ASI自らが夢を持ち成長する?
孫会長兼社長は、ASI自らが、志やビジョン、夢を持つことになるとも予測する。
「コンピュータには感情がなく、人間にしか感情が理解できないというのは思い込みである。感情は知的活動のひとつである。ニューロンの数がはるかに多いASIが、感情や意思を持てないはずがない。GPT-4でも感情のようなものが芽生え始めていると感じる。Open AIのCEOのサム・アルトマン氏も最近、同様のことを言っている。AIは、徐々に感情を持つ。それは時間の問題だろう。感情を極めていくと、志や慈愛といったものに昇華していく。ASIが人類を滅亡させるという人がいるが、それは逆である。人類を滅亡させかねない人間が何人かいる方がよほど怖い。ASIはもっと賢く、人々の幸せのために超知性を使って、人々を守るための役割を果たしてくれるだろう」と語った。
人間の1万倍の知恵を持つ何かが誕生したら……
一方で、孫会長兼社長は、会場の株主にこう問いかけた。
「人間の知恵の1万倍を持つASIが登場したら、自分はどうしたらいいのかと、多くの人が思うだろう。そんなものが生まれてしまっていいのかとも思うだろう。仕事とはなにか、労働とはなにか、幸せとはなにか。そして、人間とはなにかという、根源に関わるような疑問が沸々と湧いてくるのではないだろうか」
そう切り出しながら、孫会長兼社長は自問自答するように、「それを問いただすべきである。かつてギリシャの哲学者たちが問いただしていたように、根本的な物事を考えることは大切なことである。なんのために1万倍の知性を生み出したいのか。私は、昨年、父を癌で亡くした。絶望に暮れて、大泣きしたが、1万倍の知性があったら解決できたのではないかと思っている。いまは、母親は脳梗塞を患っているが、この課題を解決するにはAGIが実現する人と同じ1倍の知性では駄目である。自動運転も人を減らすということでは志が低い。事故を1万分の1に減らしして、事故で亡くなる人を減らすのであれば自動運転をやる意味がある。地震などの自然災害やパンデミックによる絶望からも救ってもらえる。隕石が飛んできて、地球が滅亡するという危機に瀕しても、1万倍の英知があれば解決できるかもしれない。次の氷河期を避けることができる。人が必要だと思うことを、ASIがやってくれることになる」と述べた。
さらに、「一人ひとりが、仮想空間に自分のエージェントをいくつも持ち、友人やパートナー、メンター、師匠といった役割を果たす。ヒューマノイドをはじめとして、生活のなかに完全に融合する時代が来る。ASIは避けることはできない。いまから積極的に使い、最大限に活用して、それを活用して、周りの人々に貢献してほしい」とも要望した。
ちなみに、孫会長兼社長は、現在のGPTの使い方にもついても言及。「なにかを検索するといった用途ではなく、語り合いのパートナーとして使用している。アイデアの壁打ち、ディベート相手に使っている。それぞれに特徴を持たせた天才的科学者A、B、Cを設定し、それらを私の目の前でディベートさせる。違う角度から発想でコメントしてもらいながら、コンセンサスができるまで意見を戦わせる。面白く、有益である」と、孫会長兼社長ならではの活用方法を披露した。
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