウハウを調べる機能のイメージ2” title=

 同機能では品質管理規定や過去の事例を元に製品設計時の品質に関する質問に回答できるほか、情報の引用元を提示することも可能。過去事例の検索や精査、判断に膨大な時間を要する製造業特有の課題を解決する一助となる機能で、利用した社員からの評価も平均3.5点(5点満点)と比較的良好だ。

プロンプト添削機能のイメージ

 また、質問文(プロンプト)の書き方次第で回答精度が変化する生成AIの性質を考慮し、社員が入力したプロンプトをより良い形に添削する「プロンプト添削機能」も用意。こちらは2024年6月実装のため具体的な成果は未発表だが、同社は添削機能の活用で今後、さらなる業務効率向上が期待できるとしている。

コーパス整備などで今後も改良を継続

 今後の方針では、AIが回答に使用するデータベース(コーパス)として、独自の「パナソニック コネクトコーパス」を構築する方針を表明。実現すれば、さらなる回答精度の向上が見込める施策だ。

パナソニックコネクトコーパスのイメージ

 AIがカバーする領域についても従来の品質管理や企画、戦略策定にくわえ、新たに人事の研修サポートや社内ITサポート、カスタマーセンターといった社内サービスへ拡大。第1弾として、生成AIが社員に適した研修を提案する研修特化AIの導入を進めていく。さらに2024年度中を目処に、社員個人の職種や権限に応じた回答を出せる個人特化AIの導入を検討するとしている。

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