armを中心にしたAIチップにも言及、NVIDIAとの逸話も
孫会長兼社長は、ASIの時代を支える技術のひとつがarmだと位置づける。
クラウドやデータセンター、エッジ(スマホ、自動車、ロボットなど)にも、armが利用されていることを示しながら、「armの出荷数量は世界最大であり、ありとあらよるところで利用され、ASIの広がりにも貢献する。出荷数量はあがることはあっても、下がることはない。armの強みは設計力であり、低消費電力で稼働する点である。NVIDIAのGrace Blackwellも、AWSのGraviton、マイクロソフトのCobalt、GoogleのAxionも、armのライセンスによって生産されている。スマホは99%のマーケットシェアといっているが、実質は100%である」とした。
また、armを中心とした「AIチップ」、シャープの液晶パネル工場跡地で展開する「AIデータセンター」、ソフトバンクが出資をしているボストン・ダイナミクスやソフトバンク・ビジョン・ファンドが出資するロボット関連企業などと連携した「AIロボット」を通じて、ASIに対して、グループ総力で取り組む姿勢を強調。なかでも、「AIデータセンターは、ソフトバンクグループの総力をあげて、続々と世界中に作っていくべきであると思っている」と述べた。
質疑応答では、NVIDIAへの出資に関する質問があり、そのなかで初公開となるエピソードを披露した。
armを買収した翌月に、NVIDAのジェン・スン・フアン社長と、孫会長兼社長が持つ米カルフォルニアの自宅の庭で、約4時間に渡って、NVIDIAを買いたいと提案したという。非上場にし、ファン社長の体制を維持し、armと合併するという内容だ。AIに対して力を合わせることはコンセンサスが取れたが、話はまとまらなかったという。
「逃がした魚は大きかった」と悔しがった孫会長兼社長であるが、「もし神様がもう一度、選択のチャンスを与えてくれて、armか、NVIDIAのどちらか1社しか買えないと提示されても、1秒の迷いもなく、armを買う。それぐらいarmの将来を信じている」と断言した。
なお、Open AIのサム・アルトマンCEOにも1兆円の出資を提示したエピソードも披露。「サムが迷うほど、ぎりぎりのところまで話をしていた。だが、マイクロソフトから1兆円を出資してもらうことを決めた。技術力、販売力、資金力を持つマイクロソフトからの出資は、サムにとって正しい判断だと思うが、私は出資することを決めていただけに残念である。逃した魚はたくさんある」と、出席者を笑わせた。
この連載の記事
-
第595回
ビジネス
DX銘柄2024発表、進行する日本のDX、しかし米国よりもここが足りない!! -
第594回
ビジネス
自動車工業会は、今年もJapan Mobility Showを開催、前身は東京モーターショー -
第593回
ビジネス
赤字が続くJDI、頼みの綱は次世代有機EL「eLEAP」、ついに量産へ -
第592回
ビジネス
まずは現場を知ること、人事部門出身の社長が続くダイキン -
第591回
ビジネス
シャープが堺のディスプレーパネル生産を停止、2期連続の赤字受け -
第590回
ビジネス
生成AIに3000億円投資の日立、成長機会なのか? -
第589回
ビジネス
三菱電機が標ぼうする「サステナビリティ経営」、トレードオフからトレードオンへ -
第588回
ビジネス
富士通の子会社でDX専門のコンサルティングをするRidgelinez -
第587回
ビジネス
メーカー自身が認定し、工場検査後に販売するパナソニックの中古家電 -
第586回
ビジネス
マイクロソフト、日本への4400億円のAI/データセンター投資の実際 - この連載の一覧へ